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レポート:第4回ラグビー・エンパワメント・プロジェクト

10月14日、「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト」(REP)の第4回となる研修が開催されました。
この日のテーマは「ラグビーと国際交流」。第1部は、リオ五輪、東京五輪に出場したサクラセブンズ代表の小出深冬さん(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA所属)が講師。現在27歳の小出さんは小学校2年生でタグラグビーを始め、中学2年で香港で開催された国際大会に参加、高校2年時にはクライストチャーチに留学と、ジュニア時代から国際経験を積んできました。

18歳で日本代表入りし、昨年は南アで開催されたワールドカップセブンズにも参加、選手として順調にキャリアを積み、現在はコーチングも勉強中。8月にフランスで開催されたラグビーの大会「ヘリテージカップ」にはコーチとして参加しました。日本は中学2、3年生の女子選手で構成された「ジャパンラグビーアカデミー」で参戦、世界5大陸19か国から男女合わせて39チームが参加した大会で、見事優勝を飾りました。

小出さんが最初に参加者に伝えたのは「これから私がお話することに対して、皆さんは必ずしも私と同じように感じる必要はありません」ということ。10代の頃から様々な国で経験を積み、多様性を実感してきた人の言葉でした。この日、小出さんが伝えたメッセージは、ラグビーの「コアバリュー」。ラグビーというスポーツは自然にコアバリューを体現できるスポーツなのだ、ということでした。小出さんが以前、海外の大会に参加したとき、日本はベルギーと対戦して勝利。その後、食事会場に向かうと手違いで日本の夕食は用意されておらず、それを知ったベルギーの選手は、自分たちの夕食を日本チームに分けてくれました。小出さんが、ラグビーのコアバリューを感じた瞬間でした。

コーチとして初参加したヘリテージカップでも小出さんが重要視したのは、コアバリューを大事にすること、そしてラグビーを楽しむこと。大会が開かれたのはフランスのポンルヴォワという小さな街。日本人にとってフランス語もなじみがありませんが、小出さん曰く「国際交流は、流暢な語学力が必須ではありません」。小出さんが高2で留学した際も、英語力は「日常生活が何とかなる程度。(英語を話すとき)日本語だったら、というもどかしさがあった」と言います。言葉ではなく、自分でコアバリューをどう表現するかが大事、というのも、小出さん自身の経験に基づくものでした。

日本チームも最初は挨拶をかわしたり、仲間を尊重することに慣れない状況でした。ですが、練習と生活を共にするうち、次第に成長し、最後はコアバリューを表現できるチームに。他の参加チームやボランティアたちとも交流が深まり、日本が出た決勝戦では「ジャポンコール」が起きました。小出さんは最後に「選手目線の話にはなじみがないかもしれませんが、将来スポーツに携わっていくのであれば、今日お話ししたことを大事にしてほしい」。様々な国で戦ってきた小出さんの体験談は、誰にとっても共感を呼ぶものでした。

[参加者コメント]
「ヘリテージカップで世界各国の選手たちと交流してた話を聞いて、とても感心した。こうやってどんどん違う文化で育った人たちと交流することによって、価値観や考えに幅を持たすことができるのではないかと思った」
「選手として、コーチとして活動していく中で、国際交流や言葉の壁は付き物ですが、交流に必要なのは流暢な語学力ではなく、何を伝えたいか意識が大切という話を聞いて、完璧を求めなくていいことを知ることができました。ラグビーに関わる中で大切なのはやはり、コアバリューを体現すること。これが自然に輪が繋がっていくことも知れました」

後半は、海外に住んでいる人とラグビーを通して交流を深めました。当初、二人予定されていた参加者は手違いで一人が参加できないアクシデント。2グループに分かれた参加者は、交代でフランス在住の女性、Citlali Cabreraさんと繋がりました。

Cabreraさんは2018年から2019年にかけて、旅行で日本を訪れ各地を回りました。現在はトゥールーズ近郊にお住まいで、ワールドカップも地元で行われた日本対サモア、ニュージーランド対ナミビアを観戦。大会開催期間中でもあり、タイムリーな話題となりました。

参加者はあらかじめ手分けをしてREPや、日本について説明しましたが、日本を訪れた経験のあるCabreraさんは、日本に関する知識も豊富。東京だけでなく京都や金沢、白川郷まで足をのばしており、日本通の彼女からの質問にたじたじとなる場面も。海外留学で外国人と会話することに慣れている参加者もいれば、緊張して上手く話せない仲間も。Cabreraさんは終始笑みを絶やさず、みんなの話に耳を傾けてくださいました。終了後、参加者からは「もっと英語を話せるようになりたい」「話す人と話さない人に分かれてしまった」などの意見が出ました。小出さんの経験談を聞いて、実際に海外の人と繋がった今回。この経験を基に、次回はいよいよラグビー関係者に直接インタビュー、実際に世界への扉を広げる番です。

[参加者コメント]
「英語で話されていることを聞き取るのに必死で、質問を考えることが出来ず時間が過ぎていってしまいました。ワールドカップ開催国のフランス出身の方で色々と話題はあったと思いますが、あまり質問が出来ませんでした。緊張してしまったのもあるかもしれませんが、英語が話せるようになって積極的に話したいと思いました」
「実際に、海外の方とお話をし、ラグビーに関してお話を共有できたことがすごく嬉しかったです。英語はしっかりした文法で伝えるというより、カタコトでもいいから伝えようとするということが大切だと改めて実感しました」

(森本優子)