スクラムでも継続攻撃でも成長ぶりを披露
アルゼンチンに惜敗も価値ある世界10位に

20日、イタリアのヴィアダーナで「ワールドワグビーU20チャンピオンシップ2015」9位決定戦、日本—アルゼンチン戦が行われ、日本は前半5分のNO8テビタ・タタフのトライで先制したものの、アルゼンチンに終盤に3トライを重ねられるなどして、21—38 で逆転負け。

世界10位で大会を終えた。

100%やり切って大きく成長。世界で戦えることを実感したU20代表

100%やり切って大きく成長。世界で戦えることを実感したU20代表
photo by RJP Kenji Demura

 

世界トップ12チームが集う同大会で、すでに昇格1年目ながら見事残留を勝ち取っていたU20日本代表が最終戦で対戦したのは、12年には世界4強入りを果たしている強豪チームのアルゼンチン。

今大会でもニュージーランドに29—32、アイルランドに16—18と、世界トップと互角に渡り合ってきた相手だった。

 

「まずは敵陣でプレーすること。そして、大きな相手に対してもラインアウトでプレッシャーをかけていく。我々としては、大きな相手との方がやりがいがある」

そんなふうに、このチームでの最終戦のゲームプランを語っていたのは、中竹竜二ヘッドコーチ。

 

プール戦で3連敗の後、9—12位決定トーナメントの初戦でサモアに29—12で快勝。

「それまではBKとFW連携していない部分があったが、ウェールズ戦の終わった後、FWはBKのために、BKはFWのためにということを考えて、チーム一丸となって戦えるようになった」

HO堀越康介キャプテンが語るとおり、「事前にいろんな経験させてもらったが、勝つことだけは経験していなかった」(中竹HC)チームは初勝利で一気に自信を深め、平均身長が190センチを越える南米の雄との戦いでも立ち上がりから完全にペースをつかむ。

 

ゲームプランどおりに敵陣に入って、ディフェンスでプレッシャーをかけてPKを得ると、いきなりスクラムを選択。

「本当にFW8人が自信を持っていた」といいスクラムで組み勝って、再びPK。このチャンスにNO8タタフがクイックタップから突っ込んで先制(前半5分)。

 

さらに33分には、スクラムの強さとは対局にあるような、圧巻と言っていいつなぎのプレーで2トライ目を奪う。

ラインアウトからの1次攻撃でブラインドWTBの矢富洋則が内側を攻めた後、ラックから出たボールをFB野口竜司が判断よく相手ディフェンスのギャップを突き破って大きくゲイン。さらにFL占部航典、そして再び矢富へとしっかりサポートした選手にドンピシャのタイミングでパスが通って、再びアルゼンチンゴールを陥れた。

「みんなのいいプレーがつながって、トライまで行った。ずっと継続するアタックをテーマにしてきて、ウェールズ戦まではつながらなかったのが、最後はつながるようになった」

BKリーダーのWTB尾﨑晟也バイスキャプテンが代弁するチームの成長ぶりを証明するような最高のトライも出たが、前半を終えてのスコアは14—17でアルゼンチンが3点リード。

自信を持つスクラムからも、目指してきた継続攻撃からもトライにつなげたのにリードされての折り返しとなった理由を中竹HCは以下のように説明する。

「これまでにない小さなエラーが多く、そこを修正できなかった。やっている選手たちも手応えは相当感じていたと思うが、スモールエラーをどうチームとして修正していくというところではまだ力が足りなかった。

前半リードした後、しっかり守り切るあたりとか。連続でミスをしてしまうあたりとか。ゲーム全体のアンダースタンディングのところ」

 

「前半、自分たちの戦いができた」(FL占部)にもかかわらず、試合の流れを完全には自分たちのものにできなかったのが悔やまれた。

前半33分のWTB矢富のトライは大会ベストに選ばれてもおかしくないほど。チーム全員の気持ちが繋がったからこそ生まれた

前半33分のWTB矢富のトライは大会ベストに選ばれてもおかしくないほど。チーム全員の気持ちが繋がったからこそ生まれた
photo by RJP Kenji Demura

 

「やり切った。100%に到達した」(堀越主将)
「全員がベスト以上の力を発揮」(尾﨑副将)

それでも、日本は後半11分にも敵陣深くのPKからFL占部が仕掛けてNO8タタフにつないで3トライ目を奪い、再び21—17とリードする。

ここからは、サモア戦で終盤20分間を無得点に抑えて勝ち切った再現が期待されたが、この日は「自分たちのペナルティとかミスしたところから攻め込まれてスコアされた。そういうターニングポイントというか、ミスしてはいけないところでミスがあった」 (堀越キャプテン)ことが響いて、後半18分以降アルゼンチンに3トライを重ねられた。

 

「僕らが一番、練習やらミーティングやらでラグビーに費やしてきた時間が長い。勝つ資格がある。絶対、世界9位になってみせると言い聞かせて臨んだ」(LO加藤広人)

そんな思いで一つにまとまったチームプレーは、どれをとっても強豪アルゼンチンにひけをとらなかった。

「成長の伸び率で言えば、どこのチームよりもこのチームは一番。12チームの中で劇的に伸びていった。アイルランドやNZに接戦をしたアルゼンチンに、試合中もずっと『いける、いける』と言って戦えた状態まで行ったというのはメンタル的にも、いままでにないレベルまできたと感じている。

常にサポートをつけながらプレー。ボールを持っていない時の動きでアタックにしろ、ディフェンスにしろ、一人でプレーしないで、連動していくということができた部分は評価したい。

ファーストタックラーだけではなく、しっかり2人で止める。一人で行かずにシェイプを使って複数で動くという部分は、本当に良くなった」

そんな風に選手たちの成長ぶりに目を細めた中竹HCは、「だからこそ、勝たせてやりたかった」と唇を噛んだ。

その中竹HCはイタリアへの出発前の時点ではチーム状態に関して「目指すところからすると40%くらいのところまでしか来ていない」と、正直に語っていた。

世界トップ12での厳しい戦いを経て、若いチームの到達点は?

大会に入り厳しいプール戦での戦いを経て、サモアを撃破して残留を勝ち取り、アルゼンチンを追いつめながら成長していったチームを代表してHO堀越キャプテンが胸を張る。

「今年のU20日本代表はやりきった。100%に到達した」

尾﨑バイスキャプテンの感触はさらに上を行くものだ。

「最後は全員がベスト以上の力を発揮できた」

どんなレベルだって、ここまでの感触が得られるチームはそう多くは存在しないはずだ。

 

「今年できることはすべてやった」

そう中竹HCは振り返った。そして、その結果として「このレベルにきてしっかり戦えるベースは作れた。本気でべスト8を狙いたいし、本気で準備したらいける」との感触も得た。

 

今年のチームが100%出し切った地点をベースに、今後も世界へのチャレンジが続けられるなら、イタリアでの奮闘はさらに意義深いものになる。

text&photo by Kenji Demura

強力FWのアルゼンチンにもスクラム勝負を挑んでトライにつなげた。最前線での駆け引きでも大きく成長

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photo by RJP Kenji Demura

サポートと好判断で2つのトライを生み出したFL占部の攻守における仕事ぶりも光った

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photo by RJP Kenji Demura

攻守に徹底したダブルアクションでサイズのハンディをカバーするスタイルで世界で戦える実感を掴んだ

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photo by RJP Kenji Demura