12月14~15日、熊谷市で2024年度「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト(REP)」の第6回集合研修並びに修了式が行われました。
参加者たちは初日に宿舎に到着するとグループに別れ、軽くミーティング。参加者が直接顔を合わせるのは、8月の初回に続いて2回目。月1回のオンライン研修で顔なじみになっていることもあり、最初から打ち解けた雰囲気。
その後、徒歩で近くの熊谷ラグビー場へ向かいました。グラウンドでは関東大学対抗戦入替戦・日本体育大学対成蹊大学戦の真っ最中。まずはラグビー場内部を案内してもらい、その後はスタンドで熱戦の様子を見守りました。試合後は、残留を決めた直後の日体大の鈴木 一平主務にお話を聞くことができました。試合直後で仕事に追われる中、主務を引き受けたきっかけ、やりがいや難しさなど、参加者からの質問に丁寧に答えてくれました。
宿舎に戻った後は、再度グループに分かれて「ラグビーの魅力発信」をテーマにグループワーク。全体発表の前に、車いすラグビー元日本代表・三阪洋行さんから、「ラグビーの多様性や社会の多様性」について講義を受けました。
大阪出身の三阪さんは現在43歳。高校時代はラグビー部に所属していましたが、練習中に頸椎を損傷し、車いすが必要な生活になりました。10代半ばで突如、自由を奪われた日々に一時は命を絶つことも考えたという三阪さん。リハビリを担当してくれた作業療法士から車いすラグビーの存在を知り、夢中になっていく過程を、わかりやすく語ってくださいました。三阪さんは、パラリンピックに選手として3回出場しています。アテネ大会では史上最年少の22歳で参加、全敗に終わりました。北京大会では念願の1勝を挙げますが、順位は8チーム中7位。そしてラストと心に決めたロンドン大会は、12人のメンバーには入りましたが、ケガもあり、試合には出られず。「思い描いた時の結果が出ないときの受け止め方」に関しても、ご自身の経験を基に話してくださいました。
▲車いすラグビー元日本代表・三阪洋行さんの講義(写真左)
現役引退後の2015年にアシスタントコーチとしてのキャリアをスタート。そしてリオ五輪では3位入賞を果たしました。車いすラグビーは昨年のパリ五輪で金メダルを獲得しましたが、その礎を築いたのは三阪さんでした。
現在は日本パラリンピック委員会とアジアパラリンピック委員会のアスリート委員会委員長、日本ラグビー協会の安全対策委員などを引き受け、多忙な日々を送っています。「我ながら幸せな人生でした」と振り返る三阪さん。「挑戦するチャンスは誰にでもある」という一言は、参加者を勇気づけました。
講義の後は5グループがそれぞれラグビーの魅力発信をテーマに発表。それぞれのコンセプトはONE TEAM、知らない人に伝える、ラグビーの多様性、枠にとらわれないスポーツ、ラグビーを多角的に見てみよう、とバラエティ豊か。スタッフが見せ方、伝え方、チームワークなどの項目に分けて採点。翌朝に順位が発表されました。
15日はグループワークの結果発表のあと、カンタベリーのワークショップを体験しました。9月21日の第3回オンライン研修で講師を務めていただいた森岡早紀さんが再び登壇。「すべては気づきから始まる」 「好きの因数分解」など、印象的な言葉が出てきた前回は、とりわけ深い印象を与えましたが、今回、実際に顔を合わせて聞くお話にも参加者は聞き入っていました。
この日は、ラグビージャージーを生産時に余ってしまう端切れを利用して、サコッシュを作成するワークショップを開催。参加者たちは机に並べられたカラフルな端切れから好きな色を選んで組み合わせ、オリジナルのサコッシュを作成しました。ジャージーを縫製した後の端切れに新たな価値を見つけ、製品として生まれ変わらせるワークショップは、地域コミュニティや、ラグビーコミュニティ醸成にも貢献。よりよい社会の形成に、ラグビーの価値観が役に立つと話す森岡さん。参加者は実際のワークショップを体験し、改めてその意味を実感していました。
▲森岡早紀さんの講義
これで今年度の講義は全て終了。昼食をとった後は「未来を創る、未来のわたし」のテーマで、ひとり3分間のスピーチを行いました。1年生から順番に19名が次々とREPで学んだことと、未来の自分を語りました。将来の夢は体育の教員、JICA、ドクター、日本代表と様々でしたが、共通していたのは、これからもラグビーを身近な存在とし、ラグビーで周りを変えたいという熱意。それが参加者全員を結び付けています。
その後は修了証を受け取って、今年度のREPは幕を閉じました。最後にサプライズとして各賞が発表。ノート賞には、オンライン講義を通じて熱心にノートをとっていた2人が。6回の講義をすべて受講した3人には皆勤賞として、記念品が渡されました。
全国各地から「ラグビー」をキーワードに集った22人。学校も立場も様々ですが、この5か月で培ったREP第4期生の絆は、これからも変わることなく続きます。ラグビーに関わっていれば、いずれまた再会することもあるはず。その日まで、GOOD LUCK!
◎参加者の声
<第6回研修>
・熊谷ラグビー場&大学対抗戦観戦
「熊谷ラグビー場はラグビーだけでなく、囲碁などの大会でも使われているんだという驚きがありました。また、試合観戦をしたことによって、応援によって会場の空気が支配されるように感じました。改めて、ラグビーをすることは様々な支えがあると感じました」
・グループワーク&発表
「ラグビーの魅力発信をグループでして、メンバー同士で考えや思考は似ていても。それをスライドや言葉に表すことが難しいことに気付くことができました」
・三阪さん講義
「今まで持っていた価値観が大きく変わった! 初めから決めつけずに、多くの人と出会い、コミュニケーションをとることで、もっと知らない世界を知りたいと思った」
「人生の途中で車椅子になった三阪さんは、自由に動けた時を知っているからこそ絶望したのだと思う。そこから立ち上がったこと、学んだことのお話を聞いてすごく心に響いた。私も医師になって、誰かの将来に希望を与えられる人になりたいと思った」
・カンタベリーワークショップ
「森岡さんからお話を伺うのはオンラインも含めて2回目でしたが、前回よりカンタベリーというブランドについてのお話が伺えた印象でした。ブランドとして地球課題にも向き合っていらっしゃる姿勢がとても素敵だなと思いました。何か大きなことをしようとするのではなく、自分にできることから一つずつ行動を起こしていくことが大切なのだと感じました」
「起きることに全て意味があり、“今”につながっているとお話されて、私の人生に起きていることも今に繋がっているのだと感じました」
<終了時アンケート>
・REPで学んだこと(一部抜粋)
「ラグビーの文化や歴史、様々な職業との関わりを多く学ぶことができた。それだけでなく、知らない人と積極的に話し、行動を起こすという行動力も学べた」
「1番は英語の必要性を学ぶことができました。インドネシアの学生との交流や沢山の方からのお話を聞き、どの仕事にも大切なことなので、もっと頑張ろうと思えるきっかけになりました」
「積極性。多様な価値観を認め、何事も挑戦する事」
「自分の意見を相手に伝えることの大切さを学びました。自分の思いを伝えるのが苦手で、これまでは相手から話が振られるまで黙っていることが多かったですが、この活動を通して第6回には、グループワーク以外でも話を振る側になったことが増えた気がして、成長を感じました」
「4か月間の講義を終えて、話を聞きながら大事なところをメモするなどの話を聞くことに慣れました。また、短い時間で他の人と協力しながら魅力を発信するなどもできるようになりました」
(森本優子)