●11月23日(火)
いよいよアジア競技大会、最終日。
泣いても笑っても、今日、アジアで7人制日本代表が何番目に強いのか、試されます。
今日の結果がすべてではありませんが、選手たちは金メダルを目指し、ここまで積み重ねた集大成を、アジア大会の大舞台で発揮できるのでしょうか。
まず、試合が行われたのは女子7人制日本代表。
準々決勝の相手は香港代表です。直前のシンガポールクリケットセブンズ、そして7月に行われた女子アジアセブンズで連勝している相手。しかしチームに慢心はありません。
「誰かに任せるのではなく、一人ひとり意識をしていこう。歴史を作ろう」(黒岩ヘッドコーチ)
「最初から、いこう」(岡田選手)
「香港が、もういやになる、というくらいまでやろう。楽しもう」(鈴木主将)
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女子7人制日本代表(11月23日、対シンガポール代表戦)【フォート・キシモト】 |
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今村選手(11月23日、対韓国代表戦)【フォート・キシモト】 |
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鈴木キャプテン(左)と山口選手、全試合を終えて(11月23日、対シンガポール代表戦)【フォート・キシモト】 |
開始1分、幸先よく冨田選手がトライを決め、7-0でリード。しかし今日の女子7人制日本代表は、ペナルティを多くとられます。ディフェンスで繰り返す反則、じわじわ後ろに下げられ、前半3分、そして前半6分とトライを奪われ、7-14で前半を折り返します。
後半開始、経験豊富な岡田選手、山口選手の活躍で、最初に得点したのは日本代表。加藤選手がトライ、コンバージョンゴールも決まり、14-14の同点。試合はふりだしに。しかし、後半4分。準決勝進出を決めるトライを奪ったのは、香港代表でした。
最終スコア、14-19。
まぎれもない、敗戦。ここで、女子7人制日本代表のメダル獲得の道は途絶えてしまいました。
「選手はベストを尽くしましたが、敗戦という結果は真摯に受け止めて、残りの試合で一戦一戦最高の試合をみせたい」(黒岩ヘッドコーチ)
そして、気持ちを切り替えて臨んだインド代表戦。結果は8トライを奪い46-0で快勝。
「ここまで、自分のチームで与えられている役割である、トライを取ること、ディフェンスを引き付けるということができていなかった。だからやってやるぜ、と思ってプレーしました。」(インド戦で2トライの田中選手)
女子7人制日本代表の最終戦は、5-6位決定戦、対シンガポール代表戦。奇しくも大会初戦の相手と同じです。
「一人ひとりの進化を見せて。最後の集大成、一番いいところを、出そう」(黒岩ヘッドコーチ)
「私たちは、この試合から始まりだと思う」(鈴木主将)
前半序盤はこう着したものの、山口選手が前半で3トライを挙げ、初戦では19-12の勝利だったシンガポールを相手に、31-0で女子日本代表が圧倒しました。
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築城選手(11月23日、対韓国代表戦)【フォート・キシモト】 |
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山口選手(11月23日、対シンガポール代表戦)【フォート・キシモト】 |
「まずはたくさんのご声援とご支援をいただきありがとうございました。皆様のおかげで、このような貴重な大会に参加でき、そこでいい経験を積むことができました。結果については、期待に沿うことができませんでした。しかしその中でも、大舞台で三樹選手を始め高校生が将来性を感じさせる活躍をし、トライアウト組の藤崎選手も、この大きな大会でトライを決めたことは、トライアウトの可能性も十分示すことができ、収穫だったと思います。これからはアジア5位という結果を、まぎれもなく自分たちの実力であると真摯に受け止め、次のステップに向け、しっかり反省して、つなげていきたいと思います」(黒岩ヘッドコーチ)
「この大会を通じて、現状の女子7人制日本代表、そして、自分自身の実力を知ることができました。接戦を競り勝てるように、もっと試合経験を積み、自信を持って戦えるようにしたいです。個人的には、キックの精度を上げていかなくてはいけないと思いました。この結果をしっかりと受け止め、練習していきたいと思います。今回、応援して頂いた皆さんに感謝申し上げたいと思います。引き続き、女子ラグビーへのご声援、よろしくお願いいたします」(鈴木主将)
女子7人制日本代表、歴史的なアジア競技大会第1回目の成績は、5位という結果でした。
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今村選手(11月23日、対韓国代表戦)【フォート・キシモト】 |
一方、前回大会チャンピオンの男子7人制日本代表。しかし、今回の大会に臨む気持ちは挑戦者。金メダルを獲るために、選手たちの気持ちは絆で、ひとつになります。
初戦のインド戦、「入りで受けるな」(宇薄主将)、「後半に相手が動けなくなるまで徹底的にやってやろう」(築城選手)
インド代表は実績実力では格下。しかし日本代表は7人制ラグビーの怖さを味わいます。
インドのペースで試合が運ばれ、先制トライ後、日本代表は自らのミスで、次の得点が奪えません。前半終了間際、インドにトライを取られ、5-5での折り返し。
後半、途中出場の今村の連続トライで何とか差を広げ、終わってスコアだけをみれば24-5の勝利。準決勝へ駒を進めます。アップセットの起こり得る7人制ラグビーの難しさと、悪い流れを自ら断ち切ることができる今回の日本代表の底力が垣間見えた試合となりました。
続いての準決勝。相手は韓国代表。前回大会の決勝を争った、強豪です。
前半は14-5、そして後半最初に今日2つ目のトライを築城が決めると、21-5、このままさらに追加点を重ねていくのでは…そのような状況から一転、後半3分に簡単にディフェンスのほころびから一つトライを返されると、1分もたたないうちに、連続でトライを献上。残り3分、ワンチャンスで逆転可能な21-15まで追い上げられます。後半6分、和田選手が突き放すトライを決め、ようやく一安心。28-15で決勝に進出です。
決勝の相手は、もう一つの準決勝、地元大声援を味方にする中国対香港の勝者と。この試合は14分で決着がつかず、ゴールデンポイント方式の延長戦に。その激戦を制したのは、香港代表でした。
決勝のカードは日本代表対香港代表。プール戦で勝利している相手ですが、マレーシア・シンガポール遠征で2連敗を喫している日本代表にとっては、2連勝でリベンジをする絶好の機会です。
このチームで戦う最後の試合、そして金メダルをかけた決勝戦。試合前のウォーミングアップから、熱がこもります。試合直前には「体を張ろう、刺さろう、絶対、やってやろう」(宇薄主将)。
そしてついに、アジアNO.1をかけた試合がキックオフしました。
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長友選手(11月23日、決勝、対香港代表戦)【フォート・キシモト】 |
前半は日本代表のペース。2分築城、4分、10分和田がトライを重ね、香港代表の反撃を1トライに抑え、21-7で前半を終えます。ただ、これまで体を張ってチームを引っ張ってきた、宇薄主将が前半3分で交替する予想外の状況。しかし、チームは動揺することなくこれまで通りの試合運びを見せます。
後半が始まり、先手は香港代表。ペナルティから隙をつかれ、ディフェンスの間を走りきられます。これで1トライ1ゴール差の21-14に。その後も香港代表が攻める時間帯が続きますが、日本代表はチームスローガンに掲げる「ハードディフェンス」で執拗なタックルでアタックを止め続けます。ライン際を走られあわやのところを、和田が外に押し出しトライを防ぎ、7点差を死守します。しかし、後半3分、その果敢で激しいタックルがゆえに、築城のタックルが相手選手を宙に浮かしてしまい、危険なタックルという判定。しかも、退場処分となるレッドカード。試合時間はまだ6分を残し、日本代表に試練が訪れます。一人少なくなった直後、数的優位を生かして香港代表がトライ。ゴールも決まり、21-21の同点となります。
「まったく動揺していない、というわけではありませんでしたが、ボールをキープして、時間を有効に使って戦おうということを、選手全員が理解してプレーできていたと思います」(仙波選手)
香港代表トライ後、ここから日本代表チームが一丸となった攻撃が始まります。一人ひとりが仕掛けて前に出て、マイボールをしっかりキープしながらボールを動かし続け、じわりじわりと敵陣に入り込んでいきます。ボールをキープすること、約2分、ラックから長友選手がボールを持ち出し、ついにトライ。一人少ない状況ながら、日本代表が勝ち越しを決めます。その後、必死のディフェンス、香港代表のペナルティにも助けられながら時間は刻一刻とタイムアップの10分へカウントダウン。そして試合終了のホーンが鳴った後に、フリーキックの反則を得た日本代表は、正面選手が外に蹴り出し、ノーサイド。長い長い後半残り6分を耐え忍びながら、攻める姿勢を見せ続けた日本代表が、ついにアジアNO.1、連覇を成し遂げました。
試合終了後の円陣では、選手たちの目にもスタッフの目にも涙が。優勝することを絶対の目標に掲げ、しかし、決して簡単ではないアジア各国との試合の数々、そして決勝でのまさかの退場。絆の力ですべてに打ち勝ってきた男子7人制日本代表は、それぞれの重圧から解放され、金メダル獲得の喜びにようやく浸ることができました。
「前半早々に負傷退場してしまい、皆に申し訳なかった。でも、絆を信じ、それが一本につながった結果勝つことができたのだと思います」(宇薄主将)
「このチームで良かった。チームの絆が一つになったことで、力が最大限に発揮された。選手6人になってからも、誇りを持って戦った選手たちに心から感謝します」(村田監督)
最後に、選手みんなの待ち合わせ場所だった表彰台の一番上で、全員が笑顔で金メダルを手にした広州アジア競技大会。この優勝は、選手自身のためだけではなく、これからの日本ラグビーのためにも、大きな足跡を残す結果ではないでしょうか。
アジアで勝ち続ける難しさ、アジアで勝つことの厳しさ、今回の男女7人制ラグビー日本代表の経験が、この先のさらなる飛躍につながることでしょう。
最後に、本大会で日本代表がアジア競技大会を戦うにあたり、サポートしてくださった関係者、ご家族、関わる全ての皆様、そして現地広州にて、トヨタ自動車の大原氏を始め、慣れない土地での活動を全面バックアップしてくださった皆様、まことにありがとうございました。心から御礼を申し上げます。
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決勝で香港に勝ち、金メダルを獲得。男子7人制日本代表 |
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喜びにわく男子7人制日本代表【フォート・キシモト】 |
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金メダルを手に。男子7人制日本代表【フォート・キシモト】 |
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スタッフもいっしょに。男子7人制日本代表【フォート・キシモト】 |
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男女の代表選手・スタッフそろって。【フォート・キシモト】 |
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