熱心なラグビーファンにはその大学名は知られるようになってきたが、これまで大学選手権に5回連続で出場してきたにもかかわらず、関東・関西の強豪校からはまだ金星を上げていない朝日大学。6年連続出場となった今回こそ、地方大学の力を見せつけたいとの気持ちで3回戦に駒を進めてきた。一方、流通経済大学は今年こそは優勝と思って臨んだ関東大学リーグ戦で3位と不本意な成績に終わり、大学選手権でのリベンジを狙う。
朝日大学にとっては、今秋、トンガ代表にも選ばれて11月の対日本代表戦にも出場した攻守の中心、4年生No.8シオネ・ヴァイラヌがどれだけボールを生かせるかが勝利へのカギになるだろう。

試合開始後2分、中盤での朝日大ボールのラインアウトでボールをキャッチした朝日大フォワードに流経大FL粥塚諒とPR津嘉山廉人がからみ、ボールをもぎ取るとSH横瀬慎太郎がそのままインゴールに走り込みトライ(7-0)。このままのペースで流経大が試合を進めるかと思われたが、朝日大はいいファイトを続けた。7分、SO上里貴一がPGを決め7-3とすると、11分には、ペナルティキックを得たクイックスタートからNo.8ヴァイラヌがゴール前でラックを形成、FL藤田真弥がゴールポスト下に飛び込み朝日大が逆転した(7-10)。しかし、流経大も17分にバックスがピッチを左右に大きく使いボールをよくキープしてフェイズを重ねると、最後はSO山上大治-No.8大西樹からボールをもらったWTB伊藤啓希が右コーナーにトライ(14-10)。さらに、20分にもCTBムゼケニエジ・タナカ・ブランドンからの少し乱れたパスを生かしたFB桑江淳太郎が左隅にトライを加えた(21‐10)。流経大は苦戦する中でもWTB上假屋優輝が難しいゴールキックを良く決めて、チームを楽にしてくれていた。

しかし、流経大は「朝日大の気合の入ったプレーのせいか、この日はかみ合っていない」(内山達二監督談)プレーが続いた。反則数も前半で6、前後半合計で11と多く、苦戦の原因となっていた。前半23分、朝日大WTB木下雄斗がトライを取りにコーナーに飛び込んだ際も、流経大LOタウムア・ナエアタがハイタックルでシンビンとなり、朝日大にはペナルティトライが与えられ、朝日大が21-17と追い上げる。さらに、朝日大が相手シンビンで数的アドバンテージがある33分、スクラムからのアタックで、CTB金村拓郎からボールをもらったWTB永野拓也がタッチライン際を好走、コーナーフラッグ際にボールをおき、SO上里がゴールも決め、21-24と朝日大がまたもひっくり返した。

前半38分に流経大がFL粥塚のトライで28-24と三たびリードしてハーフタイムとしたが、後半に入ってもしばらくは流経大は朝日大を突き離せない。後半9分、流経大CTBブランドンがトライを取りリードを広げると(35‐24)、15分には朝日大がFB吉村友佑のカウンターアタックでゴール前に迫り、WTB永野が取り返す(35-29 )。22分には流経大CTBブランドンがトライを取って突き放したかと思うと(42‐29) 、またも朝日大FB吉村がタッチライン際の好走で敵陣に入る。ラインアウトからNo.8ヴァイラヌが突進、最後は再びFB吉村にボールが回りトライと(42-34) 、朝日大は何度も取られても取り返して流経大に食い下がった。この善戦には岐阜から駆け付けた約700人の朝日大サポーターも大いに盛り上がった。この日、朝日大はキックを多用しなかったのに対して、流経大はキックにより相手のカウンターアタックを招いてしまうことが多かった。流経大のSH横瀬・SO山上のハーフ陣はチャンスにはよくからんでいたものの、ゲームメイクという面ではこの日の苦戦の一因になっていたかもしれない。しかし、流経大としても絶対に負けられないこの試合、後半20分ごろから積極的にリザーブ選手を入替えで投入、日本代表キャップも持つ中嶋大希が横瀬に代わりピッチに入ると、流経大バックスの動きが良くなってきたようだ。最後の10分間、流経大が35分にFB桑江(49‐34)、39分にCTBブランドンのこの試合3本目のトライでようやく朝日大を突き放し、54-34で準々決勝への進出を決めることができた。

80分間フィフティーンが低いタックルを続け、アタックでは外国人選手の突破に頼ることはやむを得ないとしても、キックをほとんど使わず正攻法でチャレンジし続けた朝日大の好ファイトが印象に残った試合となった。

一方、朝日大のファイトに対して「受け」に回ってしまった流経大は、23日の準々決勝は帝京大への挑戦となる。今日の試合の反省点をしっかり修正してチームの気持ちを一つにまとめ、帝京大へのチャレンジが好試合になることを期待する。(正野雄一郎)


■朝日大学

○吉川充監督

「流通経済大学に勝つために小薗恭平キャプテンを中心に準備を進めましたが、今日の試合は惜しいと言いますか、非常に悔しいゲームでした。本当に、勝負の綾を確実に理解していれば何とか勝利をたぐりよせることができたのかなと思えば思うほど、基本的なことの精度を下げないこと、普段何気なくやっていることをこのような環境の中でやり続けるのは本当に難しいことなどをしみじみと感じたゲームでした。小薗キャプテンを中心に良くまとまって、ひとつのものごとを大切にしながら作り上げてきたチームですので、何とか勝たせてあげたかったというのが本音です」

―前回の試合から2週間あったが、その間の対策や練習はどのようなものであったか

「我々よりも力のあるチームとの対戦であるため、点差を抑えて勝つこと、ディフェンスからボールを取り返すことをやってきましたが、自分たちからミスをしてボールを渡してしまうことが多かったので非常に残念でした。逆に、前半はボールを持ってスコアするケースが多く、後半も左サイドを上がることができましたので手応えがありましたが、失点が得点よりも多く、練習では想定していなかったところでした。これほど得点されるとは思っていませんでした」

―勝てる流れもあったが上手くいかなかった理由は

「相手のディフェンスを集めてくれたトンガ代表のシオネ・ヴァイラヌ選手を起点としてトライを取れたことは収穫でした。しかし、ボールを持ち込んだ選手とサポート選手との関係性が少し悪く、すぐに倒れてボールを取られてしまうことやラインアウトでのミスなどの状況から失点が多かったと思います。あのように簡単に取られてしまうと難しくなってしまいますし、そういう状況では許してもらえないと思います。このような三回戦の相手と戦うためには当たり前のことを当たり前にやり続けなければならず、それには起点となる選手の表裏のところできちんとしたプレーを続けることが、次のステージではもっともっと必要になってくると思います」

―試合開始60分まではよく戦っていた印象ですが

「普段のリーグ戦でこのような会場を使っているチームに対して、地方の大学でありながら6年連続大学選手権に出場しているという我々のプライドもありましたし、今日は岐阜から来ていただいた約700人のたくさんの応援団の中で戦うことができて大いに力づけられました」

―ここ数年、関東・関西の主要リーグのレベルに近づいているように見えるが、感じている差は

「ラグビーというのは工夫次第でいくらでもやれると思います。大きく、強く、速い選手が中央に揃っているのに対し、我々がやれることはしつこく、くらいついていくことだと思います。地方の大学でも全国大会に出ることができ、中央の大きな選手に戦えるところを証明したかったのですが、今日の結果は残念です」

―負けたら終わりという現在のトーナメント方式については

「怪我等で試合に出られない選手たちを成長させていくためには、1度負けてもさらに試合ができるリーグ戦方式はありがたいです。でも、一発勝負のトーナメント方式はその都度しっかり準備できた方が強いわけで、更に上のレベルにあがるためにはトーナメント方式のほうが我々にとってメリットがあると思います」

―シオネ選手への評価は

「100点満点でした。途中で粗い所もありましたが、本当に良くやってくれました。朝日大学にいた時間の中で、我々とともに成長した選手です。彼は日本から離れていきますが、次のステージで活躍してくれると思いますし、彼が抜けた穴を埋めてくれる選手が下から出てきて欲しいと願っています。当初は外国人選手頼りだと言われましたが、日本人選手たちがしっかり成長してくれたと思います」

○小薗恭平キャプテン

「流通経済大学と試合をするにあたって、低く鋭いタックルを80分間続けようと話をして試合に臨みました。しかし、ひとつのタックルミスやコミュニケーションミスでパスされてしまいトライにつながるというシーンが多かったので、日頃の練習から秩父宮でラグビーをするというイメージを持ちながらやり続けることが重要であると思いました。FWのセットプレーでのミスが後半多かったのですが、コンタクトエリアでは我々の低く早いタックルによって相手もミスをしていたので、その点は今後の朝日大学ラグビー部にとって収穫になったのではないかと思います」

―前の試合から2週間あったが、その間の対策や練習はどのようなものだったか

「コンタクトに強い流通経済大学対策として激しいコンタクトの中で戦えるよう2週間ハードに練習してきましたが、今日の試合では、前半できていたことが後半にはできない時間帯が増えた点が課題です」

―大学選手権に向けて、チームとしてこの1年間意識してきたことは

「今日のゲームでもそうですが、80分間を通して自分たちのプレーをやり続けることを朝日大学のスローガンとして掲げ、選手として一人ひとりがワンプレー・ワンプレーの責任を持つことを1年間通して続けてきました」

■流通経済大学

○内山達二監督

「すべてがかみ合っていませんでした。朝日大学のこの試合に賭ける気合・意気込みによって前後半ともうちが受け身に回ってしまいました。反則やミスが多く、流通経済大学としては非常に課題の残るゲームでした。ただ、勝ってしっかり反省し次戦に臨むことができますし、朝日大学の分も頑張らないといけないと思って、次の帝京大学戦に向けて準備していきます」

―シオネ選手対策は

「フォーカスしたのは、シオネ選手とイオスア・ソウソウ選手の二人です。シオネ選手については、80分間を通しては止めることができたシーンが多かったものの、ラインブレークされてゲインされた場面もあり十分ではありませんでした。ただ、サイズのある選手に対して以前よりはしっかりとタックルし、コミットできるようになったと感じました」

―最初に言われた「かみ合わなかった」と感じた理由は

「前半早々からペナルティをし、またレフリーともかみ合っていませんでした。自分たちのテンポでゲームを動かせず、どんどん崩れていく中でさらにミスをして、自分たちのやりたいことができないまま相手の思うようにやられてしまいました。十分立て直すことができたにもかかわらず、いつもならできたところが今日はできていませんでした。自分たちの問題もありますが、朝日大学の強いプレッシャーによるものもあったと思います。まだまだ力不足を感じています。私たち首脳陣から見直しをして1週間しかない次戦に向けてしっかり準備したい」

―現在の試合形式については

「試合形式については意識していない。以前の3試合行う方式でも緊張感はありましたが消化試合になるようなこともありました。現行のトーナメント方式では、一発勝負で一戦一戦に賭けていくので常に緊張感があり大学生のゲームとしては良いのかなと思います」

○大西樹キャプテン

「今日の試合では、やろうとしたことが全くできず、勢いのある朝日大学のアタックに後手、後手に回り、自分たちのやりたいラグビーができませんでした。課題がたくさん出ましたので帝京大戦に向けてしっかり準備していきたい」