「第51回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

神戸製鋼コベルコスティーラーズ 5-46 パナソニック ワイルドナイツ

【準決勝/2014年3月1日(土) /東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場】
パナソニック ワイルドナイツがファイナル進出へ

今季2冠を目指すトップリーグ覇者のパナソニック ワイルドナイツ、対するは2回戦のヤマハ発動機ジュビロ戦でノーサイド直前に劇的な逆転勝利を収めてこの準決勝に駒を進めた神戸製鋼コベルコスティーラーズ、果たして決勝戦に進むのはどちらか? 注目の一戦が小雨の止んだ駒沢オリンピック公園陸上競技場において、神戸製鋼のキックオフで開始された。

両チームは開始早々、激しい攻防を見せるが、パナソニックはSOベリック・バーンズの好走をきっかけに、相手ゴール前に迫る攻撃で4分、相手ペナルティを誘い、SOバーンズがほぼゴール正面のPGを丁寧に決め先制する(0-3)。さらに11分、パナソニックは相手陣10m付近で得たPGを、SOバーンズが力強く決める(0-6)。神戸製鋼も、得意のラインアウトモールで攻め込むなど反撃するが、相手の強い圧力と自らのミスにより攻撃を継続できない。

パナソニックは、21分、SOバーンズがハーフライン付近で蹴ったハイパントをWTB北川智規が見事に取って大きくゲイン、続くラックから左にバックス陣がワイドに素早く展開、最後はWTB山田章仁からパスを受けたCTB霜村誠一が抜け出し、この試合初トライ(ゴール成功0-13)。さらにパナソニックは、自陣ゴール前で相手がこぼしたボールをSOバーンズが前に蹴り出し、フォローしたWTB山田が相手陣10m付近から蹴り込みながら相手ゴールを目指し激走。必死に追走する相手WTB大橋由和より一瞬早くボールにタッチするも、インゴールノックオンとビデオ(TMO)判定される。辛くも窮地を脱した神戸製鋼は、36分、パントを蹴ったSO正面健司が相手陣22m付近で自ら拾い、快走してトライ(5-13)、突き放されまいとする。

後半開始早々の3分、優位に試合を進めるパナソニックは、相手ゴール前でラックサイドを激しく突いたNO8ホラニ龍コリニアシが渾身のトライ(ゴール成功5-20)。続く7分には、キック合戦の中、NO8ホラニが自陣でボールをキャッチした後、WTB北川が60m以上を一気に駆け抜ける圧巻の独走トライ(ゴール成功5-27)。さらに、19分、神戸製鋼ゴール前での相手パスをWTB山田が右足を伸ばしてカット、前にバウンドしたボールを自ら拾ってトライ(ゴール成功5-34)。力強い試合運びを見せるパナソニックは、31分、相手ゴール前10m付近でのラインアウトモールを怒涛の勢いで押し込み、後半途中出場のFL若松大志がトライ(5-39)。37分には、ラックから相手ボールを奪取すると、SOバーンズ - NO8ホラニ - CTB JP・ピーターセンと繋ぎ、最後はWTB北川がゴール右隅にとどめのトライ、SOバーンズが難しい角度からのゴールも決める(5-46)。

神戸製鋼は、相手の組織化された隙のない防御によって単調な攻めを強いられ、ミスやターンオーバーもあり劣勢を最後まで打開することができなかった。一方、快勝したパナソニックは、スーパーラグビーに参戦中のHO堀江翔太キャプテンとSH田中史朗に代わって先発出場したHO設樂哲也、SHイーリ ニコラスが共に存分に力を発揮、厚い選手層と底力を見せつけて、日本選手権決勝へと駒を進めた。(小林吉文)

会見リポート
 

神戸製鋼の苑田ヘッドコーチと伊藤バイスキャプテン

神戸製鋼コベルコスティーラーズ

○苑田右二ヘッドコーチ

「素晴らしい環境でラグビーが出来たことを感謝致します。こういうかたちでシーズンを終えることは非常に悔しいですが、私の力不足であったと思います。一年間本当に有難うございました」

──パナソニック戦でイメージしていたゲーム運びは?

「(相手は)ゲームから約3週間空いていますが、リーグ戦では初めの15分で17点取られていたので、初めの15分を意識させました。アタックに関しては、前半1つのオプションしか出せず、相手のディフェンスに的を絞らせてしまいました」

──パナソニックとサントリーとの距離はどういう点に?

「ディフェンスが良かったですが、2人目のボールキャリアが遅れたため球出しが全部スローダウンになってしまい、我々の意図したアタックが出来ませんでした。これを当たり前のように80分間できるのがパナソニックやサントリー。(自分たちは)未だ劣っていると改めて感じています」

○伊藤鐘史バイスキャプテン

「パナソニックさんはチャンピオンチームらしく、素晴らしいディフェンスでした。SO(正面選手)からのFWが絡んだアタックでしたが、表・裏の攻撃が無く、相手にディフェンスの的を絞り易くさせてしまい、勢いに乗らせてしまいました。オフをはさんで来季巻き返せるように頑張ります」

──パナソニック戦でイメージしていたゲーム運びは?

「キックの蹴り合いになった時に、カウンターするところでFWの戻りが遅かったです。ラックサイドが空いていたので、もう少しピックアンドゴーで仕掛けたかったのですが、できませんでした」

──パナソニックとサントリーとの距離はどういう点に?

「今日は点数差がついてしまいましたが、自分たちも出来ると思っています。次のプレーを予期してどう動くかを、15人一体が意識して動く組織力を作って行きたいです」

──昨年よりも試合の編成がよりハードになっていないか?

「日本選手権よりはトップリーグのシステムが変わったことで、常にタイトな試合が1年間続いて気が抜けません」

 

パナソニック ワイルドナイツの中嶋監督と北川バイスキャプテン

パナソニック ワイルドナイツ

 

○中嶋則文監督

「お疲れ様でした。今日の試合はトップリーグプレーオフから約3週間空いたため、試合感覚をどれだけ戻せるか少し不安はありましたが、前半からパナソニックがやりたいラグビーを選手はしっかりと理解してやり続けてくれました」

──今日のディフェンスについて?

「前半はゲインされるケースもありましたが、ラインを上げようとの意思は確認できました」

──スーパーラグビー参戦中で不在の主将HO堀江選手、SH田中選手の穴を埋めてくれたHO設楽選手とSHイーリ選手については?

「2人とも十分に役目を果たしてくれました。堀江と田中がいると出番が少ないが腐らずにやってくれました」

──決勝(東芝戦)に向けて?

「こういう(サントリー相手に1点差での勝利に)勢いのついた東芝さんは非常にやり難い相手だと思います。残り1週間で自分たちのプレーができるかにフォーカスを当て、結果につなげていきたいです」

○北川智規バイスキャプテン

「今日の試合は前半我慢する時間帯があって、我慢をしきれなく無理にこじ開けようとして相手ボールしてしまうなどミスもありましたが、後半はうまく修正できて自分たちがやりたいラグビーができました。(前泊した)ホテルの部屋が狭く感じましたけど、ご飯がめちゃくちゃ美味しかったです。プラマイゼロでちょうどいい感じです(笑)」

──今日のディフェンスについて?

「神戸製鋼さんはSO(正面選手)が攻めてくることが多いので、チーム内で注意するようにしました」

──スーパーラグビー参戦中で不在の主将HO堀江選手、SH田中選手の穴を埋めてくれたHO設楽選手とSHイーリ選手については?

「設楽はパワーも走力もあり、堀江とタイプは違うが良く頑張ってくれました。(イーリ)ニコラスは(普段の練習から)田中とコミュニケーションを取っていて、田中も親身になって教えていました。結果が出せてよかったです」

──決勝(東芝戦)に向けて?

「絶対に負けられません!」