西海岸を代表するボールパークで

男女揃ってのベスト8入りを狙う

 

アメリカ太平洋時間の20日(日本時間21日)、サンフランシスコのAT&Tパークでラグビーワールドカップ(RWC)セブンズ2018が開幕する。

今回で7回目となるRWCには、男子セブンズ日本代表と女子セブンズ日本代表(サクラセブンズ)が揃って参加。それぞれ、まずは大会初日に2勝して、トップ8によるチャンピオンシップ・トーナメントに駒を進めることを目指す。

前日練習時に男女揃って円陣を組むセブンズ日本代表。アベック8強入りを狙う

photo by Kenji Demura
 

男子のトーナメントには24チームが参加。日本はPre-round of 16と名付けられた予選でまずはウルグアイと対戦(現地時間20日15:13=日本時間21日07:13)。ウルグアイに勝てば、リオデジャネイロ・オリンピックの覇者でもあるフィジーとベスト8をかけて対戦することになる(現地時間20日20:53=日本時間21日12:53)。

 

「正直、フィジー戦のことは考えていない。もちろん準備はしているが、選手たちには『先を見るな』と言っている」

 

今回が世界のメジャートーナメントとしては初の指揮を執る大会となる岩渕健輔・男子セブンズ日本代表ヘッドコーチは「ベスト8」を目標に掲げながらも、まずは初戦に集中している姿勢を強調する。

 

「ウルグアイに対して100%以上の準備をして臨む。香港(=4月のHSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2018-2019コアチーム予選大会)の時はなんとか勝てたがラッキーなトライもあった。まずはセットプレーの起点のところでプレッシャーをかける。アタックは一人ひとりが勝負しながら前に出てつなぐ。ディフェンスは早くシフトして、しつこく守れるか。
ベーシックなところをしっかり。そこを求めている」

ワールドシリーズのコアチーム復帰を決めた4月の香港での男子セブンズ代表。新メンバーも加わり戦力アップ

photo by Kenji Demura

 

ウルグアイに勝てば前述のとおり、その日のうちにフィジーへのチャレンジとなるが、小澤大キャプテンはオリンピックタイトルホルダーに対しても「決して勝てない相手ではない」と、強気の姿勢を崩さない。

 

「(日本がウルグアイに勝ってRound of 16で対戦した場合)フィジーにとっては初戦になる。波があるチームだし、最初のキックオフから、プレッシャーをかけてやっていきたい。ラインアウトの精度もそこまでは高くないし、自分たちがどこまでできるのかチャレンジするには絶好の相手」

 

ウルグアイ、フィジーを連破した場合、2日目以降は1〜8位を決めるチャンピオンシップ・トーナメントで戦うことになり、その時点で8強入りは確定。逆に、初日敗れた時点で9位以下が決まり、ウルグアイ戦で敗れた場合はフィジーとのRound of 16にも進めず、初日は1試合のみで終了となる。

 

「起き上がりの速さ、ポジションの速さ、深く戻る速さ、ディフェンスで開く速さ、そういう速さに関して今までのチームよりも上げたかった。ディフェンスもアタックも速さにこだわっていく」(岩渕HC)

男子セブンズ日本代表を直接指揮する岩渕HC。女子代表の稲田HCと共に速さを意識した戦い方で世界に挑戦する

photo by Kenji Demura
 
 

一方、女子トーナメントには16チームが参加。

いきなりRound of 16の戦いからスタートすることになり、初戦(現地時間20日10:22=日本時間02:22)でフランスに勝てばその時点で8強入りが決まる。

 

「フランスに勝ってベスト8というところしか見ていない。14分間に全てをかける」(中村知春キャプテン)

 

そのため、チームの仕上げ方も2017-2018シーズンにコアチームとして戦ってきたワールドラグビー女子セブンズシリーズ(以下、ワールドシリーズ)時とは異なるかたちでの大会入りとなる。

 

「いつもより練習量を落とさずにきた。どれだけ1試合目に100%でいけるか。スイッチが入らないでダメなのが一番後悔する。そういう意味ではいいコンディション。1試合目で全てを出し切る」(稲田仁ヘッドコーチ)

 

フランスとはワールドシリーズ最終戦のパリ大会(6月8〜10日)で相対したばかり。1ヶ月前の対戦では、試合開始から連続3トライを奪われたことが響き、後半追い上げたものの17ー26で敗れている。

 

「最初にフランスがハイプレッシャーでくるのはわかっている」と、中村キャプテンが代弁するとおり、フランスが再び試合開始とともに主導権を握りにくるのは間違いないだろう。

 

「ワールドシリーズでは接戦に持ち込みたいという戦い方だった。最初の3分を耐えて、メンバーを変えながら得点を取っていく。ただし、そういう試合になると勝つのはなかなか難しい。今度は最初のトライをこちらが取っていくというところにフォーカスしている。粘るのではなく、最初からこちらがいく」(稲田HC)

 

試合開始から主導権を握るために、当然より重要度が増すのはセットプレーということになる。

「セットプレーの部分は準備に時間をかけた。『あれっ』と思わせるようなプレーを出したい」(同HC)と、これまでとは異なるオプションも披露して、いきなり今季のワールドシリーズ総合順位で3位となった強豪に対するアップセットに向けて準備は万全だ。

 

「最初のきっかけさえ作れれば、ボールをつなげられる。走り切るとか、起きてすぐ立つとか、そういうところをしっかりやる。あとはお互いのコネクションのところを途切れさせずに組織的なディフェンスをしっかりやってきた。どうコミュニケーションをとっていくか。いいかたちで来ている」(中村キャプテン)

ワールドシリーズ最終戦パリ大会時のサクラセブンズ。フランスに対するリベンジ果たし8強へ

photo by Kenji Demura

 

男子よりも参加チーム数の少ない女子トーナメントは全チームが初日に2試合、2日目に2試合の計4試合で大会を終了する予定となっている。

 

「ワールドシリーズを通して、特にアタックの部分ではフィジカル的に通用する、ボールキープできるという場面が増えた。ワールドカップではオフロードでボールをつないでいく。そのためにはボールキャリーとサポートの選手のポジションと速さというところを重点的に強化してきた。ボールをどんどん動かしていくというところを見せたい」(稲田HC)

 

ワールドシリーズでの経験も踏まえた上で、「トリプルアクション、プレッシングセブン、フィジカルファイト」というサクラセブンズが掲げる3つのテーマを進化させたエキサイティングなラグビーを披露して8強入りを狙う。

 

2013年のロシア大会から5年ぶりとなるRWCセブンズ。大会会場となるAT&Tパークはメジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地だ。

アメリカでも有数の美しいボールパークで、普段は小さな白球を見慣れているカリフォルニアのファンにアメリカン・フットボールとは異なる大きめの楕円球スポーツの素晴らしさをアピールする場となる。

 

「野球場でなんてやったことないし、しかもメジャーなところ。すごく雰囲気が良さそうだし、ここでやれるのかとワクワクしている」(男子セブンズ日本代表・小澤主将)

 

ラグビー新時代を象徴するビッグイベントで、男女揃っての「日本が世界を驚かせる」パフォーマンスを期待したい。

 

 

text by Kenji Demura