女子セブンズ日本選抜
香港女子セブンズ レビュー

香港スタジアムでのカップ決勝戦に進出
カナダに惜敗で準優勝。五輪予選へ手応え

女子セブンズ日本選抜チームが3月26、27日の香港女子セブンズに参加。
初日のプール戦でパプアニューギニア、チュニジア、オランダを破った日本は、2日目のカップ準々決勝でアルゼンチン、同準決勝で香港も勝って、見事にカップ決勝戦に進出。

香港スタジアムで行われた決勝戦では、約3万人の大観衆ものもとでのプレーとなって「少し浮ついたところがあった」(中村知春主将)という緊張感からのミスが響いて12―24でカナダに敗れて、準優勝で大会を終了した。

(text by Kenji Demura)

香港スタジアムで行われたカップ決勝゙に勝ち進んだ女子セブンズ日本選抜。五輪出場権獲得に向けて収穫の多い大会となった
photo by RJP Kenji Demura
前半6分の中村主将のトライなどで初戦パプアニューギニア戦は43-7で快勝スタート
photo by RJP Kenji Demura

「いまのメンバーの現状を見極めたい」(浅見敬子ヘッドコーチ)
リオデジャネイロ五輪予選を11月に控え、サクラセブンズとしてはそんな意図もあった日本選抜としての香港女子セブンズ参加。
戦術的には、「これまでは狭いレンジでも前に出ることをやってきたが、少しパスレンジを広くしようとしている」(同HC)と、より広がりのあるスタイルも模索する中での戦いでもあった。

初戦のパプアニューギニア戦は開始1分に小出深冬を皮切りに計6トライを重ねて43―7で大勝。
ただ、「調整からうまくはまってないというのはあった」(中村主将)という通り、途中、簡単にトライを許したり、シンビン退場者も出るなど、課題も露呈する初戦となった。

「前に出ずにパスに逃げたところがあった。それを修正するためにチュニジア戦ではまずしっかり前に行こうと言った」(浅見HC)

2戦目のチュニジア戦でも、キックオフからいきなりマテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェが先制トライを奪うが、前半4分に中村主将が足を痛めて退場。
大黒柱不在が響いた面もあったのか、先制トライの後はむしろチュニジアペースで試合は推移。
嫌な雰囲気になりかけたチームを救ったのは中村主将に代わって途中出場した鈴木陽子。
150センチの小兵ながら「体をバチバチ当てて、ブレイクダウンに2人目で入るシーンもかなりある」と浅見HCも高く評価するファイティングスピリットあるプレーでチームを牽引。
前半終了間際に自らトライを奪って主導権を取り戻す活躍ぶりを見せた。
落ち着きを取り戻した後半は2分に鈴木実沙紀、4分に山口真理恵、終了間際に桑井亜乃とトライを重ねて、最終スコアは33―0。

プール戦最終戦の相手は、東京セブンズのエキシビションマッチでの対戦が決まったオランダ。
「体の大きな相手なので、しっかり体を使って倒して、運動量で勝負」(浅見HC)というのがポイントだったが、立ち上がりオランダに攻め込まれても慌てずに粘りのDFでトライを許さず、逆に2分にペナルティキックから攻めて山口が先制トライ。
4分にも、チュニジア戦でのケガが大事に至らず先発出場していた中村主将のトライで12―0でリードするが、6分にオランダにトライを許して5点リードで前半終了。
サイドが入れ替わった後半は劣勢一方となり、4分には中村主将がシンビン退場になる大ピンチ。
6分にオランダにトライを許して同点に追いつかれたが、終了間際に途中出場していた山田怜がPKからの思い切ったランニングで値千金の決勝トライを奪って19―12で振り切った。

「結構、前も見ることができていて、目の前の相手ディフェンスがいなくなったので、自分かなと思って行った。せっぱつまっていたら、突っ込んでいたと思う。常に冷静にプレーしようと心がけたのが、うまい感じで出た」(山田)という落ち着いた判断が光った。

約3万人の大観衆の中でのプレーも経験

「粘り切れた。流れがあっちに行ったが、落ち着いてプレーしてくれた」
自らのシンビンが窮地に陥らせた面もあった中村主将もチームの成長を実感したオランダ戦勝利から一夜明けた大会第2日の初戦。
カップ準々決勝で対戦したのはアルゼンチンだった。

いきなり試合開始のキックオフレシーブでミスが出て、アルゼンチンに先制トライを許す最悪の立ち上がり。
その後も自陣でのディフェンスが続いたが、粘り強く守った後、山口が外側のスペースを走り抜けて1トライを返した後は、前半3分、4分、6分、後半0分、3分、5分、7分とトライを重ねて43―5で完勝した。

続く香港のカップ準決勝は「試合前も力んででいたが、何とか最初の2本で逃げきったのは評価できる」(浅見HC)という苦しい状況でも勝ち切るたくましさも見せて10―5。

カップ決勝戦のみ香港スタジアムで行われる、女子選手にとっての夢の舞台へと日本チームとして初めて勝ち進むことになった。

来季のHSBCセブンズワールドシリーズ(SWS)のコアチーム入りを目指す昇格大会の第1ラウンド終了後、SWSメイントーナメントが始まる前に組まれた香港女子セブンズのカップ決勝戦だったが、金曜夜ということもあってスタンドは8割がた埋まっていた。
まさに、緊張するなという方が無理と言っていい状況。

「自分たちの声が聞こえなかった」(中村主将)という大歓声の中、今季の女子ワールドシリーズで2位につけるカナダに対して、いきなりキックオフのミスでノーホイッスルトライを許す最悪の立ち上がり。

「カナダは大きくて、速いが、自分たちがやりたいことやれれば勝てる相手」(浅見HC)という感触もあったが、いきなりミスからの失点で浮き足立った面もあった日本は、勢いに乗って直線的に攻めてくるアタックを止められずに0分、2分、4分、5分と前半だけで失4トライ。
日本も前半1分に中村主将、後半4分に横尾千里がトライを返すが、12―24で力負けし、カップ優勝は惜しくも逃した。

「競った試合で勝ち切れたし、香港スタジアムでの決勝も経験できた。これからは五輪予選に向けて質の部分にこだわっていきたい」(中村主将)

昨秋、女子セブンズワールドシリーズのコアチーム昇格大会で敗れた場所でもある香港での戦いだっただけに、特別な思いで臨んだメンバーも多かった今大会。
完全なるリベンジこそ果たせなかったものの、五輪予選へ向けて収穫の多い大会となったことは間違いない。

東京セブンズ時に対戦するオランダには終了間際の山田の決勝トライで19ー12で競り勝った
photo by RJP Kenji Demura
チュニジア戦でトライを上げる鈴木陽。激しさを増したプレーぶりで高い評価を得た
photo by RJP Kenji Demura
カップ準々決勝のアルゼンチン戦でトライを決める兼松。積極的に前に出るプレーで数多くのチャンスをつくった
photo by RJP Kenji Demura
カップ準決勝の香港戦は竹内の先制トライなど2トライで逃げ切る勝負強さも見せた
photo by RJP Kenji Demura
香港スタジアムの大観衆の下でプレーしたことも若い選手たちには素晴らしい経験になったはず
photo by RJP Kenji Demura