夏合宿中の練習試合については、まだまだ試合数の多いチームが散見されます。疲労した体でなおかつレベルの違う相手では、弱い者に大きなダメージがくるのは常識です。強い相手にどれだけ現在のチーム力が通じるのか試したい気持ちは十分理解できますが、ダメージを受けるのは体力的に弱いプレーヤーです。

夏合宿中の練習試合は1日1試合ということが守られ始めてきたようです。引き続き今年も練習内容を工夫されて1人のプレーヤーが出場する試合は1日に1試合以内を守るよう注意しましょう。

《熱中症の原因》

暑い環境のもとで激しい運動により、からだが生み出す熱に対して、周囲は高温多湿のため熱の放散が妨げられ、体温が上昇することにより起きる。重要な臓器(特に脳)が障害を受けることもあり、死亡することがある。

《熱中症の症状》

頭痛、吐き気、めまい、脱力感、けいれん、意識障害、高体温等などが認められ、意識障害がある場合は重症である。

 《処置》

<意識がはっきりしている場合>

  • ●涼しいところへ運び、衣服をゆるめ、寝かせる。
  • ●吐き気やけいれんがなければ、水分補給。水分摂取ができない場合は救急車を要請する。
  • ●体温が高ければ、水を全身にかけて風を送る、または氷で首の横、脇の下、足のつけね前面を冷やす。
  • ●様子がおかしければ直ちに救急車を要請する。

<意識がないあるいは意識がぼんやりしている場合>

  • ●応答が鈍い、言動がおかしい、あるいは意識がない場合は、迷わず救急車を要請する。
  • ●涼しいところへ運び、衣服をゆるめ寝かせる。
  • ●体温が高ければ、水を全身にかけて風を送る、または氷で首の横、脇の下、足のつけね前面を冷やす。経過を注意深く見守ること。

《熱中症要因》

<外的要因>

  • ●周辺温度 直射日光 湿度 風
  • ●衣類(黒い衣類、ヘッドギア、ショルダーパッド)
  • ●薬物 風邪薬、カフェイン

<内的要因>

  • ●熱中症の既往のある選手
  • ●体格(肥満)、有酸素性体力、気候順応
  • ●水分補給状態
  • ●病気(かぜ、下痢、など)

《予防》

  • ●暑熱環境の把握
  • ●暑熱馴化
  • ●水分補給(体重減少2%以内、喉の渇きにもとづく自由飲水、1~0.2%の食塩水)
  • ●吸湿性・通気性の良い衣服
  • ●直射日光の下では帽子やタオル

《熱中症対策:熱ストレス減少のための戦略》

<ワールドラグビーガイドライン>

  • ●教育
  • ●トレーニングとプレーにおける適切なスケジューリング
  • ●暑熱馴化
  • ●コンディションの評価
  • ●現場での対策
  • ●危機管理

 <選手への教育>

  • ●過去の熱中症の既往の有無を報告する
  • ●発熱を伴う感染症の罹患の有無を報告する
  • ●薬物 風邪薬、カフェインを使用した場合は申告する
  • ●水分補給の重要性を理解(練習および試合前、中、後)
  • ●熱ストレスの徴候の早期報告
  • ●痙攣、頭痛、嘔気、嘔吐
  • ●通気性の良い、軽い、締め付けの少ないウェアを着る

 <現場指導者の注意点>

  • ●暑熱環境の把握(WBGT "Wet Bulb Globe Temperature=湿球黒球温度" が望ましい:文末参照)
  • ●選手の熱ストレス徴候を早期発見
  • ●発熱を伴う感染症にかかっているかどうかを報告させるよう指導
  • ●水分補給を意識した練習計画(自由飲水の可能な練習環境)
  • ●運動前後の体重測定(体重減少2%以内となるように水分補給)
  • ●熱射病の危険性の理解
  • ●暑熱馴化には7〜10日かかる
  • ●選手の特性(熱中症のなりやすさ)の確認(経験年数が少ない、過去に熱中症の経験あり、肥満気味、体力が低い)

参考:

環境省熱中症予防情報サイトで、日本全国840地点の暑さ指数(WBGT)の3日後までの予測値が公開されています。