12月16日 

■流通経済大学 63-26 福岡工業大学 (前半 36-5) 

流通経済大学(関東大学リーグ戦1部3位)は、リーグ戦では大東文化大学と法政大学に敗戦したものの、優勝した東海大学とは引き分けるなど、11大会連続19回出場の実力校。一方、福岡工業大学(九州学生リーグⅠ部1位)は、2大会ぶり26回目の出場で、1回戦は初出場の北海道大学から15トライを奪い108対0、2回戦の朝日大学との対戦では先制点を奪われたものの55対40と逃げ切り、この3回戦出場を決めていた。

試合開始9分、福岡工大陣内でのファーストスクラム、流経大がボールを奪い、SO山上大治が22メートルライン上から絶秒なキックパスを蹴り、WTB韓尊文がボールを拾い上げて左中間に先制トライを決め自らゴールも成功。続いて2トライ1ゴールを追加して19対0とした。福岡工大は攻め込みながらもイージーミスで得点が取れなかったが22分、ライン際でボールをつないでFLシオエリ・ヴァカラヒが右隅に福岡工大の初トライを決めた。

その後、流経大CTB平井継之助のキックパスをWTB中根稜登がトライ、福岡工大ゴール右手前10メートルラインからスクラムトライ、さらに前半終了間際、中央付近からCTBビリヤメ・タカヤワが約50メートルの独走でトライしゴールも成功して前半を36対5と流経大がリードして終了した。

後半開始3分、流経大がキック処理をミスしたボールを福岡工大CTB帆足海星がトライ、8分には流経大ゴール前のラックから出たボールを福岡工大のSO香山海渡が切れ込んで右中間にトライを決めるなど、バックスが立て続けにトライを取る。16分、福岡工大陣内10メートルライン付近で流経大のWTB中根稜登が鮮やかにインターセプトしてトライを決め、ゴールも成功して43対19とした。この後、福岡工大のNO.8ソセフォ・ファカタヴァが右中間にトライを決めて43対26としたが、福岡工大の反撃もここまでであった。

福岡工大はキック処理のミスからボールを奪われるケースやモールで押し込まれるなどで失点を重ね、38分には入替で入った流経大SH古川晃平、40分には同じくWTBイノケ・ブルアにノーホイッスルトライを許し、63対26と大差での敗戦となってしまった。

福岡工大は「ベスト8を目指す」(主将・佐竹克基)としたチームの目標を達成できずに熊谷ラグビー場を去って行ったが、来年は目標を達成して欲しいと願う。一方、準々決勝で学生王者の帝京大と対戦する流経大の戦いが注目される。

(山野英彦)

 

■大東文化大学 31-7 筑波大学 (前半 17-7) 

大東文化大学(関東大学リーグ戦1部2位)は6大会連続26回目の出場で、リーグ戦では優勝した東海大学との対戦で唯一、僅差で黒星を喫しただけに選手権制覇への意気込みは一際強い。一方、筑波大学(関東大学対抗戦Aグループ5位)は3大会ぶり21回目の出場で、大東大の外国人留学生のパワーをどこまで総合力で封じ込められるか、国立大学の意地に期待が寄せられた。

試合開始8分、筑波大のキャリーバックで得たスクラムを大東大が押し込みFL湯川純平が先制トライを決めた。ゴールは失敗で5対0とした。その直後の12分、筑波大ボールのラインアウトを大東大が奪い、CTBシオペ・ロロ・タヴォが70メートルを独走して左端にトライを決めた。ゴール失敗で10対0。

その後、筑波大は再三、大東大陣内に攻め込むがチャンスを生かせない。両校ともにミスが多く、プレーに決め手を欠く展開が続く。そんな中30分、大東大のオフサイド。筑波大はタッチに蹴り出してラインアウトを選択。ラインアウトから5メートルライン上でラックを続け、ボールを受けたSO松永貫汰がゴールへ飛び込んでトライと思った瞬間、大東大のWTB朝倉健裕がグラウンディング直前にボールを奪取するプレーは見応えがあった。

36分、ハーフウェイラインで大東大ボールのスクラム。一気に押し込んで左にバックスが展開してWTB土橋永卓がトライ、ゴールも成功して17対0とした。このまま筑波大が無得点で前半終了かと思われた39分、大東大ゴール5メートル手前、入替で入ったばかりの筑波大CTB一口隼人の鋭いタックが功を奏し、筑波大がボールを確保してSO松永貫汰がゴールポスト右にトライを決め、ゴールも成功して7点を取る。この結果17対7で折り返す展開となった。しかし結果的にはこれからが筑波大の唯一の得点となった。

後半は、両校ともにペナルティでチャンスを生かしきれず、一進一退の攻防が続き29分まで両校ともに得点できない状況であった。筑波大のPR安里大吾が反則の繰り返し(コラプシング)でシンビンとなり一人少なくなった直後の29分に、大東大WTB土橋永卓、34分にはSO大矢雄太がトライを決め、それぞれゴールも成功して31対7と勝敗を決定的とした。

大東大のパワーと、これに対抗した筑波大の鋭いディフェンスも光っていたため、緊迫した好ゲームであった。大東大は、天理大(関西大学Aリーグ1位)と準々決勝で対戦するが、モスグリーン旋風の再来に期待が寄せられる。

(山野英彦)

 

会見レポート
流通経済大学-福岡工業大学

【福岡工業大学】
≪宮浦成敏監督≫
「今日のゲームについては、我々が目指しているラグビーが出来なかったのが率直な意見です。ターンオーバーが非常に多く、そこからトライを取られる場面が非常に多かった。セットピースに関しては、相手スクラムが重い事は分かってましたが、修正ができて少しは耐えてボールを出す事はできました。
我々が目指すラグビーはディフェンスからアタックの時間を作り出していくという事で、ディフェンスからプレッシャーをかけて、そこから重たい相手FWを動かして、何本か我々は外でトライを取る事ができました。それが我々が目指してきたラグビーであり、重くもなくプレッシャーを掛けられるチームではないが、相手のワークレートを上げて強いバックスリーでトライを取り切るというところはできたと思います。ただ前半の失点が大きく、追いつくことへの意欲が薄れてきて、ディフェンスも悪かった。
後半はディフェンスを修正して、ターンオーバーからアタックを作り出していこうという事で、後半に関しては最後の10分を除いて良かったと思います」
 
≪佐竹克基主将≫
「この4年間ベスト8を目指し、そのための準備をしてきましたが、前半は自分達のプレーができずに失点が多くなりました。後半に自分達のプレーができた時はしっかり得点につなげる事ができたので、そこを後輩たち繋げていって欲しいと思います。
結局最後は地力の差が出た事が負けに繋がったと思います」
 
------ハーフタイムの指示と、後半どの様な事をやって修正ができたのか?
≪宮浦成敏監督≫  
「タックルが甘くなりラインブレイクをされた事で、後半は相手に仕掛けられる前に間合いを詰めて、一人目はタックルをして、そこからターンオーバーを狙っていこうと指示しました。それとコンテストしたところで集中してボールを取り、我々がやってきたディフェンスからアタックの時間を作り出していくという面で、ターンオーバーからアタックをしっかりやっていこうと指示しました。
それと、前半はスクラムでの姿勢が高かったので、もっと低く組んでマイボールはしっかり出していこうと。この3点を指示しました」
 
------九州学生リーグと体感がどの様に違っていたのか?
≪佐竹克基主将≫  
「九州学生リーグとは一人一人の強さは全然違いますし、ブレイクダウンでの激しさ、接点での強さ、速さは強かったと思いました」
 
------トンガ人選手の起用法について
≪宮浦成敏監督≫  
「ソセフォに関しましては、サイズも大きくスピードにのれる選手で、球際のボールを繋ぐ能力やオフロード、個人での能力が非常に高い選手。本来はセンターでやっている選手で、センターで使いたかったが、九州リーグ戦でバックローに負傷者が続出した事もあり、フォワードの勢いをキープしていく為にNO8に起用しました。
ヴァカラヒもU20日本代表でセンターの選手ですが、同様の理由で6番にあげてフォワードを前に出して、我々の強みでもある佐竹主将を中心としたスピードのあるバックスリーを使っていくという流れでここまで来ました」
 
------後半いいトライもあったが、目指してるラグビーを見せる事ができたのでは?
≪宮浦成敏監督≫  
「福工大の歴史を見れば、50年前に関西大学相手に全国大会で初めての1勝を挙げた時、福工大のタックルは凄いんだと。
福工大はディフェンスのチームからここまでやってきたという歴史を保ちながら、強い相手に挑むにはディフェンスをしっかりやって、流れを変えていくんだというコンセプトは変わりありません。ただ、高い能力を持った外国人が加わった事で、そういうスタイルが変わってきました」
 
 
【流通経済大学】
≪池英基(ジ・ヨンギ)HC≫
「(勝てば)次は帝京大学という事は決まっていた上で、自分達が練習でやってきたラグビーがどれだけできるのか?帝京大学戦に勝つためにメンバーをはじめ、チャレンジしたゲームだったと思います」
 
≪山川遼人主将≫
「次の帝京大学戦に向かって、自分達にフォーカスしてやったんですが、後半の初めに共通理解というところが崩れて、自分達の流れに乗り切れず福工大さんに乗られた部分があった。これを続けると帝京大学さんには勝てないので、しっかり次に向けてこの1週間を準備していきたいです」
 
------後半最初にやられたのは、相手の圧力なのか自分達が良くなかったのか?
≪山川遼人主将≫  
「前半からオフロードがいけて繋げるところを繋ごうという話をしていたが、そうでないところで繋いでしまってミスをするという場面が多かったので、そこから自分達のペースが狂っていったと思います」
 
-----この大会に向けてどのような事を意識し、その点がどれだけできたのか?
≪山川遼人主将≫   
「リーグ戦を終えてから、全員が同じ方向を向くというところをフォーカスした中で、前半のいいテンポでできていた時は自分達がしっかり一つの方向を向いていたけれど、悪いテンポの時に同じ方向を見ずバラバラになっていたので、そこを修正していきたいです」
 
 

大東文化大学-筑波大学

【筑波大学】
≪古川拓生監督≫
「負けたら終わりという選手権の中で、大東さんと対戦する事になりました。大東さんは個人の力、セットの強さ、バックスのタレントというところで長けたチームという事を十分理解して試合に臨みました。筑波としては、速さ、低さ、運動量というところで、組織として個のチームに対してどう戦うかという事で準備をしてきました。
まだまだできたという気持ちを選手自身も持ってるとは思いますが、今持っているものをしっかり出そうと準備をして臨み、実際にそういうプレーはいくつか見られたと思います。まだまだやれたと、その部分があった分が今回の結果になったと思っています。
今回、対抗戦の代表として1枠を頂けたという中で、恥じないプレーをやらせてもらいたいと思ってました。その部分だけは選手たちがしっかりやってくれたと思っています」
 
≪大西訓平主将≫
「帝京戦が終わってから2週間の間で、大東さんに対して自分達が持っているものを全て準備して、この試合に臨みました。
筑波大学は組織で勝つ為には、80分間チーム全員で走り勝ったり、ハードワークをすることを意識してこの試合に臨みました。良い部分もたくさんあったんですが、一瞬の隙とか一発の力に得点をされてしまい、それを返せなかった面があって、その点差が大きな重荷になってしまいました。
筑波としてはもっともっとやれたという気持ちもありますが、応援席も含めて全員がチーム一丸で戦ってる姿に、自分としてはもっとやりたかったなという気持ちがありましたが、悔しい結果となってしまいました」
 
-----序盤2本目のトライを取られてからディフェンスが合ってきた感じだったが、何が変わったと感じた?
≪古川拓生監督≫ 
「序盤に取られた2つは、 大東さんのセットの強みが出たところでした。自分達がボールを持って攻めれば確実にリズムが取れる事は分かっていたので、アタックの中で自分達のリズムを得たものが接点の攻防の中でもやれたのかなと。動き続ければ必ずうちに流れが来ると思ってましたので、いかにゆっくりしたゲームにさせないかという事が重要でした。それがゲームの頭に2つ来てしまった事で、こういう流れになるとは思ってました」
 
-----3年ぶりの大学選手権で、どの様にプレーしようと思っていた?
≪大西訓平主将≫ 
「自分にとっても1年生の時以来の大学選手権で、負けたら終わりのプレッシャーの中で戦う大会なので、練習から一つ一つのシチュエーション全てに勝つ姿勢で臨んでいました。一つ一つの勝利の積み重ねが自分の勝利だと思ってたので、そういったところを意識して臨んできました」
 
【大東文化大学】
≪青柳勝彦監督≫
「セットプレーはしっかり安定して、スクラムトライも取れて流れも良かったんですが、いい流れを掴む場面で細かいミスがあったりして、なかなか繋がらなかったというところが多々あった。精度を追及してやっているんですが、細かい部分にまだミスがあるので、修正して次の天理戦にチャレンジしたいと思います」
 
≪平田快笙主将≫
「アタックする場面でミスが多くて相手ボールになる事がありましたが、前に出てのディフェンスが上手くはまって、相手のミスを誘う場面もあったので、それは良かったと思います。
相手のカウンターラックにターンオーバーされることもあったので、次の天理戦に向けて接点の攻防を激しく徹底して上げていきたいと思います」
 
-----天理戦に向けての今日の試合の印象は?
≪青柳勝彦監督≫ 
「我々はセットプレーが強みで、そこをしっかり出すという事はできたので、天理戦に向けてもそこが出せれば、向こうもプレッシャーが掛かってミスする事もあると思います。その点で今日は良かったと思います。
ただし、ブレイクダウンとか細かい部分で今日みたいな事をやってしまうと(勝利は)難しくなってくると思うので、その辺の精度の点を修正していければ次も良い試合になると思います」
 
-----筑波大がカウンターラックを仕掛けてくることは想定していなかった?
≪平田快笙主将≫ 
「対抗戦の時からブレイクダウンに強い事は知っていたが、自分達のアタックの次のオプションを作る間に、選手たちが気を抜いたり、しっかり前を向いてないとか、球が出るだろうという安心感から気の緩みが出てしまったのだと思います。
そうなると強いチームはそういう所を狙ってくると思うので、そういうところの意識付けをもっとしていきたいと思います」