前夜の雨も上がった8月27日、長野県立科小学校においてラグビー教室が実施された。この教室は、前日に開催された「立科町女子スポーツ聖地化プロジェクトシンポジウム『女子スポーツで白樺を元気にしよう!』」(共催/立科町、日本体育・スポーツ政策学会、松本大学、同志社スポーツ政策フォーラム  後援/立科町教育委員会、白樺リゾート観光協会、白樺高原観光協会、信濃毎日新聞社)の第二部として行われたものである。
ラグビー教室は、第一部シンポジウムにおけるキーワードのひとつである「女子スポーツ」の中から今日世界的に注目を集めている女子ラグビーを取り上げ、現役代表コーチや選手から立科の今後を担う子どもたちに対してラグビーの楽しさを伝えてもらうという目的をもった企画であった。立科小学校5年1組と2組の生徒70名を対象に、それぞれ2、3時間目を利用して実施された。また、シンポジウムに参加した同志社大学ならびに京都外国語大学の生徒16名も受講者兼(小学生に対する)支援者として参加した。ラグビーの指導は、女子7人制ユース日本代表吉岡麻里子ヘッドコーチとユース代表の及川由希選手とバティヴァカロロ・ライチェル・海遥選手であった。ご指導いただいた3名とも8月16日から24日に中国・南京で開催されたアジアユースゲームズにおいて優勝(決勝:28-14で中国に勝利)をおさめられた直後のご参加であった。当日、選手の2名が持参してくださった金メダルを目にした子どもたちは、メダルを手に取ってみたり首にかけたり興味津々の様子であった。


左から、及川選手、バティヴァカロロ選手、吉岡ヘッドコーチ

ラグビー教室は、吉岡ヘッドコーチのリーダーシップの下、小学生や大学生と一緒にプレーする及川選手、バティヴァカロロ選手が吉岡ヘッドコーチの指導を支援する形で実施された。まず、ラグビー教室はボールを使わない鬼ごっこからスタートした。これは、誰もが知っている「遊び」を楽しみながらラグビーの特徴である「自由に動けるという」キーワードの伝達が意図されていたと思われる。以降、吉岡ヘッドコーチは、ボールを使用したり、攻撃方向を限定したり、チームで作戦を立てる機会を作られるなど様々な工夫をされながら受講者のプレー環境を徐々に実際のラグビーに近づけていかれた。このような受講者のレベルに合わせた高度な指導をしていただいたおかげで、初めてラグビーボールに触れる小学生もラグビーを十分に楽しむことができた。

ラグビー講習会終了時にアンケートが実施された、そこから浮き彫りになった内容は次のようなものである。
小学生にとっては、日本代表という特別な存在に触れる貴重な機会となった。そして、彼/彼女たちは、トライをとる過程で仲間と協力することの喜びを知ることができた。学校(教員)は、子どもたち全員が生き生きとプレーできるす機会を提供することができた。受講者兼支援者として参加した大学生にとっては、ラグビーの魅力を知ることができた上に、小学生という日常生活ではなかなか交流のない世代と関わりを持つ機会となった。指導者(ヘッドコーチならびに現役選手)にとっては、ラグビーの魅力を伝えるという日本代表としての責任を果たす機会となった。くわえて、小学生から応援してもらうことでラグビーにより一層取り組もうという強い意欲を喚起される良い機会となった。
このように、今回のラグビー教室は、参加者全員に対して互酬性のある貴重な機会となったということができるであろう。あえて課題を言えば、授業2コマを連続して活用できればより丁寧にコーチ陣から指導していただくことが可能になり、さらに面白味のあるラグビーを小学生に対して提供していただくことが可能であったと思われる点である。いずれにせよ、今回のような参加者全員に互酬性のある企画を継続的に実施できるようにしていくことが必要であろう。
最後に、ラグビー講習会実施にあたりご支援、ご協力をいただいた関係者のみなさまにお礼をお申し上げ講習会報告の結びとさせていただく。

事務局 向山昌利

―アンケートの主な回答―

<小学生>
・チームで作戦を考えてトライできたので楽しかった。
・協力してトライをとれたときとてもうれしかった。
・今度は、日本代表チームと試合がしたい。
・コーチがとてもやさしく、分かりやすく教えてくれたのでよかった。

<担任の先生>
・もともと「ルールが難しい」という先入観を持っていたが、実際には普段消極的な小学生でさえも何度も「トライ!」し楽しんでいる姿を見られ嬉しかった。
・運動量が多くとてもよい競技だと感じた。
・子どもたちの能力に合わせてレベルを調節できる競技だと感じた。
・子どもたちが生き生きとしていた。

<校長先生>
・ゲームに参加していない子どもがいない。
・運動量がすごく多い
・ラグビーをプレーすることが初めての小学生に指導するプログラムの流れがよい

<大学生>
・なじみがないスポーツであったが、意外と楽しめた。
・とても楽しめた。
・大人もこどもも楽しめる競技だと思った。
・小学生には、ルールが少し難しかったかもしれない。

<女子ユース選手>
・初心者に教える不安があったが、実際はとても楽しめた。
・子どもたちがニコニコ楽しんでくれたので嬉しかった。
・大会結果を伝えると喜んでくれたし、応援もしてくれたのでもっと頑張ろうと思った。また金メダルを取りたい。
・また立科に来たい。

<女子ユースヘッドコーチ>
・ラグビーの楽しさを伝えたいと思っていた。
・「面白かった」「またやりたい」という感想が聞けてうれしかった。
・女子ユース選手は良い社会経験になったと思う。