「覚悟を決めて」臨んで前回ベスト4を追い詰める

最後に相手FWの圧力に屈するも世界で戦える実感

 

アイルランドのダブリンで開催中の女子ラグビーワールドカップ(WRWC)2017。

15年ぶりに本大会出場を果たしている女子日本代表は現地時間の13日(日本時間14日)、プール戦2試合目となる対アイルランド代表戦を戦った。

前半27分のスクラムでのペナルティトライ、同38分のFB清水麻有のトライなどで前半14—0で折り返し、前回ベスト4の開催国を追い詰めたものの、後半メンバーを替えてFW周辺にこだわってきたアイルランドのプレッシャーに力尽きるかたちで3トライを奪われるなど24失点。

14—24で悔しすぎる敗戦を喫した。

前半38分のFB清水のトライ(ゴール)で14ー0で前半を折り返すなどアイルランドを追い詰めたが一歩及ばす

 

今回のWRWCはプール戦が終わった時点で一度暫定1〜12位の順位を決め、1〜4位、5〜8位、9〜12位が、それぞれ順位決定トーナメントに臨むことになる。

プール戦第2節が終わって、各組の3〜4位勢では日本と同じC組の豪州が勝ち点1を挙げているだけで他のチームは勝ち点0。

17日(日本時間18日未明)に予定されている豪州戦次第でサクラフィフティーンにも8強入りの可能性が十分に残されている。

 

「覚悟を決めることを求めた。80分間、ギリギリのところに向き合う覚悟を」

 「覚悟を決めて」、DFで前に出続けたことでチームが「ワンステージ上がった」ことを実感

 

初めて経験するワールドカップの舞台という緊張感もあり自滅したフランス戦から中3日で迎えたアイルランド戦。

 

有水剛志ヘッドコーチからのゲキも受けてUCDボールのピッチに飛び出して行ったサクラフィフティーンは、4日前とは同じチームとは思えないような立ち上がりの集中力を見せて、前回4位で今年の6カ国対抗ではフランスを破っているアイルランドを圧倒した。

 

「アイルランドのFWのシェイプに対してのひとり目、ふたり目、3人目の上がり。フェイズDFになった時、セットの上がりを早くする。敵陣に入った時のフェイズアタックを我慢して継続できるか」(同HC)

 

フランス戦で出た課題を完璧なかたちで修正。特にFWの前に出る圧力で百戦錬磨の6カ国対抗の雄を圧倒した。

 

「フランス戦でボココボコにやられて、絶対やり返してやると思っていた」(PR南早紀)というスクラムも最初から優勢。

前述とおりに相手ゴール前のPGチャンスにスクラを選択して一気に押し込み、ペナルティトライを取りきってみせた。

「(フランス戦では)相手に合わせて高くなっていたのを修正。細かいコミュニケーションも取れていた」(南)と、こだわってきた“シンク”を8人で全うできたからこそのスクラムトライとなった。

 スクラムでペナルティトライを奪い、喜ぶサクラフィフティーン。前半はFW戦でも圧倒

 

そんなふうに力強さを見せつけたFW陣に関して、SH津久井萌は「(FW陣は)全部が良かった、トライも取ってくれたし、いいブレイクダウンをしてくれたので、自分もいいテンポで捌けた」と絶賛。

 

一方、BK陣も落ち着いたプレーぶりでエリアを取るところはしっかり取り、フェイズアタックを重ねるところは我慢強く攻めて、何度もアイルランドゴールを脅かした。

「FWの前で止める勢いがよかったので、BKもうまくつなげた」というのはトライゲッターとなったFB清水。

しっかり自分たちのリズムで攻めていたものの「(アイルランドDFが)自分のところまで詰めてきて、なかなか勝負できないし、外に回せなかった」状況を打破して、リードを14点に広げてハーフタイムとなった。

 

 

「今日でワンステージ上がった。オーストラリア戦でもうワンステージ上げる」(有水HC)

ベスト8進出に向けて、もう一度「覚悟を決めて」豪州戦に臨む

 

もう一度、後半の入りをしっかりすることを確認しての残り40分だったが、メンバーを替え、徹底的にFW周辺にこだわってきたアイルランドにピック&ゴーを続けられ(6分)、モールを押し切られ(24分)、さらに「ペナルティで崩れ出した」(HO齊藤聖奈キャプテン)という規律面でも我慢ができなくなり、33分に決勝PGを許して14—17。

 

最後もボールキープしながら徹底的にFWで攻めてきたアイルランドの圧力に屈するかたちでトライラインを超えられて善戦むなしく14—24で敗れた。

 

「全体的には前に出てDFできた。相手は重かったし、ゴール前になると徹底してピックで攻めてきた、ダメージがなかったとは言えない」(FL鈴木彩夏)

 

「取りきるところで取りきれなかった。最後はみんな出しきった。それが実力」(HO齊藤キャプテン)

 

確かに、前回4強の強豪を追い詰めたが、最後勝ちきるだけの余力がサクラフィフティーンに残っていなかったのは、残念ながら揺るがない事実ではあった。

 

それでも、フランス戦で出た課題を完全に克服して、自分たちのスタイルを貫けての善戦だけに、チーム全体が「今日でワンステージ上がった」(有水HC)ことを実感しているのも確か。

 

「最後をしのぎ切る。攻め切る。オーストラリア戦で、もうワンステージ上げる」(同HC)覚悟を高めて、プール最終戦の豪州戦でベスト8進出にチャレンジする。

 

photo and text by Kenji Demura