●7月8日(日)

最終日は、東芝府中体育館をお借りして、コア強化と体のバランスを意識するため、ピラティスのセッションが行われました。

ピラティスとは、呼吸法を活用しながら、主に体幹の深層筋(インナーマッスル)をゆるやかに鍛えるエクササイズで、アメリカではヨガなどと並び、非常に人気があるエクササイズです。もともとは負傷兵のリハビリテーションのためのフィットネスプログラムだったそうで、動きはゆるやかで負荷も比較的小さいため、日本でも、主に女性の美容・健康法として、近年人気を博しつつあります。

現在ATQの海外派遣選手が所属する協会の一つである、オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ協会のアカデミーでは、週に1回1時間程度のピラティスセッションがレギュラーメニューとして取り入れられ、コアの強化と体のバランスを整えるプログラムとして重要視されています。日本ではまだまだ、一部の女性にダイエットエクササイズの一つとして浸透している程度のようですが、今後、スポーツ選手のためのトレーニングメニューの一つとして注目度が増してゆくと予想されます。

上山千春インストラクターの指導でピラティスセッション開始
上山千春インストラクターの指導でピラティスセッション開始

今回は、ヨガやピラティスの指導で10年以上のキャリアを持ち、健康運動指導士などの資格も持たれる上山千春さんにお見えいただき、ピラティスの効果や特性についての説明も含めてセッションを指導していただきました。

まずは呼吸を整えることから始まり、ピラティスの原則や、その効果を意識しながら、小さなバランスボールを使い、ゆっくりと幾通りもの動きを行ってゆきます。背骨の一本一本の動きを意識しながら体をしならせてゆく動きや、コアを意識しながらバランスをとる運動などを交え、約2時間みっちりとエクササイズを行いました。ふだん外側の筋肉の強化はいやというほど行っている選手たちも、行ったことがないような動きが多いピラティスを経験し、戸惑いながらも新たな発見ができたのではないでしょうか?

インストラクターの上山さんによると、ピラティスというのはコアを強化すると同時に、「自己整体」としての機能も持ち、体のゆがみをただし、怪我の予防などにも役立つものだそうです。ただし、いわゆる筋トレのようにやった後に体の張りを感じたり、エアロビクスのように息が上がったりするものではなく、初めて経験する人には非常に分かりづらいものであることも否めないようです。そのため、一度行っただけではその効果を理解しづらいのですが、継続的・総合的に行ってゆくことで、非常に高い効果が期待できるもののようです。

まずはゆっくりと呼吸を整える
まずはゆっくりと呼吸を整える

今回この合宿で取り入れた意図も、この場でコアの強化を実現するというものでなく、選手に気付きを与え、自分なりに消化し、継続していってもらえればというものです。

セッション終了後、薫田CDからは、改めて、「知」の大切さ、己を知り、世界との差を知ることからすべてが始まるということが強調され、トニー・フィルプHPMからは「この合宿でスタッフが与えるものはあくまでもガイダンスであり、それを自分のものにできるかどうかは一人ひとりの意識次第、皆さんのさらなる飛躍を期待する」といったメッセージが送られ、今年度最後のATQアカデミー合宿が締めくくられました。

今回、施設をご提供いただきました東芝様をはじめ、4回のアカデミー合宿を通じ、各チームの皆様に多大なるご支援とご協力をいただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げると同時に、今後ともATQプロジェクトにご指導、ご協力をいただけますようお願い申し上げます。

来年度につきましても、このATQアカデミー合宿をさらにブラッシュアップして、我々の目標である世界8強進出を実現すべく邁進してまいりますので、皆様のご支援とご協力をお願いいたします。(総務:中里)

ピラティスの原則を意識しながらベイシックな動きを行う
ピラティスの原則を意識しながらベイシックな動きを行う

肩の稼動範囲を広げるストレッチ
肩の稼動範囲を広げるストレッチ

背骨の動きを意識して体をしならせる
背骨の動きを意識して体をしならせる

インストラクターから、腰や肩をぶらさず体を動かす見本が示される
インストラクターから、腰や肩をぶらさず体を動かす見本が示される

深層筋を意識して、コアを強化する動きを繰り返す
深層筋を意識して、コアを強化する動きを繰り返す

コアを意識してバランスを維持する。かなりきつい!
コアを意識してバランスを維持する。かなりきつい!

体の中の動きを意識しながらストレッチを行う
体の中の動きを意識しながらストレッチを行う

●7月7日(土)

七夕の本日は、昨日のミーティングで話しあったフェーズオプションと、ブレイクダウンスキルのセッションが行われました。

午前中は、ウォーミングアップの後、お約束のコアトレーニングを行い、前回のキャンプでも行われた、早く真直ぐな軌道を描くパスを実現するための「パンチパス」セッションが、トニー・フィルプ ハイ・パフォーマンス・マネージャーの指導のもと行われました。

パンチパススキルセッション
パンチパススキルセッション

その後、薫田CDにより、基本的なコンタクトスキルとブレイクダウンでのスキルについてのセッションが行われました。前回のキャンプでも強調された、接点でゲインラインを切る意識や、サポートプレーヤーの技術などについて、かなり詳細に指導が行われました。薫田CDの熱っぽい指導に、選手たちの表情もいやおう無しに引き締ります。

薫田CDの詳細な説明に聞き入る選手たち
薫田CDの詳細な説明に聞き入る選手たち

特に接点でいかにゲインを確保するかということについては、選手たちにも問いかけながら、理解を深めさせてゆきます。サポートプレーヤーがいかにスペースをとるか、また、常にいくつかのオプションを持ちながらなんとかしてゲインを取ることを意識しろということが、繰り返し説明されました。

午後は、昨日選手たちで話し合って決めた3つのフェーズオプションを使いながら、段階的にセッションが行われました。最初はディフェンス無しのシチュエーションから、徐々に人数を増やしてゆき、最終的にはグラウンドを広く使ったアタック・ディフェンス形式でのセッションを行いました。途中何度も、薫田CDからの指摘や、選手たち自身によるレビューを行いながらセッションを行い、最後には選手もかなりバテ気味でしたが、少しずつコンビネーションの質が上がっていきました。

練習後はプールリカバリーで体をほぐし、全メニューを終了しました。本年度最終キャンプということもあってか、選手たちは終始真剣な表情で取り組み、スキルだけでなく多くの価値観を習得しようとしている様子が見受けられました。選手同士のレビューでも真剣な意見交換がなされ、よどんだ梅雨空を払拭するような晴々とした姿を見ることができました。(総務:中里)

今回もブレイクダウンの基礎スキルの練習が行われた
今回もブレイクダウンの基礎スキルの練習が行われた

コアを使って姿勢を維持する
コアを使って姿勢を維持する

コアを使って体のバランスを保つ
コアを使って体のバランスを保つ

昨日考えたフェーズオプションを使って練習
昨日考えたフェーズオプションを使って練習

曲線的な動きやサポートを意識して練習を繰り返す
曲線的な動きやサポートを意識して練習を繰り返す

最後は2チームに別れグランドを広く使って練習
最後は2チームに別れグランドを広く使って練習

チームごとの話し合いが何度も行われる
チームごとの話し合いが何度も行われる

●7月6日(金)

今年度最後となる、第4回目のATQアカデミーキャンプが開始されました。今回は、東芝様のご好意により、府中の東芝事業所の施設をお借りさせていただくことになりました。様々な面でサポートいただいております東芝ブレイブルーパスのスタッフをはじめとした東芝の関係者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

今回のアカデミーキャンプでは、参加した選手たちに、普段なかなか取り組むチャンスの無いセッションを経験をしてもらい、「気づき」を与え、今後の成長の伸びしろを伸ばしてもらうことを目的にプログラムを構成しています。そういった意味から、初日にはランニングスキルセッションを、そして最終日にはピラティスセッションを行います。ただし、これはただ単に奇をてらったことをしようとしているわけではなく、今後、選手たちが世界と戦う上で、最低限必要になるフィットネスやスキルへの意識を高めようという意図によるものです。

初日の本日は、流通経済大学ラグビー部のランニングコーチや日本体育大学の陸上部の指導をされており、アメリカやオーストラリアでのランニングのコーチングの経験をお持ちの黒須雅弘コーチをお招きし、ランニングスキルに関するレクチャーとトレーニングを行いました。まずはじめに、これから行うトレーニングの考え方や理論を理解するために、30分程度のレクチャーが行われました。そこでは、

  • 効率性とスピード
  • 効率的な走り方
  • ランニング時のオンとオフの使い分け
  • ランニングにおけるタブー
  • ランニングスキル

などが、スライドと映像を使い説明されました。聞きなれない言葉などもあり、選手たちもやや理解に苦労している感じもありましたが、これから行おうとしているトレーニングについて理論的に説明していただくことで、より効果的なセッションが可能になったと思われます。

その後グラウンドに出て、1時間強のランニングトレーニングを行いました。非常にシンプルなトレーニングの繰り返しですが、特に踏み込む足のインパクトの強弱を意識してランニングをコントロールする練習を重点的に行い、いかに効率的な走り方を実現するかということを学びました。普段のランニングではあまり意識したことが無いようなことを行い、選手たちも戸惑いがちでしたが、何か一つのヒントを掴んでくれたのではないかと思います。

夜は、薫田コーチングディレクターが中心になり、明日行うスキルセッションのための基本的な考え方の説明や、その他選手たちに期待する心構えなどが話されました。今回も前回のアカデミーに引き続き、ブレイクダウンスキルとフェーズオプションのセッションを行う予定ですが、フェーズストラクチャーやディフェンスのゲートを開く方法、サポートプレーヤーのコースどりなどについて、基本的な考え方が説明されました。

また、世界と戦うという観点から、改めてコア(体幹)の強化の重要性や「心・技・体」のうち、まずは「体」つまり体力を強化することの重要性とその前に「知」、つまり、自分自身や世界を知り、自分に何が必要かを学び、それを実践することの必要性なども、メッセージとして語られました。

その後、明日の練習に向けた選手だけのミーティングが行われ初日のスケジュールは締めくくられました。明日、これらの内容をグラウンドで実践します。(総務:中里)

踏み込む足のインパクトでランニングをコントロールする
踏み込む足のインパクトでランニングをコントロールする

縄跳びを使い、ランニングの感覚を掴む
縄跳びを使い、ランニングの感覚を掴む

様々なパターンで練習が繰り返された
様々なパターンで練習が繰り返された

フェーズストラクチャーについて説明する薫田CD
フェーズストラクチャーについて説明する薫田CD

リコーブラックラムズの伊藤選手を中心に選手だけのミーティングが行われた
リコーブラックラムズの伊藤選手を中心に選手だけのミーティングが行われた