日本ラグビーフットボール協会が高校生を対象に2021年度から実施する「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト(REP)」。その趣旨は「ラグビーの精神を活かし、ラグビーや社会の現場で活躍する人々からラグビーの価値を学び世界を広げることで、一人一人が自分の可能性を見つめ、キャリアや夢を探求することによって、より良い未来の実現に寄与する人材を育成する」こと。これまで、4期の修了生を送り出しましたが、その後はラグビー部のマネージャーやコーチ、将来のために専門学校で実技を学ぶなど、それぞれの夢に向かって活躍中です。
5期生の活動が8月6日、福岡市のJAPAN BASEでスタートしました。開講式では西機真・普及育成委員長が「このプロジェクトは、皆さんの力を引き出すのが目的。協会としてもサポートしていきます。コンフォート(居心地の良い)ゾーンから、外のストレッチ(緊張する)ゾーンに飛び出してチャレンジしてください」とエールを送りました。
初日は日本ラグビーフットボール協会と、REPを主催する普及育成部門の事業内容などについての講義。ワールドラグビー(WR)が提唱する5つのコアバリュー、来年11月30日に創立百年を迎える日本ラグビーフットボール協会の活動指針JAPAN RUGBY2050について知識を深めました。続いては、グループに分かれ、5期生独自の6つ目のコアバリューとルールの設定。4期生は「進化」でしたが、話し合いの結果、今期は「継続」に決定。ルールは「5期生らしく、ジャッカルする!!」。ラグビーらしいフレーズとなりました。
2日目は盛り沢山の1日。まずは福岡をベースに活動するお二人からキャリア講義。元セブンズ日本代表の築城昌拓さん、男女7人制ストラテジーアドバイザーで日本ラグビーフットボール協会普及育成委員会コーチング部門員の徳永剛さんです。築城さんはコカ・コーラレッドスパークス、徳永さんは福岡サニックスブルースと、現役時代から福岡をベースに、現在も忙しい日々を送っています。参加者は徳永さんの指導のもと、T1ラグビーを体験。T1ラグビーとはWRが推奨するコンタクトのないラグビー。タグラグビー同様タックルはありませんが、スクラムやラインアウトも組み込まれるなど、よりラグビーの要素が盛り込まれています。この日は雨天ということもあり、室内での実施となりました。続いては地域ごとにラグビーを普及させるための取り組みを普及育成部門RDO(リージョナル・デベロップメント・オフィサー:地域普及担当者)の田野純一さんから聞きました。第85回全国高校大会で伏見工業のメンバーとして優勝経験のある田野さんにとってラグビーは、「人生をどう歩くかを教えてくれた灯りのようなもの」。どのような経緯を経て今の立場に至ったのか、自身の体験談をもとに話をしてくださいました。
午後はインタビュー講義。今回の研修のメインは、男子セブンズSDSの選手とスタッフに直接インタビューすること。その前にインタビューとは何かを知り、そのための準備を学びました。まずは全員で西機委員長を囲んでの模擬インタビューを体験した後、夜の「本番」に備えます。REP修了生で今回もスタッフとして参加している先輩たちの体験談を聞いて夕食。夜はいよいよ男子SDSの選手たちの登場です。合宿の合間を縫って7人が出席してくださいました。各自、事前に調べた知識をもとに質問を作成し、選手にぶつけました。選手の皆さんも、丁寧に質問に答えてくれ、時間はあっという間に過ぎました。インタビュー後は選手に聞いたことを各自原稿にまとめて、2日目の講義は終了となりました。
最終日の3日目は天気も回復。最初にJAPAN BASEについて、JAPAN BASE事業推進室の星野幸喜さんから講義を受け、内部を見学。その後はグラウンドでT1ラグビーをプレーしました。前日、室内で基本を学びましたが、やはりグラウンドで実際にボールを回す感触は格別。実技が終わっても参加者はボールを地面に置いてプレースキックに挑戦するなど、天然芝のグラウンドを十分に堪能しました。室内に戻った後は、再びグループワークで「JAPAN BASEの活用方法」について話し合いました。グラウンドでのパブリックビューイングやこども食堂の実施、地元の高校生を招いてのウエイト指導など、様々なアイデアが出されました。
3日目の合宿の締めは、SDSスタッフへのインタビュー。S&Cコーチ、トレーナー、アナリスト、チームマネージャー等の各分野のプロフェッショナル6名が参加してくださいました。ラグビーに関連した職業を目指している参加者も多く、「どういう学部に進んだらいいですか」 「どんな資格が必要ですか」など、具体的な質問が矢継ぎ早に飛びます。スタッフの皆さんは真摯に、時にユーモアをまじえながら質問に回答。トップレベルで活躍するスタッフの体験談が、将来の進路を選択する参加者にとって、大きなアドバイスとなったことは間違いありません。
これで2泊3日の研修は無事終了、今後は12月まで月に1回、オンラインでの講義が続きます。
[参加者の声/第1回研修を終えて]
「将来の夢に向けて視野を広げておきたいと思っていたけれど、集合研修までは、自分が学生にうちにできることや、すべきことが分からなくて不安だった。この研修を通して自分に必要なことが分かった気がした」
「ラグビーに関して、色々な思いを持つ同年代の方々と沢山意見交換ができたから。自分とは全く違う視点から考えている人の意見や考え方を知ることができて、自分にとってすごく刺激であり、自分の視野を広げることに繋がった」
「三日間、常にラグビーに触れられる、貴重な体験でした。なかなかお話を伺えないような方々に直接お会いして、自分の疑問を聞けた。質問を考えることが苦手でしたが、“調査をして、好きになること”を実践することができました」
「ラグビーや社会貢献、自分の将来についてとても視野が広がった。自分自身についても深く考えることができ、とても大事な友達がたくさんできた」