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【連載企画】Unsung Hero #4 〜Time Keeper(タイムキーパー)〜

「ショットクロック」
30秒前からのカウントダウンがキッカーの心理状態に与えている影響は少なくないだろう。
NTTラグビーリーグワン2024-2025シーズンでは、試験実施ルールとして、トライ後のコンバージョンキックにおいて、従来のトライが与えられた時点から90秒以内にキックを行うルールが60秒以内に短縮された。
これに伴い、今まではトライ後にチームメイトと共に喜んでいたキッカーは、時にトライした味方が喜びの余り放り投げたボールを急いで拾いに行く光景を目にすることもある。
今回はそんな試合時間を管理するマッチオフィシャルの一員であるTime Keeper(タイムキーパー、以下TK)のお仕事を担当する大村哲司さんにお話を伺った。
TKのお仕事について教えて下さい。
マッチオフィシャルが使用するインカムを付けて、レフリーの「タイムオフ」や「タイムオン」の声を聞ききながら、競技場の大型スクリーンに表示する機器を操作して試合時間の管理をしています。また、今シーズンからはトライ後のショットクロックが加わり、より時間管理がシビアになってきました。トライした瞬間に60秒にセットした手元のタイマーをスタートさせ、同室にいるビッグスクリーンの音響映像担当の方とカウントダウンの残り時間を確認しながら、30秒前からビッグスクリーンに表示しています。

(ショットクロック用のタイマーを音響映像担当者へパス!)

レフリーもされていたのですか?
所属していたクラブチームで帯同レフリーとしてC級を取得しました。その後、子どもが通い始めたラグビースクールで先輩コーチの勧めもありB級を取得し、高校生やジュニアのゲームなどを中心に活動してきました。

TKを始めたのはいつからですか?
2007年頃にトップリーグでTK制度が始まった時に行われた研修へ参加した事をきっかけに関わるようになりました。
これまでに40試合近くに関わる機会に恵まれました。

今までで一番記憶に残っている試合は?
2014年に神戸で行われたJAPAN XV vsマオリオールブラックスでTKを担当できたことは非常に名誉なことでした。レフリーは2019年のワールドカップでレフリーを務めたLuke Pearce氏で、英語でのコミュニケーションに緊張しましたが、レフリーの一言一句を聞き逃さないように集中していました。

TKの大変なところは?
レフリングと違ってグレーゾーンの無い白黒の世界、きちんとやって当たり前なのはプレッシャーを感じます。誤ってリセットボタンを押してしまったら…という緊張感も常にあります。

(大型スクリーンに表示する機器、左下がリセットボタン)

TKとしてのやりがいは?
何もなく無事に終わった時は本当に安心します。
無事に終わらせる為にもレフリーの声に耳を傾けながら、目でゲームをしっかりと観察するように心がけています。ピッチ上で何が起きているのか、負傷したプレーヤーはいないか、レフリーとしてどう対処しようとしているのかを、レフリー目線で予測しながらサポートするように心がけています。
自宅や会場でラグビー観戦する際は、ついつい「タイムオン」「タイムオフ」とエアーTKで自主トレーニングをしてしまうのはTKあるあるかもしれません(笑)
また、トップレフリーがゲーム中に何を話しているのか、生の声を聞けることは勉強になりますし、この活動を通して友達の輪や世界が広がるのは本当に嬉しい事です。

時にはハプニングもありますか?
以前、試合が終了した後の演出で花火を打ち上げる企画があったのですが、運営サイドの手違いで80分の試合終了時のホーンより前に花火が打ち上がり、ホーンの音が花火でかき消されたことがありました(笑)

 

 

一昔前は両腕に腕時計を付けてレフリー自身が行っていた時間管理も、TKの方々のサポートのおかげでゲームに集中できている。
レフリー主導での入念な打ち合わせと試合中の明確なシグナルやジェスチャーは、円滑な時間管理には欠かせない。

「ショットクロック」
マッチオフィシャルの一員であるTKという存在があって成り立っていることも併せて知っておいてもらえれば幸いである。

(TKとしての大村さん、三宮界隈では◯Jとして活動する横顔もお持ちだとか。)