RWCイヤー最初の国内でのテストマッチで
ファンを満足させるアタッキングラグビーを

5月2日、ワールドカップイヤーの国内最初のテストマッチとなるアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)2015、リポビタンDジャパンシリーズ日本対香港の第1戦が東京・秩父宮ラグビー場で行われる。

4月18日にアウェーの韓国戦で56―30と勝利を収めた日本代表は2週間前の先発メンバーからFW、BKそれぞれひとりずつを入れ替え、「いつも通りベストな23人を選んだ」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)という布陣で、香港を迎え撃つ。

(text by Kenji Demura)

前半苦しんだ韓国戦から一転、立ち上がりから主導権を握ったパフォーマンスで国内のファンを喜ばせたい日本代表
photo by RJP Kenji Demura
韓国戦でいきなり初代表キャップで初トライを記録したWTB松井。スピードを買われて再び先発メンバー入り
photo by RJP Kenji Demura

「最初の20分しっかりプレーできるように臨みたい」
前半終了間際までリードを許す厳しい立ち上がりとなった韓国戦の反省も踏まえ、PR畠山健介キャプテンは試合開始直後からしっかり主導権を握っていくことを香港戦のポイントのひとつに挙げる。

もちろん、2週間前の苦戦に関しても「韓国戦だけを考えたなら80点を取って勝っていた。しかし、我々が見据えているのはワールドカップ。ARCで今後もこういう試合があるかもしれない」(ジョーンズHC)と、あくまでも今秋のラグビーワールドカップ(RWC)イングランド大会での戦いを想定してオプションを増やすなど、敢えて厳しい戦法を採ったという面もあった。

「まだ15人で合わせた時間も少なかったので、チームとしてはそれほどネガティブには捉えていない」
韓国戦のパフォーマンスに関しての選手たちの自己評価を代弁するのはFB五郎丸歩バイスキャプテン。
「一番、問題だったのは、ミスが起きたとき、いかに早くリカバリーするかが重要なのに、できなかったこと。それはリーダーの責任でもある」
自らも含めたリーダー陣がまだ機能していなかったことを反省点に挙げる五郎丸バイスキャプテンだが、香港戦に関しては集まってくれたファンを満足させるパフォーマンスが必要であることも強調する。
「国内で期待して来てくれるファンはたくさんいる。ワールドカップに向けての準備の一環みたいなところは、エディーさんやコーチ陣がコントロールすればいい。選手自身が調整する必要はない。いま持っている力を出して、見に来てくれたファンを満足させられる試合をするだけ。
やっぱり『アタッキングラグビー』を掲げているので、完成度の高い、敵を圧倒する攻撃ラグビーをやっていきたい」

FL村田は韓国戦途中出場で初キャップを獲得。慣れ親しんだ秩父宮で初先発し、どんなプレーを見せるか
photo by RJP Kenji Demura
SO立川と共にゲームコントローラーとしての役割が大きいCTB田村にとってはW杯南ア戦も意識しながらのゲームメイクとなる
photo by RJP Kenji Demura


「しっかり準備し遂行。フィードバックして次につなげていく、いい循環を」(畠山主将)

そんなワールドカップイヤーにおける国内最初の試合で新たに先発メンバーに加わったのは、FL村田毅とWTB山田章仁。
「他のみんなほど日本代表のジャージーが似合っていないので、このジャージーの似合う男になれるように頑張っていきたい」という村田は、途中出場して初キャップを獲得した韓国戦でのプレーが評価されて先発入りを勝ち取った。
「フィジカル、スキル面におけるハードハークが実った」(ジョーンズHC)

一方、スーパーラグビーのフォースで出場機会に恵まれない山田も、「総合的に南アフリカやスコットランドと対等にできるような選手にならないと、ワールドカップでは活躍できない。大きなプレーというよりはすべての仕事をしっかりやらないと」と、モチベーション高く香港戦に臨むことを強調する。

また、韓国戦で日本代表初キャップと初トライを記録した松井千士は2戦連続での先発出場となる。
「スピードを買われて、メンバー入りしている。そこだけは代表メンバーの中でも負けたくない。韓国戦ではボールタッチの回数が少なかった。自分はボールを持たないと仕事ができないのでタッチの回数を増やしたい。韓国戦は(チームに合流して)1週間だったので、コミュニケーションが難しかった。日本代表が秩父宮で試合しているのを見てきたので、そういうところに立てるのは名誉なことなので、緊張するかもしれないですけど、今度は自分からどんどんボールを要求してアピールしていきたい。自分の中で大きな試合になる」

2015年の国内最初の試合となる香港戦に関して、RWC初戦の南アフリカを想定した戦いとなることを強調するメンバーもいる。
「セットピースからも素早くボールを動かして、ジャパンのフェイズを重ねるアタックをする。対南アフリカを想定した戦いでもあり、いいゲーム、速いラグビーをしたい」(LO伊藤鐘史バイスキャプテン)

SO立川理道とともにゲームコントローラーの役割を担うCTB田村優も「勢いが出過ぎた時にチーム落ち着かせたり、バランスを取ることも南アフリカ戦では大事になる」と、RWC初戦を意識したプレーに備えている。
「韓国戦のように同じミスを繰り返さないこと。みんな久しぶりに代表に戻ってきたばかりで難しかったが、時間が解決してくれている」

そんなふうに色々な意味合いを持つ香港戦で気をつける点をPR畠山キャプテンは以下のように語る。
「FWとしては仕事量、リアクション。韓国戦はリアクションがよくなかった。ここは要改善。香港戦は仕事量を上げるようなゲームプランになる。バックスとのリンケージ。ここは全然やっていなかったので、合ってない部分もあった。まだまだ全体練習でもミスが多い。セットピースの精度も大事になる。
とにかく、意味のある試合にしたい。しっかりした戦術が提示されているので、準備して、遂行する。しっかりフィードバックして、次につなげていく。そういういい循環にしていきたい」

4ヶ月半後に迫るRWC2015での日本代表の活躍を予感させるパフォーマンスを期待したい。

短い合流期間ながら、いきなり先発メンバー入りのWTB山田。SRで成長したところを日本のファンに見せられるか
photo by RJP Kenji Demura
全試合がW杯への過程であることを強調するジョーンズHC。さらなる進化への可能性を感じさせるパフォーマンスを期待したい
photo by RJP Kenji Demura