24-31と7点のビハインドで後半40分を迎えていた慶應義塾大学は、HO中本慶太郎が左中間にトライして2点差へ。11月23日の早慶戦(関東大学対抗戦)では入れば逆転というPGを外したSO古田京が、このゴールキックを確実に決め、同点引き分けとなった所でノーサイド。
相手の流通経済大学とトライ数、ゴール数とも同じになったため、試合後行われた抽選の結果、慶應義塾大学が準々決勝へと進む権利を手にした。

慶應義塾大学は前後半ともに立ち上りに鮮やかなアタックからそれぞれ2トライを先制し、思い通りに試合を進めた。
キックオフの際には、流通経済大学FWが(慶應義塾大学から見て)左サイドに並ぶ傾向があるという事前の分析から、直前にFWを左から移動させて右へ蹴る戦術を用いるなど、「流経さんを気持ちよくプレーさせないよう心がけた」と慶應義塾大学の金沢篤監督は試合後説明した。また、「展開すると、流経さんはあまり順目に回って来ない」(同監督)と踏んで、展開した後にできたポイントでは、振り戻さずに敢えてショートサイドを突くアタックなどが功を奏していた。
しかしその後は、相手の外国人BKに手を焼き、前後半とも相手に追い付かれてしまうという展開。中本や、WTB小原錫満、CTB今成哲、FL廣川翔也らの好タックルで粘りつつ、古田のキックやFB丹治辰碩のランでチャンスを作っていたが、後半は同点に追い付かれた後、逆に相手に1トライ1ゴールを先行されて残り10分というピンチを迎えていた。

準々決勝への道が絶たれてしまった流通経済大学は、CTBシオネ・テアウパやWTBムゼケニエジ・タナカ・ブランドンらが相手のタックルを外して再三ゴール前に迫り、トライを生み出した一方で、ノックオンやペナルティを犯しては相手に蹴り戻される展開。最後もう1トライを奪う事ができず、悔しい引き分けに終わった。(米田太郎)


■流通経済大学

○内山達二監督

「今日の試合は大学選手権にふさわしい激しいゲームでした。大学のトップに挑戦を行えるチーム同士が、それぞれ、いいところを出したゲームでした。今日は多くの方々に応援に来ていただきました。流通経済大ではスポーツクラブ『ドラゴンズ』の大勢のキッズの応援もいただきました。応援の皆様に感謝いたします。皆様の声援に応えられず、次の試合に進めない結果となり残念です。」

──試合は引き分けとなりましたが、好ゲームでした。残念ながら準々決勝へ進出できない結果となりましたが、試合後、監督から選手達にどのような声を掛けましたか。
「選手達には『負けてはいないので、胸を張れ。』と声を掛けました。正直、選手たちは、少し、放心状態でした。 ベストのプレーをしてくれましたが、同点で終るのでなく、勝敗を決めるゲームをしなければいけないなと、言いました。」

──ここ2年、大学選手権では慶應大、明治大に敗戦(2014年度 慶應大に27-24、2015年度 明治大に52-14で敗戦)の結果となっており、対抗戦グループ上位校をなかなか超えられません。今シーズンはリーグ戦で東海大に勝利したのに大学選手権では結果が出ませんでした。
「特に意識していたとは思いません。自分たちの力を出し切れば勝てる相手だと思います。今日の試合では序盤でとられるなど時間帯によってチグハグなところが出たのが残念です。次は必ず勝ちます。」

○廣瀬直幸キャプテン

「今日の試合では敵陣に入り、トライを取れるチャンスは何度もありましたが、慶應大のディフェンスに、チャンスを生かせませんでした。同点引分けとなりましたが、準々決勝へ進出できない結果となり、残念です。」

──後半、流経大がリードして進めてきましたが、最後、慶応大に追いつかれました。残り時間に考えていたことはなんですか。
「チームでやってきたことを出すだけだと考えていました。ペナルティをせず、ブレイクダウンをこらえて、ボールキープを続けていきましたが、最後、うまく行きませんでした。最後、ゴール前に攻められましたが、『攻め続けよう』と声を掛けていました。」

──前後半とも『入り』の時間帯で慶應大に点を取られたのが、最終的なスコアに影響しましたが、『入り』の時間帯で得点されてしまった原因はなんですか。
「そうですね。『入り』に集中してやっていたので、得点をとられることは予期していませんでした。しかし、この得点が後々響いてしまいました。」

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■慶応義塾大学

○金沢篤監督

「今日は、引き分け抽選の結果、準々決勝への進出権を得ることができましたが、内容は反省したい点が多くありました。タックルは低く行くことができたと思います。選手は100%出し切ってくれました。」

──最後、同点に追いついたところと、引き分けの結果、抽選の結果待ちになった時間はどのような思いでしたか。
「今日の試合では最後に同点に追いつきましたが、今までの試合では逆のシーンが多かった多かったと思います。今日は慶應大が追いかける立場でしたが、試合の流れは慶應大にあったと思います。最後、中本のトライの後、古田にゴールキックを託した時も落ち着いて見ていられました。引分けの結果での抽選では、鈴木主将にプレッシャーがかかることになりましたが、落ち着いて結果を受け入れられる気持ちでいられました。」

──今日の試合では特に最初のキックオフでは工夫していたようですが、対流通経済大で工夫したところはありますか。
「キックオフの時に流経大は相手チームから見て左側にFW選手が並ぶので、流経大に『気持ち良くプレーをさせない』、また、『勢いをつけさせない』ことを考え、キックオフ直前にFWを左からシフトさせ、キックオフを右に蹴ることを試みました。」

──次の準々決勝は天理大との対戦になりますが、天理大戦に向けての意気込みは。
「天理大の試合はあまり見ていませんが、今年の天理大はFWに力強さがあるチームだと思います。また、FBジョシュア・ケレビ選手はランのいい選手です。天理大戦では慶應大のディフェンスの精度を高めて、低いタックルを続けることが重要だと思います。アタックは自分たちのスタイルやり抜きたいと思います。」

○鈴木達哉キャプテン

「今日は低いタックルを続けることを意識して試合に臨みました。流経大のダイナミックなアタックに後手を踏むところもありましたが、最後は同点に追いつき、引き分け抽選で準々決勝に進出できることになり、嬉しく思います。」

──最後、同点に追いついたところと、引き分けの結果、抽選の結果待ちになった時間はどのような思いでしたか。
「終盤で7点差あったので、逆転は難しいと考えて、1トライとることに集中していました。チームとして冷静に試合を運べたと思います。トライを取れた後は、ゴールキックを蹴るSO古田に任せました。抽選を引くのは僕の仕事なので、仕事を全うしようと臨みました。抽選では『自分から決断して行こう、自信を持っていこう』と臨み、予備抽選でも本抽選でも右にあるクジを自分から取りにいきました。今日の抽選後に聞いたら、以前、日本一を取った時(昭和61年1月 大学選手権決勝同点で日本選手権出場権獲得)の抽選でも、右のクジを取って、出場権を獲得したと聞きました。今日の後半の時間帯では、取られたときも落ち込まないように、FLの廣川が『全員が前を向こう』と声を出してくれました。流経大に2本トライを続けて取られ、リードされましたが、全員が落ち込まずに前を向くことができました。」

──次の準々決勝は天理大との対戦になりますが、天理大戦に向けての意気込みは。
「慶應の強みであるディフェンスを続けられるかが勝負のカギだと思います。今日の流経大のダイナミックラグビーと戦った経験を活かして、課題はしっかり修正して、天理大戦では慶應の力を見せつけたいと思います。」

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