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第55回日本ラグビーフットボール選手権大会兼TL優勝決定トーナメント 準決勝がヤンマースタジアム長居で1万人を超す観客が見守る中、2試合が行われた。
第1試合はパナソニック ワイルドナイツ(ホワイトカンファレンス1位)対トヨタ自動車ヴェルブリッツ(レッドカンファレンス2位)。僅差のゲームとなった。トヨタが前半7分にSOライオネル・クロニエのゴール前30m中央のPGで先制したが、パナソニックは13分にゴール前中央ラックから出たボールをSO山沢拓也から2人を飛ばして左に開いていたWTB福岡堅樹へロングパス。これが見事に決まってトライを奪い、GKもSO山沢が決めて7-3と逆転に成功した。36分には自陣から積極的に仕掛けCTBディグビ・イオアネがトライ。パナソニックが14-3とリードして前半を終えた。
後半先制したのはパナソニック。9分、SO山沢がPGを決め17-3とし引き離しにかかる。このままパナソニックが試合を優位に進めると思われたが、トヨタは、後半15分から入替えで入ったPR伊尾木洋斗がスクラムでプレッシャーをかけ、徐々にペースをつかむ。16分にWTBヘンリージェイミーが巧みに相手をかわしトライを挙げ8-17と追撃を開始。25分にはSOクロニエがPGを決めて11-17として食らいつき、その後は一進一退の見応えのある攻防が続いた。
この試合を振り返ると、トヨタの前半終了間際のラインアウトからの得点チャンスを含む2回のミスとパナソニックのディフェンス力の高さ、得点チャンスでの集中力の差が勝敗を分けた。
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
ジェイク・ホワイト監督
「最後まで選手たちが戦い続けてくれたこと、私の最初のシーズンにセミ・ファイナルでゲームができたことを誇りに思う。この試合ではトヨタがどれだけ飛躍したかを感じていただけたと思う。10年間のトップリーグを振り返るとパナソニックとサントリーが常に上位にいて、トヨタでは初のプレーオフ出場というメンバーが大部分だったが、最後はパナソニックの方が逆にプレッシャーを受けているというとても奇妙な状況だった。レフリーのコールが一つ二つ違ったらさらに大きなプレッシャーを受けたと思う。パナソニックはとても良いチームである。トヨタもきちんとしたスクラムのできるチームであるので、来年もさらに楽しみにしてほしい」
姫野和樹キャプテン
「率直に言ってとても悔しい。ポジティブな点がたくさんあったゲームである。大切な場面でミスをしてしまったところもあったが、80分間選手の皆はとてもポジティブに戦ってくれた。レギュラーシーズンに49-16で敗れたパナソニックに対してこれだけ善戦できたことでチーム、自分自身の成長を感じられた。ただし、まだ3位決定戦が残っているのでしっかりと準備して来シーズン以降につなげていきたい」
―今シーズンのチームの成果をキャプテンとして何点でどう評価するか?
姫野和樹キャプテン「50点です。キャプテンとしての経験も少なくメンバーには助けてもらってばかりだったが、ジェイク(監督)をはじめ皆にサポートしてもらってやっと乗り切れたシーズンだった。ただジェイクのおっしゃるとおりキャプテンとしてはチームを勝たせないといけないし、そういった意味ではまだまだだった。」
―まだゲームは残っているが来シーズンに向けての目標は?
ジェイク・ホワイト監督「今年同様に優勝することが目標で変わりはない。来シーズンは今よりも良い成績を残したい。そしてここにいるメンバー達と同じで優勝したい。言い訳無用ということで、ハードワークそしてワン・チームで進むというシーズン初めに自分たちで言ったことを体現して行きたい。トヨタとしては選手やチームをさらに向上してくれる人材を招いていきたい。荒木香織さんにサイコロジストとしてチームに参加いただいているが、この結果には喜んでくれていると思う。去年と同じメンバーでも勝てるという思いを持ってここに居るということで、それがとても前向きのことだと思う。」
姫野和樹キャプテン「ジェイクと同じで優勝することが目標で、今年敗れた3チームには必ず勝ちたい。」
―(パナソニックの)ポーコック選手のジャッカルは実際にプレイしてみてどう感じたか?
姫野和樹キャプテン「彼は感覚的にボールを取れるところを知っていて、取れると思うと必ず絡んでくるし、逆に取れないと思ったら入ってこない。絡んだ後も地面に張り付いているようにしつこくて、簡単にはがせないという印象は受けた。それは自分も見習うべき点だと試合を通じて学んだ」
ジェイク・ホワイト監督「ポーコック選手は世界でも有数のプレーヤーで、彼がいるかいないかで勝ち負けも決まってくる。ブレイクダウンやキャリー時の判断も素晴らしい。トヨタの選手もそういった選手に試合中適応していかなければならない。また対応できるように着実にレベルアップできている」
パナソニック ワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「まずは決勝戦に進出できたことを喜びたい。率直な感想としては予想していたよりも厳しいゲームになった。ただしこれがまさにプレーオフだと思う。結果として我々にとって大切な経験になった」
デービッド・ポーコックゲームキャプテン
「選手としては。トヨタ相手にはこのような厳しい内容なると予想していた。今日の試合をしっかりとレビューして、決勝に向けて準備して行きたい」
―良かったところ、悪かったところのあるセットプレーについての評価は?
ロビー・ディーンズ監督「技術的な面があった。試合全般についてはある程度フラストレーションのたまる内容ではあったが、それは両チームがこの一戦にすべてを賭けて戦っているプレーオフの性質だと思っている。観客の皆さんには期待されていたスペクタクルな試合はお見せできなかったが、厳しくとても良いゲームは見ていただけたと思う」
―ブレイクダウンの難しさはどういったところだったか?
デービッド・ポーコックゲームキャプテン「両チームともブレイクダウンにプレッシャーを与えあった試合だったし、その結果ブレイクダウンでボールを奪ったり、逆にペナルティを与えてしまったりというというゲームだった。ただ今日の試合をきちんと見直して修正して行かなければならない」
―接戦を分けたトヨタとの違いは?
ロビー・ディーンズ監督「トヨタにとってこの試合で重要だったのは、僅差で試合を進めていくことだったと思う。それをきっちりやられて腕相撲のような厳しい試合となった。デービッド・ポーコックの存在も大きかったが、それ以上に、彼一人ではなく二人以上で接点には対応できていた。序盤に我慢強く対応すべき時に焦ってしまった点もあったが、今日の試合で言えば若い山沢のファンタスティックなプレイは称賛に値する」
―トヨタから受けるであろうプレッシャーはどう想定していたか、またそんな中で決勝に向けた収穫は?
ロビー・ディーンズ監督「今日のような厳しいプレッシャーはまさに我々としては覚悟していた。SOのクロニエの活躍も我々を追い詰めた。まさにこれがプレーオフのラグビーであり、ゲームの中で修正すべきことを見つけていくことも必要である。選手にとっては素晴らしい経験になった」
―決勝の相手になるサントリーとヤマハのそれぞれの印象、戦う上でのポイントは?
ロビー・ディーンズ監督「サントリーが勝てば昨年の再戦となるし、昨年の試合は我々にとって一つのエピックモーメントだった。こういったファイナルの舞台をよく知って戦ってきた相手なので、お互いのことをよく知っているチーム同士の戦いとなる。ここから先はフィジカルではなくメンタルの問題になると思う。チームのエナジーの部分はここから先は問題にはならない。今日以上に実際、素晴らしいラグビーを見ていただけると思う」
(文責:大阪府協会:灘 英世、石川 悟、丸井康充)