みなさん、いつもマッチオフィシャルへの応援ありがとうございます。
日本ラグビーフットボール協会レフリーの手束伊吹です。
私は、2024年4月7日から12日にかけて南アフリカ・ステレンボッシュで開催された「World Rugby High Performance Match Official Academy(以下アカデミー)」に参加してきました。このアカデミーは、将来世界の舞台で活躍することを目指す各国のレフリーが集い、座学と実践を通じて学び合うプログラムです。今回はワールドラグビーより指導者が4名、レフリーが世界各国から10名参加しました(参加メンバーは次のとおりです)。
World Rubgy
Alain Rolland、Johnny Lacey、Amy Perrett、Phillip Davies
Match Officials
Gonzalo de Achaval(アルゼンチン)、Giana Viljoen(南アフリカ)、Luis Fernandez Diaz(スペイン)、
Robin Kaluzniak(カナダ)、David Vosalevu(フィジー)、Berenice Loubet ep. Bralley(フランス)、
Zaid Vaughn Lewis Isaacs(ナミビア)、Saba Makharadze(ジョージア)、Diogo Inacio(ポルトガル)、
Ibuki Tetsuka(日本)
【Day1:4月7日(月)】
前日の夕方に日本を出発し、昼前に宿泊先のアカデミーに到着しました。乗り継ぎ時間も合わせると23時間ほどの移動となりました。この日は公式なセッションはなく、夜に現地の大学の試合を到着していたレフリー達と観戦しました。各国のレフリーと初めて顔を合わせる機会となり、今後の数日間を共にする仲間たちとの交流が始まりました。
【Day2:4月8日(火)】
この日から本格的なセッションがスタートしました。この日は終日座学で、午前はレフリングにおけるキーワードの理解、午後はARの役割とチーム(キャプテン)とのコミュニケーションについての講義でした。内容理解に加え、グループディスカッションの時間も多く設けられ、自分の考えを共有したり各レフリーの意見を聞く場が多くありました。
【Day3:4月9日(水)】
午前はまずポジショニングの講義と実技でした。ポジショニングについてはこういった理由でここにポジションしたほうが良いというレクチャーであり、実際にグラウンドで動きも交えて行われたので非常にわかりやすく参考になるものでした。特にラインアウト時のポジションについて指導があり、ラインアウト時の確認事項は数多くあるので非常に参考になりました。そしてあくまで選択肢の一つであり、選手の動きや戦術に柔軟に対応していくことが大事であるという前提のもと指導していただきました。
その後ジムで1時間ほどトレーニングを行い、その後はスクラムに関する講義でした。クリップを活用しながら数人のレフリーとディスカッションし、全体で共有していくという進め方でした。午後はフリーとなり、全員でケープタウンに移動し、ビーチに行ったり、ディナーを食べたり良いリフレッシュの時間となりました。
【Day4:4月10日(木)】
午前はワールドラグビーのDirector of RugbyであるPhillip Davies氏からルール改正の背景や効果についての講義がありました。実際のデータを交えた説明であり非常にわかりやすいものでした。実際にゲームの中でレフリーをしていて変化を感じることは正直あまりないですが、データを目の当たりにすることでルール改正の意義を感じることができました。続いて、ブレイクダウンやファールプレー、ラインアウトモールについてのセッションを受け、午後にはグラウンドで試合があり、この日はARを担当しました。実戦の中で学びを試す貴重な機会となりました。
【Day5:4月11日(金)】
この日は午前中に前日の試合のレビューを行い、映像を見ながらコーチやレフリー達と意見を交わしました。各担当レフリーがGood、Work onをそれぞれ話した後、担当コーチから気になるクリップが共有される流れでした。午後はスペース、Deliberate knock on、アドバンテージについてのセッションでした。夕方からは再び試合を担当し、私は1試合の前半を担当しました。大学の試合でしたが、観客がタッチラインを超えてグラウンドに入ってくることがあり、日本ではあまり経験しない独特な雰囲気での試合でした。
【Day6:4月12日(土)】
最終日は前日と同様に試合のレビューが中心でした。午後はワールドラグビーのJohnny Lacey氏とAmy Perrett氏との1on1セッションが行われ、このアカデミーでの学びや自身の課題、今後の方向性について話をする貴重な時間となりました。
今回のアカデミーを通じて、ワールドラグビーが求めるレフリングの在り方や国際的な基準に触れることができ、大変有意義な経験となりました。世界各国のレフリーと生活を共にし、共通の目標に向かって切磋琢磨する中で、自分自身の強みと課題がより明確になり、これから何をすべきかを深く考えるきっかけにもなりました。今後は、今回得た知見を日々のレフリー活動にしっかりと活かし、常に能動的に学び続け、自分の意見を恐れず発信し、周囲に的確に説明できる力を磨いていきたいと思います。再び世界の舞台で仲間たちと会えるよう、引き続き一つ一つの機会を大切にしながら、成長を続けていきます。ありがとうございました。