新しい指揮官、新しいプレーヤー、新しいラグビースタイル
2020年への第1歩をドバイで踏み出す男子セブンズ日本代表

12月2、3日、HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ(WRSS)2016−2017第1戦のドバイ大会が行われる。

11月10日に就任が発表されたダミアン・カラウナヘッドコーチ(HC)が率いるチームとしては初の国際大会。

8月のリオデジャネイロオリンピックで4位となったチームからは選手、スタッフに加えて、ラグビースタイルも一新されて臨むドバイセブンズで、新生・男子セブンズ日本代表はどんな戦いを見せてくれるのか。

4年後の東京オリンピックでのメダル獲得へ向けた第1歩となる。

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カラウナHC体制となって初の大会となるドバイセブンズ。パスを多用する新しいスタイルにチャレンジする
photo by Kenji Demura

「自分たちのプレースタイル、すなわち選手たちがプレーしたいスタイルを確認すること。そして、世界の強豪に対して、できうる限りハードにトライしていく。それが、選手たちに求めていること」

カラウナHC男子セブンズ日本代表を率いて初の大会となるドバイセブンズで目指していることに関して、そう語る。

リオデジャネイロオリンピックに出場した選手は0。

現役トップリーグプレーヤーは2人のみの一方で大学生が6人という若手中心のチームで、再びコアチームの一角として世界最高峰の舞台にチャレンジする。

 

日本がプール戦で戦うのは豪州、ケニア、フランス(対戦順)。

カラウナHCはそれぞれの対戦相手をどのように分析して、どう戦おうとしているのか。

「豪州は新しい選手が多い。それでも、大事なポジションにはキープレーヤーたちが残っている(長年、豪州のキャプテンを務めてきたエド・ジェンキンスなど)。なので、継続性もあるし、その一方でエキサイティングな若い選手もいるようだ。

まず、ラック周辺でフィジカルに対抗していかないといけない。キックもうまく使って相手を下げていくことも重要になる」

「ケニアは自由奔放なランニングゲームを好む。我々としてはDFポリシーがキープされているかを確認しながら試合を進めることが重要になる。

豪州に対してと同じように、キックをうまく使っていくことも重要。速い試合になるはずだ」

「フランスは予想しにくい。昨シーズンまでと同じ選手たちが残っている。チームとして完成度が高いはず。五輪経験もある。

大きいFWがいて、ハーフ団はとてもダイナミックな動きをする」

そんなふうに、プール戦での対戦相手の印象を語るカラウナHCだが、チームとしてスタートしたばかりで、実際1度も試合をしていない状況でもあるため、相手どうのこうのよりも「まずは自分たちに集中したい。1試合ずつ、自分たちのラグビーができたかレビューして、次の試合ではさらにいいプレーができるように修正していくことが大切だ」というのが基本方針でもある。

もちろん、大前提として「3試合とも勝ちたいし、それは可能だと信じている」と、あくまでも勝利を目指す姿勢も忘れてはいない。

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2人のトップリーガー、鶴ヶ﨑 主将(右)と小澤には経験を生かしてチームをリードする役割も期待される
photo by Kenji Demura

「パスの回数を多くして、コンタクトをなるべくしないでトライまで持っていく」(鶴ヶ﨑主将)

前述のとおり、ドバイセブンズと時を同じくして約1ヶ月に渡った休止期間が終わり、第9節が再開となるトップリーグ参加チームの選手で今回、男子セブンズ日本代表としてプレーするのは2人のみ。

鶴ヶ﨑好昭(パナソニック)、小澤大(トヨタ自動車)。

2人とも、オリンピック最終選考からは漏れたものの、リオ行きメンバーが決まる直前まで、代表合宿に参加。

もちろん、WRSSへの参加経験もあり、現在の世界のセブンズのスタンダードを体感している、日本においては数少ないと言っていいプレーヤーだ。

キャプテンを務める鶴ヶ﨑は、カラウナHCの下で「いままでにないセブンズができているのかなというのは感じる」と、手応えを語る。

「(カラウナHCの出身地である)ニュージーランドスタイル。オフロードだったり、パスの回数多くして、理想はそれでトライをとる。コンタクトをなるべくせずに、きれいな形でトライまで持っていく」

一方、「チームとしてもまとまりが出てきた。若い選手も多いが、どんなふうにできるのか、楽しみ」と語る小澤も「以前よりオフロード多めに使う。サポートが大事なのは変わらないが、オフロードをつなぐのがポイントになるので、早くリロードする必要があったり、また違うセブンズ」と、いままでとは違うスタイルであることに同意する。

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大学生6人もメンバー入り。若手の成長にも期待がかかる(ボールを持つのは中野)
photo by Kenji Demura

そんな2人のトップリーガー以外は、大学生とトップリーグ以外の日本のチームでプレーする海外出身の選手からなる男子セブンズ日本代表。

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ワールドシリーズの経験も十分なヘンリーは持ち前の突破力でチャンスメーカーになれるか
photo by Kenji Demura

鶴ヶ﨑主将、小澤以上にWRSSでの経験が豊富なジェイミー・ヘンリーを除けば、海外出身組も新顔ばかり。

「リオオリンピックに出た選手は誰もいない。とても大きなチャレンジだし、エキサイティング。若い選手が大きく成長する可能性がある。

セブンズは、どんなチームに対しても勝てるチャンスがある。我々がこのステージで勝つためにはボールを動かすことは絶対。たくさんのフレアー(ひらめきあるプレー)が出せるようにトレーニングを積んできた」(カラウナHC)

例年に比べると過ごしやすいドバイだが、それでも日中は30度超え。当然、先週、雪が降った場所から駆け付けた選手たちにとっては、コンディション調整も至難の業。

多くの選手にとっては、何から何まで別世界と言っていいドバイセブンズで、新生・男子セブンズ日本代表としての第1歩を記すことになる。

尚、今シーズンからHSBCワールドラグビーセブンズシリーズの大会フォーマットが変更になる。

4チームずつの4組のプール戦の後、各プールの1、2位がカップトーナメントに進出。一方、同3、4位のチームはチャレンジトロフィートーナメントへ。

カップ戦は準々決勝、準決勝、決勝と続き、1位に金メダル、2位に銀メダル、さらに準決勝で敗れた同士によって行われる3位決定戦勝者にも銅メダルが授与される、オリンピックスタイルでの表彰となる。

また、同準々決勝で敗れた4チームは5位決定トーナメントを戦う。

 

一方、チャレンジトロフィー戦も準々決勝、準決勝、決勝と勝ち上がったチームがチャレンジトロフィーを獲得する他、準々決勝で敗れた4チームによる勝ち抜き戦(13〜16位順位決定戦)も行われる。

 

各大会の順位によってその大会ごとの勝ち点が与えられ、その合計によって年間王者が決まるのは従前通り。

text by Kenji Demura