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レポート:第1回ラグビー・エンパワメント・プロジェクト

2021年度からスタートした次世代リーダー育成事業「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト」(REP)の第1回研修会が、8月7日から3日間にわたって開催されました。
過去2回は女子高校生を対象としていましたが、3期目にあたる今回から高校生であれば誰でも応募できるように。5月に募集を開始、選考を経て最終的に男子6、女子14の計20人が今季の受講生となりました。初回は熊谷市内で3日の集合研修となり、オンライン参加2名を含む14名が参加。7月31 日には今季の参加者でオンラインによるオリエンテーションを行ったため、集合時もリラックスした様子が見られました。

幕開けは西機真・日本協会普及育成委員長のスピーチ。
「ラグビーが世界一身近にある国」「誰でもいつでどこでもラグビーを楽しめる国」という日本協会のミッションの説明からスタート。続いてラグビー競技の基礎に進みます。ラグビーの競技規則は「RULE」ではなく、なぜ「LAW」と呼ばれているのか、ワールドラグビーの掲げる5つのラグビー憲章などを学びました。その後は、日本協会についての講義。ワールドカップの再招致を目指し取り組んでいる普及育成活動など、実際に日本協会で働く先輩たちのキャリアを交えた話に耳を傾けました。

🔶参加者コメント
「分かりやすかった。五つのコアバリューから派生されるラグビーのことや、普段の生活。自分だけでは、思いつかなかった事がグループワークによって考えを深められた」

2日目は、場所を熊谷ラグビー場に移して学びを続けます。
午前中はインタビュー研修。講義を受けた後、まずは同じ机に座っている相手にインタビュー。続いて、日本協会普及育成部門の難波英樹さんに実際にインタビューを行いました。元日本代表CTBとして活躍した難波さんには、様々な質問が飛びました。

午後からは熊谷市について学ぶ時間。
最初に熊谷市スポーツタウン推進課・楠原啓太さんの講義を受けました。熊谷は埼玉パナソニックワイルドナイツ、女子ラグビーのアルカス熊谷の地元でもあり、2019年に日本開催されたワールドカップの試合会場にもなりました。自治体がどのようにしてラグビーで街づくりを進めていったのかを学んだ後は、埼玉県協会・新井均理事長兼事務局長の講義。同協会が目指すのは「ラグビーがいちばん身近にある県」。現在も熊谷ラグビー場でリーグワンの試合が行われていますが、BANDという県協会に登録している100人以上のボランティアが支えるなど、試合運営に関して興味深い話を聞くこともできました。

🔶参加者コメント
「する、みる、支えるの3つの観点で考えていることを知り、新しい知識になりました」

講義の後は、熊谷ラグビー場の見学。普段は見ることのできない様々な用途の部屋やロッカールーム、グラウンドにも実際に足を踏み入れることができ、参加者は束の間リラックスした時間を過ごしました。

3日目の最終日はオリンピアンであり、現在は日本協会教育部門部門員、女子7人制ユースアカデミーのヘッドコーチも務める兼松由香さんから、「ラグビー人として生きる」というテーマでキャリア講義を受けました。
現役時代、母親でありセブンズのオリンピック代表としても活躍、今はコーチの傍ら女子ラグビーの歴史研究にも打ち込む兼松さんのバイタリティーは、将来へのロールモデルとなりました。

最後の講義は、「デフラグビーから見た多様性」。講師は日本聴覚障がい者ラグビー連盟理事の大塚貴之さん。
大塚さんは先天性感音性難聴で、大分雄城台、帝京大とラグビー部に所属していました。講義は、大塚さんがキーボードに打ち込んだ文字がスクリーンに映される「筆談」からスタート。聴覚に障害のある人と健常者がコミュニケーションをとる手段として、手話や読唇術、筆談、文字起こしアプリなどの方法がありますが、音声に頼らない場合、どうやって意思を伝えるのか。大塚さんが参加者に出したテーマは「バナナを剥いて食べるチンパンジー」「みかんを投げるゴリラ」。2人1組となり、身振り手振りを駆使して懸命に取り組みました。
デフラグビーでは、どうやって試合中にコミュニケーションをとっているのか。人と違うことは、社会でどう受け止められているのか。自分たちはどう接したらいいのか。ラグビーに端を発した話は社会の多様性にまで広がり、参加者たちも話にひきこまれていきました。
大塚さんからは国際手話についても簡単な説明を受け、締めくくりは「アイラブユー」の手話のポーズで記念撮影。中身の詰まった3日間の講義を終えました。

🔶参加者コメント
「生きやすい社会、その社会を作ることについて考えることが出来ました。現在日本でも多く取り上げられる“多様性”について、デフラグビーを通してより深く理解しました」
「デフラグビーについては沢山テレビで見てきたのでよく知っているが、やはりデフラグビープレイヤーにしか分からない悩みがあるのだと知った。私はそれを探求していきたいと考えている」 

3日にわたる研修でしたが、講義を重ねるごとに、質問者の数が増えました。
「これまで私はラグビーとは単なるスポーツの一種であると考えていたが、このプログラムを通じて、ラグビーとは地域にも教育にもラグビーをきっかけに様々な可能性につながるんだとわかった」

参加者は、ラグビーについての考え方をより広げることができました。こんど参加者が顔を合わせるのは12月の最終研修。次回からはオンラインによる研修が始まります。

(森本優子)