三たび5戦全敗も過去3大会より攻守に手応え
コアチーム死守のため米国で多くのポイントを

6、7日、HSBCセブンズワールドシリーズ(SWS)2014-2015第4戦ニュージーランド大会「ウェリントンセブンズ」が行われ、男子セブンズ日本代表は初日のプール戦でアメリカ、南アフリカ、フランス、翌日のノックアウトトーナメントでボウル準々決勝でアルゼンチン、シールド準決勝でカナダにいずれも敗れて5戦5敗。4トーナメント連続でコアチームの中で最下位の15位で大会を終えた。
男子セブンズ日本代表はSWS第5戦となるアメリカ大会「ラスべガスセブンズ」のため、ニュージーランドから直接渡米する。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP Kenji Demura
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大会の“入り”は完璧と言っていいものだった。
「(国内合宿)初日から全員が揃ったことが大きい」
開幕前に坂井克行主将がそう語っていたとおり、過去3大会に比べて事前準備に手応えを感じていたことの表れのように、日本は初戦のアメリカ戦の1分に、3大会ぶりに復帰のレメキ ロマノ ラヴァがいきな決定力のある走りを披露して先制。
アメリカとは今季、豪州大会(10月11、12日、ゴールドコースト)およびドバイ大会(12月5、6日)で対戦し2敗していたが、ドバイ大会では双方2トライずつ記録しながらゴールの差で敗れる互角の戦いぶりも見せていただけに、3度目の正直に期待は高まった。
「WTBにとても速い選手がいるので、その対応をまずしっかりする。彼らにスペースを与えてしまうと、好きなように走られてしまうので、個で来る相手にいかに組織で守るか」というのが、坂井主将が事前に語っていたアメリカ戦のポイントだったが、3分にその警戒していたWTBカーリン・アイルズにターンオーバーから走られてトライを返され、ゴールも決まって、アメリカがあっさり逆転。
「継続ができていない。ディフェンスでも粘り強く止め続けることができていない。それが現状」
瀬川智広ヘッドコーチがそう認めざるを得なかったとおり、5分にもやはり自分たちが攻めたブレイクダウンでボールを奪われた後のカウンターでアメリカが2トライ目。
後半1分にも最も警戒していたはずのアイルズに2トライ目を奪われると、あとは一方的にトライを重ねられ、5-40という大差で敗れた。

続く2戦目は、ドバイ大会、南アフリカ大会 (12月13、14日)と、2大会連続で優勝し、シーズンランキング1位に立つ南アフリカ。
この世界王者に対しても日本は立ち上がり、いいかたちで攻め込む。
坂井主将がゴール迫った後に外側を攻めたが、ラストパスが通らずにノートライ。
完全にトライになっておかしくなかっただけに、これで気落ちした面もあったのか、この後、3分、5分、7分と南アフリカに3連続トライを奪われてラインアウトから攻められて、前半0-19。
それでも後半は「ディフェンスは肩を当てられるようになってきた」(桑水流裕策)という守りの面での粘りもあって、お互い無得点が続いた後、5分に前試合に続いてレメキが決定力を披露してトライ。
終了間際に南アフリカにダメ押しトライを奪われたものの、世界王者に対して戦える部分もある感触をつかんで、プール戦最後のフランス戦に臨んだ……はずだったのだが、いきなり今度は立ち上がりから日本の悪い面ばかりが目立つ内容となってしまう。

試合開始直後にノーホイッスルトライを許す最悪の立ち上がり。
日本も直後のキックオフからレメキ、坂井主将など突破の後、右に振って後藤駿弥がトライを返したものの、その後フランスに3分、5分、8分とトライを重ねられ、現実的には前半だけで勝負あり。
パワーランナーにファーストタックルを外され、あるいは日本がラインブレイクで敵陣に入った後のブレイクダウンをターンオーバーされて逆にトライを奪われるパターンの繰り返しで、最終的には35-17で敗れた。
「まずはタックル。あれだけ練習してきたのに、大事なところで決まってこない。特にフランス戦では、大事なところでタックルが決まらずスコアされた。そういう展開になるとジャパンは勝てない」(坂井主将)
「2人目を剥がしきれずにターンオーバーから取られたりするシーンがいくつも見られる。せっかくチャンスを作ってくれた人に対して遅れてしまう。あそこの差。あのキツい中でどれだけ正確にボールを出せるか。ひとりひとりのテクニック、精度を上げていかないと」(桑水流)

ただ、後半トライを奪った彦坂匡克、その彦坂のトライにつながる突破を見せた松井千士など、若手が積極的なプレーでチームに勢いを与えた収穫もあった。
「思いっきり負けているとは個人的には思っていない。通用するところは通用している。自分たちでミスが多かったりして、継続できなくて、ミスからトライを取られるというのが多い。継続できればトライにつながる。ミスをなくしていくのが成長していくには重要」(彦坂)

一方、1年ぶりのSWS復帰となった藤田慶和は回りと噛み合わないケースも多く、「(いま日本がやっているのは)待つディフェンスなのでスイーパーが動く距離が多くて、そこでバテてしまって、持ち味のアタックでボールをもらった時にスピードでいけなかったり、疲れてしまっていて、いいところでボールをもらえない。もう少しディフェンスでコミュニケーションとって、そこの疲れを少なくしてアタックに積極的に行きたい」と、課題を語っていた。

photo by RJP Kenji Demura
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「スピードの駆け引きがわかってきた」(松井)

翌日ノックアウトステージ初戦の相手はアルゼンチン。
前回の南ア大会ではプール戦でサモアを倒したものの、ノックアウトステージで連敗したため、獲得ポイントはプール戦全敗に終わった豪州大会およびドバイ大会と同じ「1」のみ。
コアチーム残留のため、できるだけ多くのポイントを稼ぎたい日本にとっては「一番大事」(坂井主将)という位置づけの試合だったが、「キックオフが安定しなくて、ボールを全くとれなくてアタックの機会なかった」(瀬川HC)と、守り一辺倒の試合になってしまう。
後半開始直後にまたも「Hondaで15人制でプレーしていても問題なかった。同じラグビーだし、少しフィットネスが必要になるだけなので」というレメキの個人技でトライを奪ったものの、アルゼンチンに前半4本、後半2本のトライを重ねられて5-38で完敗。

4大会連続でシールド準決勝に進むことになった日本は昨年の東京セブンズで破っているカナダに対して、またも試合開始直後のノーホイッスルトライを皮切りに3トライ連取されて5分までに0-21とリードされる最悪の立ち上がり。
それでも、「落ちたボールに対して誰がどこに行くかというのを再確認した」(瀬川HC)というキックオフでボールを取れるようになったこともあり、前半終了間際に松井のブレイクで敵陣深くに攻め込んだ後、PKから坂井主将がトライを返して7-21で折り返した後の後半0分、2分と「ディフェンスのコミュニケーションの部分とアタックでは積極的に勝負していくという部分を意識してやっていきたい」と昨年の香港セブンズ以来となるSWSでの抱負を語っていた藤田の連続トライでいったんは同点に。
藤田のトライを導いた松井は「相手とのスピードの駆け引きがわかってきた」と、成長を自覚。
ただし、「現実的には、いまの日本は3本トライを取るのが限界。4本、5本取れる力はない」という坂井主将の認識どおり、5分にハーフウェイライン付近のブレイクダウンで反則を取られたPKからカナダに攻められて決勝トライを奪われ、4大会連続でシールド準決勝での敗退となった。

「得点に関しては、各試合でトライを取れるようになった。アタックのオプションも増えて、ステップだけではなく、走るコースとかで、いいアタックができるようになってきている。リンクしながら、いいスペースに走ったり。そういう部分はよくなってきている。ただ、抜けてしまった後のボールのリサイクルに対してはまだまだ世界レベルに達しているとは言えない。やはりボールの争奪で負けている部分。集散の早さ。2人目、3人目のスピードが上がってきていない。そこは世界との差はある。
ディフェンスも面のつくり方がよくなってきている」(瀬川HC)
三たび5戦全敗に終わったものの、過去3大会よりも確実に手応えを感じ、そしてだからこそ課題も明らかになった男子セブンズ日本代表は次なる戦いの場となるアメリカに移動した。

photo by RJP Kenji Demura
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