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レポート:第1回ラグビー・エンパワメント・プロジェクト

 今年で4期目を迎えた「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト」の第1回研修が8月7~9日まで、福岡県のJAPAN BASEで開催されました。
今年の受講者は男性8名、女性14名の22名。事前にオンラインでのオリエンテーションを済ませ、今回は18名が参加しました。

 

[1日目]

 始まりは、サポートスタッフとして参加している1期生の塗師世菜さん、2期生の甲斐こころさんが参加者の緊張をほぐすアイスブレイクから。続いて、日本ラグビー協会(JRFU)の西機真・普及育成委員長から、ラグビーについてのイントロダクションを受講。ラグビー=ダイバーシティとインクルージョンを持つ多様性あるスポーツ、エンパワメント=個と組織の力。プロジェクト=体験から学ぶアクティブラーニングであると、本プロジェクトの概要を紹介。ラグビーが大切にする5つのコアバリュー(ラグビー憲章)についても説明を受けました。毎年、もうひとつオリジナルのコアバリューを加えるのがREPの特徴。果たして今年はどんなコアバリューになるでしょうか。

 続いてREP担当者である普及育成部門・鈴木江里菜さんから、JRFUについての講義。同協会のミッションは「ラグビーが世界一身近にある国へ」。研修場所となったJAPAN BASEもミッションを達成するために開業した施設で、今年から本格運用が始まりました。これまで男女の7人制代表をはじめとする様々なチームの合宿が行われましたが、今回はアメリカ代表戦を控えた女子15人制代表サクラフィフティーンも合宿中。2日目には選手やスタッフとの交流も予定されています。

 参加者は講義の後、4グループに分かれてグループワークで「6つ目のコアバリュー」を話し合い。発信、感謝、挑戦、進化の中から多数決で「進化」に決まりました。

 夕食の後は、翌日に挑戦するT1ラグビーについて普及育成部門・小川泰平さんが説明。T1ラグビーとはワールドラグビーが推し進めている新しい形のゲームです。スクラム、ラインアウト、ブレイクダウンとラグビー独自の要素を反映しつつ、タックルやコンタクトはなし。安全性を重視した年齢を超えて楽しめるゲームです。参加者は2チームに分かれ、まずは室内で練習。ラグビー経験者、未経験者も交じって、簡単なパス回しをして翌日の試合に備えました。

◎1日目 参加者の声(以下アンケートより)
・6つめのコアバリューについて「コアバリューは知っていたが、もう一つ考えるとなると5つのコアバリューは様々なことを網羅できていたため、難しかった。班のみんなで考えるうちに5つのコアバリューの深いところまで考えることができ、意見を出し合い、新たな一つを決めることができた」

 

[2日目]

 この日も真夏の日差しが降り注ぐ福岡JAPAN BASE。暑さがピークを迎える前に、グラウンドでT1ラグビーを実践。30分と短い時間でしたが、すぐにゲームにも慣れ、小川泰平レフリーの下、歓声があがりました。

 その後は、午後のサクラフィフティーンのインタビューに備えての研修。インタビューに参加してくださる選手、スタッフは前日に発表済み。話を聞く際に大事なことは何か、研修を受けて質問をさらに精査。午後からに備えます。

 次の講義のテーマは「スポーツと社会 地域×ラグビー、キャリアに触れる」。講師はサニックススポーツ文化事業部の渡邊敏行さん。高校でラグビーを始めた渡邊さんは、NZに留学後、2000年にサニックスに入社。国際スポーツ大会運営部署で働きながら現役を3年間続けた後、コーチングを学び、JRFUコーチングエデュケーターの資格を取得。現在はサニックスワールドラグビーユースをはじめ、同社が主催する様々なスポーツイベントに携わっています。スポーツを通して青少年の健全育成に寄与するというサニックスの理念、参加者による国際文化交流の意義などについて説明を受けました。

 午後はいよいよインタビュー本番です。今回、参加してくださったのは加藤幸子、左髙裕佳、櫻井綾乃、原田紗羽、山本実の5選手。スタッフはサイモン・ミドルトンハイパフォーマンスアドバイザー、谷口令子アシスタントS&Cコーチ、小藤大洋アナリスト。参加者から選手へは海外留学の理由や戦術に関する質問、壁にぶつかったときの対処法を。スタッフには、選手とのコミュニケーションで重視していることや、仕事でもっとも苦労することなど、様々な質問をぶつけていました。

 緊張のインタビューを終えた後は、中嶋亜弥チームマネジャーによるサクラフィフティーンについてのお話。と言っても堅苦しいものではありません。開始すぐに参加者たちに「施設内を全て回っていいから、JAPAN BASEをひとことでPRする画像の作成」を指示。インタビューを終了し緊張がほぐれた参加者たちは、すぐにグループに分かれて施設内へ。短時間で、アイデアに富んだ画像が出来上がりました。

元日本代表でありサクラフィフティーンの先輩でもある中嶋さんは、チームマネジャーとしてチームの環境・文化をどう作るか、それと結びついて情報をどう出すかに心を砕いています。情報は単に「伝える」だけでなく、いつ、どのタイミングで、どのように伝えるか細やかに気を配る中嶋さんの話は、ラグビーをプレーしている参加者にも参考になったのではないでしょうか。

 2日目の最後は、REP修了生からの講義です。初日にアイスブレイクをリードしてくれた塗師さん、甲斐さんに加え、もう一人の参加者が。それはサクラフィフティーンのメンバーとして合宿している松村美咲選手。彼女は高2のとき1期生としてREPに参加していました。現在、大学2年生の松村選手ですがラグビー歴は16年。人生の大半を共に過ごしてきたことになります。「ラグビーはいろいろな人と出会わせてくれる。皆さんも、このプロジェクトの縁を大切にしてください」と参加者にメッセージを送りました。

◎2日目 参加者の声
・T1ラグビーについて「ラグビーを実際にやったことはなくて、ブレイクダウンや動き方など、試合を観戦していたら分かることも、やろうとすると難しいことばかりでみんなに助けられながら実践しました。位置の声掛けやパスする人への声掛けなど、チームの中でのコミュニケーションの大切さを実感し、改めてラグビーのチームワークの大切さも学ぶことができました」

・サクラフィフティーンとの交流について「これまで女子ラグビー選手と関わる機会はあまり多くはなかったが、実際にインタビューすると心からラグビーが好きな人たちなんだと改めて感じた。男子よりも厳しい環境でもプレーすることを諦めなかった選手たちのラグビーに対する真剣さに感銘を受けた。また、自分たちがプレーできていることに対して感謝し、謙虚でいる姿勢を見習いたいと思った」

・修了生からの講義について「実際に私たちが取り組んでいるプロジェクトの先輩方から成長できたという話を聞き、半年間で少しでも多くのことを吸収していきたいと思った」

 

[3日目]

 いよいよ最終日。まずはJAPAN BASE事業推進室の星野幸喜さんが、施設内を案内。これまでの講習はクラブハウス内で行われていましたが、選手が使っているトレーニングジムや、地域との交流拠点となるコミュニティセンターの中も詳しく説明をしてくださいました。見学後は、最後のグループワーク。「JAPAN BASE利活用プレゼンテーション」。この施設を、更に広く知ってもらうにはどうすればいいか、4グループで話し合った後、発表。感想を述べあいました。「若い人をターゲットとして、福岡の伝統工芸品を絡めたオリジナルグッズを販売する」 「英語に興味がある日本人を対象に、タグラグビーやT1ラグビーを通して交流を図る」 「グラウンドでのパブリックビューイングやラグビー仕様の部屋に宿泊してもらうなど、一般の人を集客する」 「ラグビーをやっていない福岡の小学生にラグビーをプレーしている全国の高校生を集めて、ラグビーを教えてもらう」など、様々なアイデアが発表されました。一つひとつに星野さんが講評、中には「思いつかなかった」というアイデアもあり、参加者の発想の豊かさが見られました。

 最後に西機委員長から3日間の総評。さらに前日、話を聞かせてくれたサクラフィフティーンにお礼のメッセージをしたため、第1回研修は無事に終了。参加者は、それぞれの家路につきました。第2回の講習は8月24日にオンラインで開催されます。

◎3日目 参加者の声
・JAPAN BASE利活用プレゼンテーションについて「どうすれば施設を活かしながらラグビーを有名にできるのかを話し合いながら考えることが出来た。自分たちの意見に加えて、他のグループの斬新なアイデアや意見にとても驚いた」

・3日間の研修を終えて「将来の職業が明確に決まっていない私にとって、多種多様なキャリア講義を聞くことが出来るのはとても有難いと感じました。この後のプログラムでも、たくさんのラグビーとの関わり方を知っていければと思います」

(森本優子)