第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 

12月26日(日) 準々決勝(熊谷ラグビー場)


第1試合 11時30分キックオフ 日本大学26 - 27京都産業大学


9大会連続35回目の出場となる京都産業大学。関西大学ラグビーAリーグでは昨年の覇者である天理大学を破り全勝優勝を果たし、関西王者として選手権に臨んだ。対する日本大学は3大会連続20回目の出場で、関東大学ラグビーリーグ戦1部では東海大学と引き分けたが、残念ながら2位。総得失点差によって惜しくも1位の座を東海大学に譲り36年ぶりの優勝を逃したものの、その実力は折り紙付きである。晴天に恵まれたものの、強い寒風が吹き荒れる中で日大のキックオフで試合が開始された。

京産大は、前半9分に日大陣内22mラインと10mラインの中間左サイド5mライン付近のラックから大きく右にバックスが展開し、タッチライン際を走り抜けWTB⑭船曳涼太が右隅に先制トライ。FB⑮竹下拓己のコンバージョンキックは失敗。日大0—5京産大。

続いて19分に日大陣内22mラインの中央付近のラックから出たボールをSH⑨廣田瞬がディフェンスをすり抜けて中央にトライ。コンバージョンキックも成功。日大0—12京産大。

12点ビハインドの日大は攻めあぐむ中、28分に京産大陣内左タッチライン、22mライン付近でのラインアウトからモールで前進し、ラックから出たボールをSH⑨前川李蘭がブラインドサイドの左タッチライン際を走り抜けてトライ。自らコンバージョンキックも決める。日大7—12京産大。

互いにチャンスを得点に結びつけられない展開の中、日大は前半終了間際に自陣でオーバーザトップのペナルティを犯す。39分に京産大はペナルティゴールを選択し、FB⑮竹下拓己が長い距離を成功させる。日大7—15京産大。

後半開始直後、日大は自陣で連続してペナルティを犯す。京産大は4分、6分とFB⑮竹下拓己がペナルティゴールを確実に成功させて日大を引き離す。日大7—21京産大。

日大は、京産大陣5mライン上、右タッチラインのラインアウトからモールで押し込み10分にFL⑥井上風雅がトライ。SH⑨前川李蘭がコンバージョンキックを成功させる。日大14—21京産大。

日大は、京産大ゴールラインから6mの左タッチラインのラインアウトからモールを組み、ボールを持ち出したFL⑥井上風雅が16分に連続トライ。コンバージョンキックは失敗したが猛追が始まった。日大19—京産大21。

さらに日大は、京産大陣10mラインと22mラインの中間右タッチラインのラインアウトから出たボールをバックスが左に展開し、19分にWTB⑪水間夢翔が左中間に逆転トライ。SH⑨前川李蘭のコンバージョンキックも成功。日大26—京産大21。

 

日大陣22mライン中央でのスクラムで日大がペナルティを犯す。京産大はキャプテンPR③平野叶翔が迷わずペナルティゴールを選択し、24分にFB⑮竹下拓己が成功させる。日大26—24京産大。

その後、両チームとも詰めで反則を犯して得点が取れない緊張した場面が続く中、日大が自陣10mラインと22mラインの中間のスクラムでペナルティを犯す。京産大は、ここでも迷わずにペナルティゴールを選択し、FB⑮竹下拓己の右足に勝敗を託した。強風の中でもボールは見事にゴールポストを越えて36分逆転ゴールに成功。日大26—27京産大。

残り少なくなった試合時間内も一進一退の攻防が続き、1点差を守り抜いた京産大が勝利。白熱する攻防に観客も大興奮する好ゲームであった。試合終了後、死闘を繰り広げた両チームに観客からは惜しみない拍手が贈られた。第43回大会以来、15年ぶりのベスト4となった京産大は1月2日、4大会ぶりの優勝を狙う帝京大(関東対抗戦1位)と国立競技場で激突する。(山野英彦)



■試合後の記者会見

〇日本大学 中野 克己 監督

本日はありがとうございました。結果としましては、この風の中のマネジメントの差が少し出たのではないかという所と、風下の後半に思い切って攻めようということで、ハーフタイムに送り出して、ひっくり返したまでは、上手く出来たのですが、最後の最後に締めが足りなかったというところで、小さなミスが出てしまったのがちょっと残念でしたが、80分間を通して飯田キャプテンを中心に最後までファイトしてくれたことに関しては、選手を誇りに思っております。本日はありがとうございました。

 

〇日本大学 飯田 光紀 キャプテン

本日はありがとうございました。今日の試合、最初は京都産業大学さんに波に乗られてしまって、トライをゆるしてしまった。後半勝ち越すこともありましたが、ペナルティーの多さとか、そこでやっぱりペナルティーゴールを狙われて一点差と言う結果になってしまったのだと思います。

 

〇日本大学 井上 風雅 選手

自分がトライゾーンでミスしたせいで、一点差というかたちになってしまった。この悔しさを糧に来年絶対に優勝を狙って、チーム一丸となって頑張りたいと思います。今日はありがとうございました。

 

〇京都産業大学 廣瀬 佳司 監督

日本大学は、フィジカルが強いチームなので今日は、厳しい試合になるということは覚悟して試合に臨みました。その通り、非常に厳しいタフな試合になりましたけれども、京都産業大学の学生が必死に体を張って、勝利をもぎ取ってくれたということで、非常に満足してます。15年ぶり6度目の国立競技場に立てるということで、沢山の方達に喜んでもらうことができ、満足しております。今日はどうもありがとうございました。

 

〇京都産業大学 平野 叶翔キャプテン

今日は試合前からタフな試合になることはわかっていて、僕らもしっかりフィジカルで勝負してくる日本大学に対して、しっかりフィジカルで勝負しようという話をして試合に臨みました。前半良い試合が出来たのですが、後半外に振って来る日本大学に対して、僕らがしっかりディフェンス出来てなかったので、もう一回やり直すという話をゲームの中でしました。試合では、誰一人諦める選手は居なくて、ひたむきに京都産業大学らしく戦えたことが、一番の勝因だったのだと思います。


〇船曳 涼太 選手

今日の試合は、まず勝てて良かったというところと自分自身のプレー面では、最初にトライすることが出来て、その流れでディフェンスでも何本か良いタックルでターンオーバーをすることが出来たので自分的にもチーム的にもとても満足のいく試合だったと思います。

 

 

〇竹下 拓己 選手

今日は絶対に勝って国立に行くという気持ちを持っていて、そこで接戦になることはわかっていたので、どれだけ僕がゴールを決められるかというところにかかっているのもわかっていたので、とことん練習して試合に臨みました。試合に勝てて本当に嬉しいです。



ラグビー大学選手権 準々決勝(12/26 熊谷)

 

第2試合 14時00分キックオフ  東海大学 27- 12慶應義塾大学

 

2005年より17大会連続19回目の出場となり、今大会で初優勝を狙うリーグ戦の雄、東海大学。

リーグ戦では6勝1分の1位で全国大学ラグビー選手権を迎える。

選手権では過去3度決勝進出を果たすも、三度帝京大学の厚い壁に阻まれた。

今大会ではジョーンズ リチャード剛キャプテンの下、ディフェンス力を向上させて、まずは2年ぶりのベスト4進出を目指す。

一方、対抗戦を3勝4敗の4位につけ、2年連続38回目の大学選手権出場を果たした慶應義塾大学。

初戦となる4回戦で関西大学リーグ2位の近畿大学に競り勝ち準々決勝に駒を進めた。

過去3度の選手権優勝の実績を引っさげ、今大会では1999年度以来の優勝を目指す。

お互いのプライドをかけた準々決勝は、快晴ながら強風の熊谷ラグビー場でのキックオフとなった。

 

試合が動いたのは前半4分。

前半、風上に立った東海大は18度のフェイズを重ね、最後は慶應大陣ゴール前中央寄りのラックからSH⑨柴田がWTB⑪林への飛ばしパスで、相手ディフェンスのギャップをつき先制トライ。SO⑩武藤のコンバージョンキックは外れ、東海大5-0慶應大。

 

慶應大は前半8分、東海大陣内25Mの中央寄りラックから出たボールをSO⑩中楠がドロップゴールを狙ったが成功とはならず。

 

そして前半13分、東海大学は慶應陣22M中央のラックよりSH⑨柴田がサイドを突き前進し、PR①木村に繋ぎ中央ゴール前まで前進し、ラックからSH⑨柴田⇒SO⑩武藤⇒CTB⑬谷口が縦に走り込み、左中間へのトライを決めた。SO⑩武藤のコンバージョンも決まり、東海大12-0慶應大

 

これ以上点差を広げたくない慶應大は前半16分、東海大陣右20M地点での慶應大のラインアウトから、列の後方にいたLO④アイザイア・マプスアが内側に走り込み、サポートについていたHO②原田へパス。原田はハンドオフで相手ディフェンスをかわして右隅へトライ。

SO⑩中楠のゴールも決まり、東海大12-7慶應大。

 

その後、両チームのしぶといディフェンスにより試合は均衡状態となったが、前半27分に試合が動く。

センターライン中央付近でのスクラムで、東海大FWが圧力を掛け慶應大の反則を誘う。

東海大はタッチキックで前進し、慶應大陣22Mのラインアウトから、FW一体となったモールで慶應大ゴールを割り、最後はHO②本橋がトライを奪う。

SO⑩武藤のコンバージョンも決まり19-7と引き離す。

 

前半35分、両チームのキック応酬の中で、慶應は東海大のノックオンを誘い、東海大陣内に攻め込み、慶應大SO⑩中楠が、左ゴール際に絶妙なハイパントを上げ、それをFB⑮山田が東海大WTB⑭酒井とのボール争奪に競り勝ち、そのままグランディングして左隅にトライを奪う。

慶應大SO⑩中楠によるコンバージョンは失敗し、東海大19-12慶應大となる。

 

ここから慶應大は勢いに乗りたいところだったが、東海大キックオフのボールを、そのまま東海大が奪い、

慶應大陣右中間30M付近より、東海大SH⑨柴田がブラインドサイドに居たSO⑩武藤に繋ぎ、武藤は慶應大ディフェンス2名を引きつけてからWTB⑭酒井にパス。酒井はタッチライン沿いを走り抜け、右隅にトライを奪う。SO⑩武藤のコンバージョンキックは決まらず、東海大24-12慶應大となる。

慶應大が得点をとった直後にノーホイッスルトライを奪われてしまった事が、この後の試合運びに影響を与えることになる。

 

前半を12点差で終えて迎えた後半、今度は慶應大が風上という優位な立場に立つ。

しかし後半開始早々の4分、慶應大陣22M付近でのスクラムで慶應大が反則を取られ、東海大⑩武藤がPGを決め、東海大27-12慶應大。

2T2Gでは追いつかないスコアになったが、ここから慶應大は果敢に攻撃を仕掛け、東海大エリアでの攻防が続くことになる。

慶應大は積極的に攻め続けるが、肝心な場面での反則が何度か見られ、東海大ゴールを割ることが出来ないまま時間が経過していく。

東海大ディフェンスは慶應大の攻撃に対して、ゴール前でのピンチの場面でも、しつこくボールに絡んで、慶應大の反則を誘う場面が何度か見られた。

東海大は強風下の風下という悪条件の中、際だったディフェンス力でピンチを何度も凌いだ。

 

慶應大は後半23分にSO⑩中楠が東海大陣中央付近35M付近よりドロップゴールを狙うが、東海大ディフェンスのチャージもあり失敗となる。

慶應大は、その後も激しく東海大ゴールを割ろうとするが、東海大のディフェンスの前に、どうしてもゴールを割ることが出来ず、後半はノースコアとなった。

 

後半はロースコアの展開となったが、慶應大のサイズ負けしない当たりと、積極的な仕掛けは見事だった。

併せて東海大は、組織ディフェンス力が、これまでの試合よりも相当レベルアップし、安定した試合運びだったと思う。

両チームの戦いは、目を見張るほど素晴らしい内容だった。

 

(埼玉県協会 広報 辛島勝広)



■試合後の記者会見

〇慶應義塾大学 栗原 徹 監督

本日も、この様な試合の開催にあたりまして、ご尽力いただきました関係者の皆様に、この場をお借りしまして感謝申し上げたいと思います。まだまだコロナ禍で制約が多い中この様な有観客で、最後素晴らしい環境で試合が出来たことに感謝しております。試合の方は、夏に東海大学と練習試合をさせて頂きまして大差で敗れている相手でしたが、なんとか一矢報いる試合を準備してまいりましたけど、東海大学のプレッシャーを前に叶えることが出来ませんでした。ただ、最後まで諦めない姿勢と夏より全然内容の良い試合が出来ましたので、本当にチームがひとつになって最後戦えたこと、このチームがこの試合で終わってしまうことは寂しい思いであります。この思いを3年生以下の後輩たちが引き継いで来年につなげてくれたらと思っています。最後まで勇敢に戦ってくれた4年生たちを凄く誇りに思っています。本日はありがとうございました。

 

〇慶應義塾大学 原田 衛 キャプテン

監督も仰っていましたが、夏に完敗して、そこから差を縮められた点では、僕たちが夏からやって来た練習が間違っていなかったと僕は感じているので、後輩たちには1年を通してこの練習を続けて行って欲しいなと思います。本日はありがとうございました。

 

〇慶應義塾大学 田中 慶伸 選手

僕達は夏に完敗して今回の準々決勝というのをターゲットにして、また東海大学とあたるということで結構準備をして来ました。ただ準備してきたところで良い部分も出たのですが、やはりあと一歩及ばずというところで凄く今は悔しい気持ちで一杯です。僕達4年生はシーズンがこれで終わってしまいますが、来年からもしっかりと後輩達には頑張って欲しいです。

 

 

〇東海大学 木村 季由 監督

今日はありがとうございました。大学選手権、我々にとっては初戦ということで、リーグ戦の終了から一か月間ちょっと期間が空いたので、コンディション的にはしっかり準備をしながら臨むことが出来ました。ただ実戦のゲーム感がひとつポイントになるかなというところがあったのですが、それは練習の中で想定出来ている話なので、そこはしっかりやって来ました。慶應義塾大学のアグレッシブなプレー、タックルであったり、一人一人前にでる意識だったりということは我々も事前に出来ていましたので、それに対して決して受けることなく自分たちのスタイルを貫いて行こうということでゲームを戦ってきました。ちょっと風が強いということを意識してその辺をつかんでいましたので、風対策も含めて今日のゲームをどうやって主導権を握って行くかというところは前半特に大事だったかと思います。継続しながら前半攻められたこと、それから後半はしっかり自陣に張り付きながらも守り続けられたことは、次に向けて課題もありますが一つレベルアップして行きたいと思っています。

 

〇ジョーンズ リチャード剛 キャプテン

この試合に向けて自分達も良い準備を進めてきたので、試合に向けて良い緊張感の中試合に臨めたのかと思っています。試合中の課題とか修正点だけではなくて、上手く行った部分や通用した部分などもこの試合を通してわかったので、次の試合につなげていきたいと思います。

 

〇武藤 ゆらぎ 選手

今まで練習してきたことを自分達にフォーカスを向けて挑んだ結果勝てたのですが、その中でも課題が多く残った。個人としてもエリアマネジメントの部分で課題があり、チームとしてのペナルティーとか、トライを簡単に取られてしまった部分もあった。勝って次に活かせることが出来ると思うので勝った部分ではよかったと思います。

 


埼玉県ラグビーフットボール協会 広報委員 大熊 孝博