因縁の相手からRWC前に厳しいレッスン
ブレイクダウン支配されトンガに敗れる

カナダ東部夏時間の3日(日本時間4日)、トロントでワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ(PNC)2015最終節、日本−トンガ戦が行われ、日本は20—31で敗れた。
途中出場のFLツイ ヘンドリックのトライなどで前半は互角の戦いを見せた日本だったが、後半はトライを奪えず、フィジカルなトンガに試合を支配し続けられた。
この結果、カナダ、アメリカ、フィジー、トンガと戦った日本は1勝3敗の4位でPNC 2015を終了。
9月18日に開幕するラグビーワールドカップ(RWC)2015への準備試合としては8月15~29日に日本国内で3試合を戦うリポビタンDチャレンジカップ2015と、渡英後の9月5日の対ジョージア戦が残されるのみとなった。

4年前のNZ大会を彷彿とさせるトンガ戦を経て、RWC準備の最終段階へ進んでいく日本代表

4年前のNZ大会を彷彿とさせるトンガ戦を経て、RWC準備の最終段階へ進んでいく日本代表
photo by Kenji Demura

奇しくも、4年前にニュージーランドのファンガレイで喫したのと同じ31失点。
RWCニュージーランド大会で日本の前に立ちはだかったトンガ代表にまたも世界で戦う厳しさを突きつけられた。

「すごく悔しい。自分たちの強さが全く出せなかった」
試合後、FLリーチ マイケルキャプテンはリーダーらしく潔く完敗を認めた。

立ち上がりから勢いがあったのはトンガ。
トライにつながりそうなピンチもあったが、相手のノックオンや密集でのターンオーバーでピンチをしのいだ日本が逆に前半7分にFB五郎丸歩のPGで先制。

トンガも同9分にすぐにPGを返して3−3になった後、16分には「FWプレーはPNCを通じて良かった」と、スティーブ・ボーズウィックFWコーチが成長を認めるスクラムでPKを勝ち取り、再びFB五郎丸のPGで勝ち越し。

この後も安定したセットプレーから日本が攻める時間が多くなり、前半25分にはトンガFLニリ・ラトゥ主将が密集内での故意の反則でシンビンに。
日本にとっては、流れをつかむチャンスだったが、次に得点を取ったのはトンガ。
同28分に日本にもイエローカードが出されて、数的にはイーブンに戻っていた30分。
トンガはラインアウトからモールを押し込んだ後、FWがラックサイドをしつこく攻めて最後はPRハラニ・アウリカがトライを奪ってトンガが逆転。

日本も同32分にWTBカーン・ヘスケスが自陣から快走し、一気にトンガ陣22m内へ。さらにSO小野晃征が前に出た後、FL マイケル・ブロードハーストに代わって途中出場していたFLツイがトライ。
いったんは日本が11—10とリードしたものの、34分、40分とトンガが2本のPGを加えて、11-16でハーフタイムとなった。

トンガの激しいタックルに顔をしかめて倒れ込むFLリーチ主将。日本はブレイクダウンでは完敗だった

トンガの激しいタックルに顔をしかめて倒れ込むFLリーチ主将。日本はブレイクダウンでは完敗だった
photo by Kenji Demura

「この試合をワールドカップ前にできて良かった」(リーチキャプテン)

後半に入ってもスクラムでの日本の優勢は代わらず、2分、8分とFB五郎丸が2本のPGを決めて、いったんは日本が逆転(17—16)。

「トンガはサモアと似た相手。ゲームプランのいくつかはサモア戦を想定したものになる。いいテンポのラグビーをしたい。ここ2試合は違うスタイルのラグビーをしていたので、今度は本来の自分たちのナチュラルな部分を出していきたい。
選手たちはもっと、結果とパフォーマンスに責任を持たないといけない。ワールドカップへはもっと選手主導になっていくことを期待している」
エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは試合前にそう語っていたが、後半に入ってもなかなか日本らしいテンポのいいアタックは見られなかった。

逆にトンガは14分にFWがしっかりフェイズを重ねながらゲインした後、外側のスペースを攻めて左WTBフェトゥ・バイニコロが走り抜けて再び逆転。

試合後、SO小野が「相手のやりたいようにやらせる時間が多かった。ジャパンがボール持ってない時に取り返す気持ちがあったのか。アタックでボール持っている時に本当に大事にして前に出る気持ちがあったのか」と振り返ったとおり、終盤、本来なら日本がテンポを上げて相手を置き去りにしていくことが想定されている時間帯になっても、試合を支配していたのはトンガだった。

ゆっくり、ゆっくりボールキープを続けながら、20分にSOモラスがPGを決め、39分にはFWがフェイズを重ねて作り上げたチャンスに最後は縦に走り込んできたCTBシオネ・ピウカラからSHソナタネ・タクルアへつないでダメ押しトライ。
PRひとりを入れ替えただけで、残り14人は不動のまま80分間を戦ってみせるなど、仮想サモアのトンガに余裕を見せつけられての敗戦となった。

「トンガは前回のワールドカップのようにブレイクダウンでプレッシャーをかけてきた。
この段階でそれをやってくれて良かった。
相手チームは日本はブレイクダウンでプレッシャーをかければ日本は何にもできないと分析してくる。
そうならないように、ボールキャリーとブレイクダウンの質を高めないとけない。
DFはもっと激しいDF。ずっと我慢のDFをやっているが、もっと前に出て止めてというプレッシャーあるDFにしていかないと」(FLリーチキャプテン)

「スーパーラグビーの選手が帰ってきて、まだあまり合わせられていない。そういう小さなタイミングの問題もある。それが簡単なミスにつながった部分もある。

リーチ選手、田中選手、少しタイミングが違う部分もある。僕らも合わせる部分があると思うし、彼らもジャパンのタイミングに合わせる必要がある。
選手全員が同じ方向を向けなかった。スキルの部分も上げていきたい」(HO堀江翔太)

「シェイプをつくるためにブレイクダウンは2、3人になった。前半はもうちょっとプラスして、ブレイクダウンでプレッシャーをかけた方が良かった。修正するのが遅れたし、ブレイクダウンに人数をかけるようにしたら、今度は集まり過ぎて、次のシェイプがなくなってしまった。そこはもう少し賢くやりたい」(LO伊藤鐘史)

選手たちは一様に「ショック」を受けた敗戦だったことを正直に吐露。ただ、その一方で、「この試合をW杯前にできたのは良かった」(リーチキャプテン)とも。

RWC開幕まで1ヶ月半。
再び因縁の相手トンガとの対戦で得られた貴重なレッスンを経て、日本代表はRWC 2015への準備の最終段階へ進んでいく。

text by Kenji Demura

前半32分のFLツイのトライにつなげたWTBヘスケスの快走。思い切りのいい走りでチャンスをつくった

前半32分のFLツイのトライにつなげたWTBヘスケスの快走。思い切りのいい走りでチャンスをつくった
photo by Kenji Demura

13年秋以来の日本代表でのプレーとなったSOCTBウィング。途中出場ながら攻守にインパクトあるプレーを見せた

13年秋以来の日本代表でのプレーとなったSO/CTBウィング。途中出場ながら攻守にインパクトあるプレーを見せた
photo by Kenji Demura

再びトンガに突きつけられた厳しい現実。RWC開幕まで1ヶ月半。課題を修正する作業が続く

再びトンガに突きつけられた厳しい現実。RWC開幕まで1ヶ月半。課題を修正する作業が続く
photo by Kenji Demura