「スクラム、モール、キック」がキーに
10連勝をかけて“6カ国”の雄イタリアと

21日、今季の日本代表の総決算となる「リポビタンDチャレンジカップ2014」、対イタリア代表戦が、東京・秩父宮ラグビ―場で行われる。
ジャパンXV名義で戦った4月26日のアジア・パシフィックドラゴンズ戦を皮切りに、14日のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)アメリカ代表戦まで今季8試合を戦ってきた、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)率いる日本代表。
昨秋のロシア代表戦以来、テストマッチ連勝記録を「9」にまで伸ばしているチームは、6カ国対抗の強豪国との対戦で、今季の総決算を迎える。

(text by Kenji Demura)

6カ国対抗の雄イタリア相手に成長したスクラムを披露してテストマッチ10連勝なるか
photo by RJP Kenji Demura
アメリカ戦に続いてWTB福岡が再び先発。「2度と同じミスは繰り返さない」
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「我々にとっては今季最もタフな試合」(ジョーンズHC)

異論はないだろう。

1999年以来となったアメリカに対するアウェー戦勝利を記録したPNCが行われたのは日本時間で言えば日曜日(ロサンゼルス時間土曜日夜)。
飛行時間だけで11時間以上。時差も14時間ある厳しい条件で、今季初の中5日での試合となる。

もちろん、3週間前来日したサモア代表が若手中心のメンバー構成だったことを考えても、IRB世界ランキングでは日本より下の14位に甘んじているものの、欧州6カ国対抗組のイタリアこそ、対戦相手としても今季最強と断言していい。
「気をつける点は3つ。スクラム、モール、キック」
ジョーンズHCはイタリアのプレーに関して、そう分析する。
特に、6カ国対抗でもイングランドやフランスと言った強力FWを誇るチームにも度々組み勝つなど、イタリアのスクラムが世界トップレベルにあるのは間違いないところ。

前週、アメリカに対してスクラムトライを重ねて勝利するなど、「スクラムはチームとしてもっとも成長している部分のひとつ」(同HC)である日本代表。
「自分たちのスクラムがいまの現段階でどれくらいなのかが、次の試合でわかる」
PR畠山健介がそう意気込むとおり、今季自信を深めている日本代表のスクラムが世界トップレベルとの対戦で試される絶好の機会となる。

過去の対戦ではイタリアに対して、5戦して5敗と白星なしの日本代表。
前回の対戦は11年ラグビ―ワールドカップ前の8月のイタリア・チェゼーナでの対戦(24-31で敗戦)。
3年前の対戦でも先発して、後半12分までプレーした経験を持つ畠山はイタリア代表のスクラムの印象に関して、以下のように語る。
「イタリアとの試合が、僕の人生の中でヨーロッパのチームとの初めての試合だった。たとえば、フィジー、サモア、トンガと言ったアイランダーと試合をやっても、スクラムが強いと感じてもすぐにボールを出したりするチームが多かった。のに、イタリアはスクラムにこだわって、どんどん押してくる。そこまでスクラムにこだわってくるチームはそれまでになかった。そういう意味では、ラグビ―観、とにかくスクラムへのこだわりの部分に関してショックを受けた」
 具体的には、「ヨーロッパのチームは押す方向を統一するという意識が高い」と畠山は言う。
「それに対して、受けに回らずにこちらがいかにいい姿勢をつくれるかが鍵になる。ファーストスクラムがすごく大事。相手に対してはネガティブなイメージを持ってもらって、レフリーに対してはジャパンがしっかり組めているという印象を与えられるようにしていきたい」

ちなみに、11年の対戦でもスクラムで強さを見せたPRマルティン・カストロジョバンニやNO8セルジョ・パリッセ主将は今回の遠征には加わっていないが、106キャップを誇るLOマルコ・ボルトラーミ、日本戦が100キャップの記念すべき試合となるFLマウロ・ベルガマスコなど、イタリアは経験豊かなFW陣で日本に立ち向かってくる。

「イタリアはキックの使い方が上手い」と、リーチ主将はハイパントの処理などもポイントに挙げる
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アメリカ戦後のリーダーズミーティングで指摘された課題は修正して有終の美を飾れるか
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「03年W杯時には強くなかったスクラムが

いまや日本の武器」(伊・ブリュネル監督)

日本戦の前に立ち寄ったサモア、フィジーではスクラムでプレッシャーを受ける場面もあったイタリア。
「イタリアのスクラムは確かに強いケースが多いが、必ずしもいつもというわけではない。特に先週はダメだった」
イタリア代表を率いるジャック・ブリュネル監督は、現在のチーム状態について正直にそう語る。
ブリュネル監督はフランス出身でフランス代表はもちろん、コロミエ、ポーなどフランスの名門クラブの指導経験を持つ名将。
同2つのクラブでは当時まだ現役選手だったマルク・ダルマゾ現日本代表スクラムコーチと一緒だった。
「マルク(=ダルマゾ)がコーチになってから、日本のスクラムはどんどん強くなっている。いまやスクラムは日本の武器になっている」
ブリュネル監督は03年のラグビーワールドカップ豪州大会ではフランス代表コーチとして日本代表と対戦した経験も持っているが、「あの時の日本も素晴らしいチームで、特にBKには苦しめられたが、スクラムは強くなかった。その時に比べて、ひとりひとりがフィジカルになっているし、組織力も上がっている」と、成長を続ける日本のFWプレーを警戒する。

イタリア代表との一戦にテストマッチ10連勝を懸ける日本代表はリザーブの8人も含めて、メンバー全員がアメリカ戦と同じ顔ぶれ。
伊藤鐘史─トンプソン・ルークのLOコンビに関しては、ジョーンズHCは「ラインアウトでベストコンビ。セットプレーがうまくいけば、イタリアDFをトラブルに巻き込める」と、その起用意図を説明。
「真壁(伸弥)とキンちゃん(大野均)はいいボールキャリアでフィジカルコンタクトも強いので後半エネルギーが必要になった時に力を発揮してくれるはず」(同HC)と、当然だがリザーブ陣のインパクトにも期待する。

また、日本に戻ってからのトレーニングではイタリアのキッキングゲームへの対応にも時間が割かれた。
「イタリアはキックの使い方がうまいチーム。ハイパントとキャッチからのカウンターが上手。
春からずっとハードに練習してきたけど、今日(6月19日)の練習が一番激しかった。みんな疲れているがトップ10に入るにはそれくらい努力しないとだめなのもわかっている」(FLリーチ マイケルキャプテン)

1年前のウェールズ戦勝利に続き、6カ国対抗組の強豪チームを破り、世界のトップ10入りへのチャレンジを宣言するような今季最終戦にしたいところだ。

11年W杯直前のアウェー戦では終盤イタリアにスクラムを支配されて逆転負けを喫した(24-31)
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