“W杯前哨戦”惜敗も若手の成長に手応え
ペナルティの多さが致命傷になり逆転負け

米国太平洋時間の24日(日本時間25日)、アメリカ西海岸カリフォルニア州サクラメントでワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ(PNC)2015、日本—アメリカ戦が行われ、日本は2本のトライなどで後半14分までは18—9とリードしたものの、終盤アメリカに1トライ、3PGを重ねられて18—23で敗れた。

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W杯で直接対決するアメリカとの前哨戦に若手中心で臨んだ日本代表。逆転負けも若手の成長には手応え
photo by RJP Kenji Demura

 

PNC初戦のカナダ戦とは先発メンバーを8人入れ替えて臨んだラグビーワールドカップ前哨戦。
「アメリカに我々の情報をまったく与えないような戦いをしていく」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ)
そんなゲームプランの影響もあったのだろう。

前半の日本はボールを保持してアタックする時間が厳しく、ディフェンスばかりの時間が続いた。
それでも、前半の40分間をノートライに抑えた通り、若いメンバーも多かった日本が守りを崩されて、パニックになるようなことはなかった。
「選手は前半ボール持たずに、いい我慢を続けてくれた」(PR畠山健介ゲームキャプテン)

相手のミスに助けられた面もあったが、今年、日本代表として初めての先発出場だったSH内田啓介が「しっかりディフェンスすることで相手が疲れてくれればいいと思っていた」と語った前半の思惑は、チーム全体に浸透したものでもあっただろう。

その内田が「ボールポゼッションとしては20%対80%くらいだった」というとおり、圧倒的にアメリカにボールを支配されたにも関わらず、前半許した失点は3PGによる9点のみ。

前半36分にSO立川理道がこの日2本目となるPGを決めて6−9と追い上げた後のキックオフでの相手のノックオンで掴んだマイボールスクラムのチャンス。

「前半から行けてた」(PR稲垣啓太)というしっかりしたスクラムからBKに供給されたボールはSO立川からCTB山中亮平、逆サイドに走り込んできたWTBカーン・ヘスケス、そしてFB藤田慶和へと渡り、敵陣22m付近の左タッチライン際でトップスピードになったWTB山田章仁へ。

「走り切れた部分もあった」
そんなふうに手応えを語った左WTBがコーナーフラッグ際に飛び込み、2点をリードしての折り返しとなった。

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前半終了間際のWTB山田のトライ。日本のテンポいい攻めにアメリカDFがタジタジになるシーンも少なくなかった
photo by RJP Kenji Demura

 

「お互いRWCでは全く別のチームに。前進し続けることが重要」(畠山ゲームキャプテン)

サイドが変わった後半も前半最後につかんだ流れそのままに、日本がテンポのいいアタックを続けた。

確実に点差を広げるために狙ったSO立川のPGは外れたが(後半3分)、8分にはスクラムを押し込んでNO8ホラニ龍コリニアシが押さえ、今度は立川のゴールも決まって、日本のリードは9点に。

確かにこの日は多くの若手が起用されていたが、ここまでは経験不足を露呈する場面もなく、いったんリードした日本がアメリカに流れを渡すことになる要因はほとんどないように思われた。

「ペナルティが多かった。反省点はそこだけ」(NO8ホラニ)

後半39分には、ラックに強引に突っ込んでいったFLマイケル・ブロードハーストが危険なプレーによりシンビン処分を受けたりと、レフリングに日本が対応しきれなかったのは事実だった。

後半15、21、24分とアメリカSOのAJマクギンティに3PGを加えられ同点に。さらに、27分にはモールを押し込まれて決勝トライを奪われて、18—23で逆転負けを喫した。

「もうひとつトライを取っていたら、日本は勝っていたはず。そう難しくないPGも外したのに対して、相手は確実にPGを決めた。クロスゲームではチャンスを得点に変えることが重要だということ」

「タッチジャッジは”デイオフ”だった」とジョークを飛ばしながらも、ジョーンズHCは後半9点差にリードしていながら逆転された要因をそう語った。

もちろん、「勝利」は求められていたが、RWCで対戦するアメリカに対して情報を与えないで戦うことが優先された一戦。
同ヘッドコーチは多くの若手が貴重な経験を積んだことの収穫を強調する。
「彼らにはとてもいい経験になっただろう。今までで一番重要な試合になった選手も多い。
内田、山中、村田は、本当のテストラグビーを味わえた。稲垣も長い時間プレーできたのはここ3ヶ月で初めて。
松島は13番として成長しているし、藤田も15番でいいプレーがあった。とてもポジティブなことだ」

「お互いワールドカップでは全く別のチームになっている。もっともっとレベルアップしていると思う。この先も前進し続けることが勝利につながる。ブレイクダウン、ボールキャリー、セットピースすべての局面でどうやったら前に出られるか、ゲインラインを切っていけるかを考えてやっていきたい」

“前哨戦”に敗れたショックなど微塵も感じさせない表情で、チーム全員の気持ちをそう代弁してくれたのはPR畠山ゲームキャプテン。

RWCに向けて大きく前進するため貴重な経験となる「現状のPNCでは一番強いチーム」(ジョーンズHC)フィジーとの対戦は当地時間の29日(日本時間30日)に予定されている。

text&photo by Kenji Demura

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攻守に落ち着いたプレーぶりが光ったCTB山中。成長ぶりをアピールした
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遊園地に隣接したスタジアムで行われたアメリカ戦。通常のテストマッチとはひと味違う雰囲気が溢れていた
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