一番のちょうど1か月前の6月5日、日本代表を率いるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、青空と緑の木々に囲まれる中で遠くを指差して言った。
要約すると、「あの一番高い山の頂上が目標とする場所なら、いま、自分たちがいるのは麓」との内容。その日は、数日後に発表される日本代表の選手層を厚くするための、15人制男子トレーニングスコッド菅平合宿が始まった日だった。

来日したNZU(ニュージーランド学生代表)やホンコン・チャイナ代表と戦ったU20日本代表やJAPAN XVは5月から活動していたが、NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25のファイナルがおこなわれた6月1日以降、いよいよ日本代表のシーズンが幕を開ける。 7月にはウェールズ代表を迎え、同5日に北九州、同12日に神戸でリポビタンDチャレンジカップ2025を戦う。

2025年に予定されているテストマッチは、前述のウェールズ代表との2テストマッチのほか、8月、9月にパシフィックネーションズカップを戦い(8月30日に仙台でカナダ代表とテストマッチを戦い、続く3戦はアメリカにて)、10月25日にはリポビタンDチャレンジカップ2025でオーストラリア代表と東京・国立競技場で激突する。
また、11月に入ればリポビタンDツアー2025としてヨーロッパへ向かい、アイルランド代表、ウェールズ代表、ジョージア代表と戦うことになっている。

冒頭のようにジョーンズHCが言ったのは、同指揮官体制になった昨年度は11試合を戦って4勝7敗の成績。現在のワールドランキングは13位だからだ。

『超速ラグビー』という、他に類を見ないスタイルで世界と伍していこうとする日本代表。
ジョーンズHCは冒頭のように「まだ山の一番下」と言った後、「大事なのはスタートの位置でなく、フィニッシュの位置」と続けた。
そして、「上がり始められれば一気に上がれると思っています」。そのためにも、今季は現状をブレイクスルーするための熱い試合を実現したいと考えている。 その最初のチャンスが、7月に控えているウェールズ代表戦となる。


2023大会ではプールステージ敗退となった日本代表は次回大会こそトップ8に入り、さらに先へ進むことを目標に定めている。
これまで20か国参加だった大会は、RWC2027から24か国となり、その顔ぶれは2025年の11月までに世界最終予選も実施されて確定する。


そして、RWC2027のプール組分け抽選会は2025年12月、全24の出場チームが出揃った上でおこなわれる。その際のシード順は11月のテストマッチシリーズ終了時のワールドランキングを利用することが予定される。


RWC2023の成績で日本はすでに出場権を手にしている。しかし重要なのは、高いランキングでプール組分けの日を迎えることだ。ランキングが高いほど有利なプールに入ることができる。
RWC2027から6プール×4チームでプールステージを戦う。各プールの4チームは、ランキング1位〜6位のバンド1、7位〜12位のバンド2、13位〜18位のバンド3、19位〜24位のバンド4と、各バンドからの1チームずつで構成される。

つまり13位以下となれば、同じプールに自分たちよりランキングが高いチームが2つ入る。日本代表が2025年の戦いを終えた時に現在の13位というランキングのままなら、大会での上位進出の道は、より険しくなる。


ジョーンズHCはその事実に、「テストマッチは常に結果を求める」と話し、山を登るスピードを高めるための準備を進める。


2年間かけて山を登り切るプランを立てながらも、2025年末までに頂点が視界に入る地点まで進んでおかないと、登山道が閉ざされるわけではないけれど、上へ向かう道は歩きにくい獣道となる。


まずは7月にウェールズ撃破を。
それをきっかけに、ジョーンズHCの言う通りに、「上がり始められれば一気に上がれる」足取りが実現することを祈ろう。 2027年の幸せは、今年の11月を気持ちよく終えられることも条件の一つとなる。


田村一博=文