8強入りから目標と気持ちを切り替え9位狙いへ
世界で戦える集団へ進化していることを証明する
女子ラグビーワールドカップ(WRWC)2017はプール戦が行われたアイルランドのダブリンから、戦いの場を北アイルランドのベルファストに移し、順位決定トーナメント戦に突入。
9〜12位決定トーナメントに出場する女子日本代表は22日にイタリア代表と対戦する。
残り2試合、全てを出し切り9位を目指す。 まずは3たび6カ国組の一角イタリアと対戦
フランス、アイルランド、オーストラリア。
大会開始前の世界ランキングで言うなら4、5、6位の強豪国ばかりとの対戦となったプール戦。
アイルランドに対して前半14点リードして折り返し、逆に前半3トライを許し大きくリードされたオーストラリア戦では後半18分の時点で4点差に追い上げるなど、随所に世界で戦える手応えを感じさせながらも、結果的には3戦3敗。
「予選の目標としていた 8 位以内に入ることができなかったのは私の責任。ブレイクスルーさせることができなかった」
プール戦終了後、有水剛志ヘッドコーチはそんなふうに自らを責めたが、元々サクラフィフティーン自体15年ぶりのWRWC本大会出場を果たした世界ランキング14位のチーム。
ベスト8入りという当初の目標達成と同じくらい、残り2試合でどんなパフォーマンスと結果を出していくかが大切であることは言うまでもない。
「いつも香港とばかりで、あとは(WRWC予選で対戦した)フィジーとちょっとだけ」(CTB/WTB黒木理帆)
この5、6月に行われたアイルランド・ウェールズ遠征を除けば、そんな国際試合経験しか持たなかったサクラフィフティーンの面々にとって、世界の列強と対峙し続けながら、結果を残していく以上に、将来につながる経験など考えられないのだから。
前述のように強豪国ばかりとの対戦だったプール戦でも、サクラフィフティーンの成長ぶりは明らかだった。
まずは低いタックルを決め続けて組織ディフェンスを崩さないこと が勝利への絶対条件となる
大会初日に戦ったフランスに対しては、過度の緊張のあまり立ち上がりは自分たちのプレーができないパニック状態となったが、続くアイルランド戦では地元ファンに囲まれる完全アウェー状態にもかかわらず、前に出るディフェンスと安定したセットプレーで前半は完全に試合を支配した。
豪州戦でも立ち上がりから自分たちのプレーしている印象は変わらず、ブレイクダウンでの精度も間違いなく上がり、相手ボールに対するターンオーバーも増えた。
スクラムも最初から組み勝ち、「相手が揺さぶってきても、細かいコミュニケーションを取りながら修正できた」(PR南早紀)と、フランス、アイルランドの大型FWと対峙しながら進化をし続けてきたことを改めて証明した。
前述のとおり前半38分の時点で0—19と大きくリードされたものの、試合終了15分前までは1トライで逆転できる状況の接戦に持ち込めたのも成長の証しだろう。
「自分たちのアタックやディフェンスを80分間
どうやって出すかにフォーカスする」(有水HC)
もちろん、まだまだ世界で戦っていく上での課題が多いのも事実。
アイルランド、オーストラリアとも、日本に対してはFW周辺のダイレクトプレー、パワープレーを繰り返すシンプルなアタックを仕掛けてきたが、フェイズを重ねられる中で、タックルミスや約束事を守れなくなるケースがあり、そんな守りでのミスが失点に直結。
一方、アタックではボールキャリーとサポートの精度が低く、攻めながらペナルティを取られるケースが相次ぎ、フェイズアタックで我慢できずにトライを取り急ぐ判断ミスもあった。
当然ながら、イタリア戦では、そうしたプール戦で出た課題を修正できるかがポイントになる。
最年少ながら抜群の判断力とボールさばきでキープレーヤーとなる SH津久井
「接点のところでブレイクされてゲインされたので、もう一度タックルラインの攻防を見直し、1 対 1 のタックルを一人ひとりが責任を持ってできるように修正したい」(HO齊藤聖奈 キャプテン)
「ショートに行った時にノット・リリース・ザ・ボールを取られた。改善しないといけない」(FB清水麻有)
その一方で、一人ひとりがもう一度WRWCでプレーしている意味をもう一度考え、その幸せを噛み締めつつ、サクラフィフティーンとして最高のチームパフォーマンスを見せること。
本当の意味で、9〜12位決定トーナメントへ向けて切り替えができるかどうかが最も重要かもしれない。
「自分たちのアタックやディフェンスを80分間どうやって出すかにフォーカスする」(有水HC)
アイルランド戦でスクラムでのペナルティトライを奪い喜ぶ日本。 こんなシーンの再現なるか
泣いても笑っても残り2試合。
2015年8月以前は男子日本代表がWRCで唯一白星を挙げた場所だった、ジャパンにとってゲンのいいベルファストで、全てを出し切る。
Text by Kenji Demura, Photo by Kenji Demura, Michael Lee