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レポート:第4回ラグビー・エンパワメント・プロジェクト

8月に産声を上げた「2022年度ラグビー・エンパワメント・プロジェクト(REP)」の4回目の講義が10月15日、オンラインで開かれました。今回のテーマは「世界とつながる」。過去3回の講義で学んできたことを足場に、いよいよ外の世界へと足を踏み出します。

前半のテーマは、「国際協力について」。日本協会で海外でのラグビー普及を担当する向山昌利・国際協力部門長と乾あゆみ・国際協力部門員の二人が講義を行いました。

日本協会は、「アジアンスクラムプロジェクト」(2011~)、「Sport for Tomorrow」(2016~)と、これまで様々な形でアジアのラグビー普及に力を入れています。向山部門長がその中で力を入れているのは、ラグビーを通じたジェンダー平等の実現。アジアには現在も、女子が男子と同じようにスポーツをしたり高等教育を受けることが難しい国が存在します。そういった環境の中で、「ラグビーを通じて、自分自身の人生をコントロールすることを学んでほしい」と向山部門長。

よく耳にする「スポーツマンシップ」も、ジェンダー平等の観点からは「スポーツパーソンシップ」です。この言葉も参加者にとって新鮮な響きでした。「性の問題をラグビーの力で解決していくことを知り、スポーツの新たな力を発見できた」「ラグビーを通じて社会問題に貢献出来るとは思わなかったので、ラグビーの新たな一面を見られた気がした」と、社会的な観点からラグビーを見つめるきっかけになりました。

乾あゆみ部門員は、15人制と7人制のワールドカップ代表歴を持つ元選手。偶然ラグビーと出会い、その虜になるまでや、プレーするだけではないラグビーとの関わり方など、自身の体験や葛藤を交えた内容でした。ラグビーを通した将来を考えている参加者にとって、先輩の体験談は、「私たちと同じ目線で、ラグビーの発展に携わって経験したことをお話ししていただいたので、とても理解しやすかった」「乾あゆみさんの、やってみようという精神を見習いたいと思った」と、共感が集まりました。

タイやネパールなど、言語や文化の異なる国々での苦労も「笑顔があればなんとかなる」と乾さん。「自分は常に笑顔を絶やさずに生活してるつもりですが、もっと明るくなろうと思いました」「自分もこういうポジティブさが欲しいと思った」と、彼女の生きる姿勢にも励まされました。

第2部はいよいよ実践編。フィリピンの15~18歳の女子選手と、いくつかのグループに分かれ、オンラインで交流しました。最初に日本側からREPの目的や日本の女子ラグビーの現状などを説明。相手側からは、選手なのかファンなのか、ラグビーのどこに惹かれたのかなどの質問が出ました。グループによっては、ラグビー以外の話題も。「来年、ジブリパーク(愛知県)に行きたい」「それは私の住んでいるところの近くにあります」といった会話もありました。

交流会終了後、大半の参加者が口にしたのは、「緊張した。実際に思っていたより難しかった」という感想。普段、学校で聞きなれた英語との違いや、質問は理解できても、聞き取りに精いっぱいで答えを返すことに苦戦した様子。「全然英語を聞き取ることができなくて、自分の伝えたいことも上手く伝えられず、すごくもどかしかった」「質問だけ用意していれば大丈夫だろうと安直な考えで挑んでしまったが、実際は とても難しかった」「なんでもいいから積極的に話そうと思っていましたが、面と向かって話すと、やはり大きな壁がありました」。準備してきても、実際の会話になると戸惑った様子。

それでも「話せなくて話題を見つけることが難しかったので、落ち着いて一人一人の自己紹介から始めたらよかった」「英文が読めるだけでは会話はできないから、聞き取ったり、話したりすることに重点を置いて勉強していく必要があると感じた」と、今後への課題も見つかりました。

これまで講義を聞いてきた参加者にとって、初対面の相手に自分たちから発信していくのは今回が初めて。この日は、「経験」が一番の収穫。海外の人とコミュニケーションをとるための英語力の必要性を肌で感じました。

次回もワールドラグビーやアジアラグビーで働く人へのインタビューを通じて、その扉をより大きく開いていきます。

(森本 優子)