2009年11月1日、東京・八王子の拓殖大学で、近隣ラグビースクールと小学校、都内高校生を招いて、オーストラリアのマッコーリー銀行主催によるラグビークリニックが開催されました。

コーチは元ワラビーズFBのマシュー・バーク氏をはじめ、豪州高校代表コーチ、豪州高校代表やU19代表経験者、それに横河電機アトラスターズに所属するポウリアシ・タウモエペアウ、マット・イアン・ブレンデン、スコット・スタニフォース、田辺篤、覺來弦の5名の選手、他子供への指導経験豊富な外国人コーチ10名、総勢約20名の豪華メンバーでした。

規模の大きいクリニックでした
規模の大きいクリニックでした

言葉はわからないけど一緒に遊んでいます
言葉はわからないけど一緒に遊んでいます

低学年の子どもたち
低学年の子どもたち

楽しさを引き出すコーチング
楽しさを引き出すコーチング

小学生がラグビー場に着くと、拓大のお兄さん達が英語で名前を書いて胸に貼ってくれます。朝7時から準備していたコーチ陣は早速子供たちとタッチフット、一緒に遊び始めれば言葉なんてわからなくても大丈夫です。

予定の9時より少し早く開会式、ワラビーズのレジェンド、マシュー・バーク氏の紹介にお父さんやコーチ達はどよめきましたが、実は朝一でグラウンドに来て荷物運びや雑用をしていた時にはあまり気づかれていなかったようでした。

約250人の子供たちは年齢別に分かれてクリニック開始、どの学年でも一番大切なのは楽しんで練習すること、コーチも子供も見ている私達もずっと笑顔でした。ボールを落としても怒られないから思い切ってできるし、コーチに褒められるのが嬉しくてさらに頑張ります。指示が英語なのでいつもより集中してコーチの声に耳を傾けているようです、普段言われていることも、いつもと違うコーチに笑顔で教えてもらうことで新鮮に感じるのでしょう。そんな楽しい練習の中にも基本がぎっしり、楽しく練習して気づいたら上手になってるなんて最高です。

周りで見ていた日本のコーチ達は「いつもより楽しそうだなぁ」「子供たち笑顔だな~」と苦笑い、メニューの内容だけでなくコーチとして子供に対する姿勢も色々と勉強になることが多かったようです。

ここで、見ていた保護者とコーチに対してのセッションも始まりました、さすがに本場のコーチ達もちょっと真剣な眼差しになり子供の練習とは雰囲気が違いますが、基本の徹底、褒めて伸ばすことは子供も大人も一緒です。何よりTVでしか見ることのなかったマシュー・バーク自らのお手本と彼からもらうパス、きっと夢のような時間だったことでしょう。

子供たちのクリニックの最後はバーク氏がキックをし、他のコーチがキャッチのデモンストレーション、今まで見たことのない程の高い高いパントに子供たちは揃って口を開けて空を見上げます。周りに人が集まっているにも関わらず、高く上がったボールは必ず空いているスペースに落ちてきます。あの高さと距離にも関わらず絶妙なキックコントロール、これぞ世界トップレベルというスキルを惜しげもなく披露してくれました。

楽しかった時間はあっという間に過ぎ、終わりの頃にはもう1人のスペシャルゲスト、ワラビーズがW杯で優勝した時のキャプテン、2mを超える長身のジョン・イールズ氏が来てくれました。多忙なためコーチングする時間はありませんでしたが、都内のホテルから約2時間かけて来てくれ、多くの子供にサインをしてくれました。

小学生の講習が終わると、次は高校生です。

イールズ氏の話
イールズ氏の話

高校代表コーチによるスクラム指導
高校代表コーチによるスクラム指導

BKへのお手本はマシュー・バーク氏
BKへのお手本はマシュー・バーク氏

すでに予選敗退したチームばかりで、今から来年に向けて頑張っています。三鷹市協会の声がけで都内200名近くの高校生が集まってきました。最初にジョン・イールズ氏の話を聞き、その後で練習に入りました。ここでも徹底して教えてもらったのは基礎、残念ながら今の日本では高校のどこのチームでも行き届いた指導が受けられるわけではありません。
ほとんど経験もないけれど生徒の為に勉強して指導している先生、人数が少なくチームとしての練習もほとんどできない学校、それでもラグビーが好きだからと頑張っている選手達にコーチ達の指導にも熱が入ります。

子供の頃からラグビーに親しんでいるオーストラリアの同世代の選手に比べて、どうしても基本が劣ります。コーチの指示も午前中の子供達へのものと実は内容はあまり変わりません。現状では高校からラグビーを始めて基礎がないままでも試合の為の練習になってしまいますが「姿勢やパス、走るコースなどの基本中の基本、これができていないとどんなに頑張ってもこれ以上は上達しない」と一人のコーチが言っていました。

今回参加してくれた錦城高校2年の本間吉(ほんまはじめ)君から感想文が届きました。

「今回のラグビークリニックは大変貴重で楽しい経験でした。世界のトップレベルを経験した選手達が自分たちの目の前にいて、自分たちに指導をしてくれる。普通ではありえないような体験でとても興奮しました。クリニック中、コーチの皆さんはとてもフレンドリーに指導してくれて、最初はとても緊張していたのですが、その後はとても楽しく練習することができました。また1つ1つのプレーをしっかりとやることを重ねて言われ、トップのチームでも、いやトップレベルだからこそ基礎のプレーをしっかりとやっているんだということを強く実感しました。こんなことは多分二度とないと思いますし、そんな機会を与えて頂いたことを大変嬉しく思います。短い時間でしたが、教えて頂いた(基本の)しっかりしたプレー、そして何よりラグビーを楽しむ心を忘れずに、これからも頑張っていきたいと思います」

今回参加した1年生、2年生は改めて基本の大切さを感じ取ったことでしょう、そしてこの経験を生かして、今後も練習に励み、これからもラグビーというスポーツを一生楽しんでいってくれると思います。

そして最後は一日中裏方として子供達のために働いてくれた拓大ラグビー部へのご褒美、一軍20名に対しての1時間のスペシャルセッション。まずFWとBKに分かれての練習、その後に両方合わせてバーク氏率いるコーチ陣相手にアタック練習です。
1週間後に大事な試合を控えていることは事前に伝えてあるので、基本ではありますが気合の入った指導をしてくれました、この効果が次の中央大学との試合に出ることを期待しています。

最後に日本の子供たちの為に都内から離れた場所まで来てくれて、朝7時から夕方の4時まで、休憩も食事もあまり取れない中で3回ものセッションを行ってくれたコーチ陣、そして今回こんな素晴らしい機会を提供して下さったエグゼクティブ・ディレクターのガイ・レイノルズ団長はじめとするマッコーリー銀行様に心から感謝申し上げます。

バーク氏・武田普及育成委員長・レイノルズ団長
バーク氏・武田普及育成委員長・レイノルズ団長

お疲れ様でした
お疲れ様でした