マッチリポート 第50回 全国大学選手権大会

帝京大学 53-10 慶應義塾大学
【ファイナルステージ準決勝 2015年1月2日(金) /東京都・秩父宮ラグビー場】
第1試合の興奮が残る秩父宮ラグビー場にて、準決勝第2試合目が久保レフリーにより午後2時10分にキックオフ。この日のカードは、選手権5連覇中の帝京大学とファーストステージの激戦を勝ち抜いた慶應義塾大学との対戦。ご存じの通り、この対戦は関東大学対抗戦グループの最終節で対戦しており、その時のスコアは、「48-0」にて帝京大学の勝利だった。その時点から約1カ月経過しての対戦となり、<1>六連覇を目指す、帝京大学の仕上がり状況は?<2>前回は大敗した慶應義塾大学の巻き返しは?の2点に注目したい。
慶應義塾大学は、FBに青井邦也(慶應義塾高校)を公式戦で初起用。ご存じの様に三代続いての慶應BK&キッカーとなる新人が流れを変えるか?

両チームが入場すると、明らかに対格差はひとまわり大きい帝京大学に優位性がある様に見えるが、キックオフと同時に慶應義塾大学選手の気迫のタックルに受け身となる帝京大学。更に驚いたのは開始4分過ぎのファースト・スクラムでの慶應FWの捲り上げる様な押しに大型帝京FWが後退、俄然、会場は盛り上がる。
前半中盤過ぎまでは、この気迫のタックルとFWの健闘と相まってキック多様のゲーム展開となるが、ここで大きな差が浮き彫りとなる。帝京BK陣のSH流、SO松田、WTB磯田、尾崎、CTB金田、権、FB重の決定力あるプレーヤーの差がこの後のゲーム展開を決定的なものにする。
セットプレーからFW陣がサイドを攻めて2、3フェーズを重ねたところで、相手防御陣が崩れた時点で決定力のあるBKへボールを供給してトライを重ねていく必勝パターンとなる。
こうなると興味は慶應サイドの攻撃となるが、後半22分の帝京ゴール前の攻防戦でトライを取り損ねたことで、ゲームはより一層の一方的な流れへ傾いていった。

「53-10」と結果的にはワンサイドの得点差となり、決勝戦は帝京大学VS筑波大学のカードとなった。両チームの健闘を祈りたい。

(武田守久)
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(c) JRFU 2015, photo by H.Nagaoka
会見リポート
 

監督・キャプテン
帝京大学の岩出監督と流キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督

「よろしくお願いします。準決勝に臨み、決勝に出ることが決まり喜ばしく思います。内容の分析はあるかと思いますが、今日はたぶん筑波さんが来るだろうと、決勝はキックの多い試合になると考え、向こうのキックが少し多くなっても良いから慣れてみたいと臨みました。違う意味での我慢ができたと思います。ただ、優しい、怖さのないプレーもしていたように感じます。相手のペースでなく、我々のペースで厳しく行こうとハーフタイムに伝えました。後半はボールを動かして、大味でない試合をしたかったのですが、スコアが離れるとまた少し優しいプレーが出たと思います。慶應義塾さんは特に前半はブレイクダウン、スクラムとも気迫を感じました。プロップ陣にとって目を覚ます迫力がありました。しっかり身に付けてくれればと思います」

──権くんの復帰は?

「80分間、体力的にきついし、集中力が切れて、違うところを怪我するのではないかと心配しました。ほとんどAチームでやっていないのに、あれだけゲームができれば立派です。一番の収穫は本人が自信を持ったことです。本当は決勝で使いたかったのですが、出ることによって皆が応援する、仲間が戻ってきてくれたと感じる選手です。復帰戦を飾れてよかったと思います」

──筑波を警戒する部分は?

「秋はブレイクダウンに少し受け身になりました。その分、向こうは手ごたえを感じていると思いますので、そこは我々もしっかりプレッシャーを掛けたいと思います。あとはスピードに乗って走ってくる選手をしっかり止めて、決勝戦としてしっかりやっていきたいと思います」

○流大キャプテン

「よろしくお願いします。しっかり勝利し、1月10日に進めることを嬉しく思います。厳しさ、激しさを出そうと臨みましたが、前半は慶應さんの方が激しく来て、自分たちのひ弱な部分が出たと思います。ゲームとしては集中できる部分もあり、それがスコアにも少し表れたかと思います。慶應さんに学んだことを自分たちの力にして、決勝では慶應さんの分もしっかり戦いたいと思います」

──スコアは開いたが?

「やはり、慶應さんは凄く激しく、気持ちを前面に出してくる、セットピースも厳しくやって来るチームだと感じました」

──次は決勝だが?

「まず、筑波さんはブレイクダウンに強いので、真っ向勝負したいと思います。もう一度セットプレーを安定させて、今年やってきた攻守そろったダイナミックラグビーを完成させたいと思います」

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(c) JRFU 2015, photo by H.Nagaoka
 

監督・キャプテン
慶應義塾大学の和田監督と木原キャプテン

慶應義塾大学

○和田康二監督

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。昨年と同じ大学選手権準決勝で帝京さんとやれる喜びを感じながら、思い切りぶつかったのですが、残念ながらこの結果となりました。選手は一年間帝京さんに追いつけるよう努力して、随所に良いプレーをしました。最後に力尽きたが、選手は本当によくやってくれました。日本選手権が残っていますので、このチームでまだ試合できることを嬉しく思います。4年生にとって、このチームでラグビーができるご褒美をいただいたと思います」

──ゲームプランは?

「フェイズを重ねてアタックはできないと思っていました。敵陣でのミスを突く、ハイパント、ターンオーバーからの得点をイメージしていました。ディフェンスでは、よく我慢したところもありましたが、これだけ得点されてはうまく行かなかったと言えます。前後半、獲り切れなかったところで、逆に相手に獲られたところが勝負のアヤだったと思います」

○木原健裕キャプテン

「本日はありがとうございました。結果は、まだ、気持ちの整理ができていませんが、去年よりも点差をつけられてしまいました。脳振盪で、あまり記憶がないのですが、僕のいない間も仲間が最後まで身体を張ってくれる姿を見て、キャプテンとして支えてもらった感謝の気持ちで一杯です。勿論、ファンの皆様にも感謝の気持ちを述べたいと思います。まだ、ラグビーをできる機会をいただいて、去年は100-0で神戸製鋼さんに負けているので、ラグビーができる喜びを噛みしめてやりたいと思います」

──トライと認定されなかったが?

「それはレフリーの判断です。それも含めて試合だと思います。その中でトライできなかったシーンでは、次のマイボールスクラムのことだけ考えていました。過去のことを試合中に考えても仕方がないので」

──シーズンが深まると強くなったが?

「筑波戦まで、4連勝とチーム一つになってやれることをやりました。明治戦に負け、早稲田戦で引き分け、帝京さんに48-0で負け、基本スキルに立ち返りやってきました。大学選手権では、中大戦で少しフワッとした空気があって和田監督から喝を入れられ、4年生にとっては負けたら終わりと気合を入れ直して、流通経済大戦で最後に勝つことができました」