2023年7月8日 秩父宮ラグビー場
リポビタンDチャレンジカップ2023
JAPAN XV 6-38 All Blacks XV
相手のヘッドコーチも「印象に残った日本人選手」として名前を挙げた福井翔大
ラグビーワールドカップ2023フランス大会に向けての重要な試金石となる『リポビタンDチャレンジカップ2023』の5連戦がついにスタートを切った。その初戦の相手、All Blacks XVにJAPAN XVが6対38で完敗。ノートライ、さらに後半戦は無得点。ニュージーランド代表予備軍に叩きのめされた。
チャンスをスコアに結びつけられない、もどかしいゲーム展開。試合後、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは「一貫性のなかった部分、自分たちのラグビーができなかった部分が浮かび上がった」と戦いを振り返った。
しかし、そうした苦闘の中で輝いた、一筋の光明。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチがその活躍を称え、相手チームのレオン・マクドナルド ヘッドコーチも「印象に残った日本人選手」として名前を挙げた男がいる。日本代表としての試合出場経験がまだない23歳のフランカー、福井翔大だ。
鋭く絡みつくタックル、さらにはジャッカルでターンオーバーに成功。鋭い本気の刃は観る者に強いインパクトを与え、チーム内MVP(ソード賞)も獲得。その存在を存分にアピールしてみせた。
「めちゃめちゃ緊張していたんですが、やるしかなかったです。自分の目の前にボールが来たら取るだけですし、自分の前に相手が出てきたらタックルするし。別に何をしようと考えたわけではないです。目の前の黒いジャージーを着た人に負けたくない、それだけでした」(福井)
名門・東福岡高校卒業後は大学に進学せず、現在の埼玉パナソニックワイルドナイツに入団。2021年には「ナショナル・ディベロップメント・スコッド」として日本代表合宿に参加するも、試合出場には至らず。福井にとって、今回の試合は「背水の陣」だったという。
「自分の道が間違ってないということを、自分で証明していきたいです」(福井)
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは「今回の試合では若い選手たち、新しい選手たちを試すことができた」と語る。負けてもいい試合など一つもない。しかし、敗北の中でこそ見える勝利への道筋というものもある。
あらためて問う、2万2,283人超満員札止めの観衆が詰めかけた秩父宮ラグビー場のグラウンドに描かれたのは、本当に「失望」だったのか。それとも、新たな明日につながる「希望」だったのか。その答えは、そう遠くない未来に示される。
(藤本かずまさ)