「第51回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

サントリーサンゴリアス 24-25 東芝ブレイブルーパス

【準決勝/2014年3月1日(土) /大阪・近鉄花園ラグビー場】
春霞を思わせる曇り空のもと近鉄花園ラグビー場で行われる公式戦最終試合。レギュラーシーズンセカンドステージでの対戦では、サントリーサンゴリアスが30-29の1点差で東芝ブレイブルーパスを下している。

前半、風下から東芝のキックオフで試合が開始される。先取したのはサントリー、22mライン付近まで攻め込み、右中間のラックからショートサイドに展開、CTBニコラス ライアンからSO小野晃征へインサイドにスイッチパスすると東芝のタックルミスにも助けられ、最後はFB有賀剛が右隅にトライ、ニコラスが難しい位置からのゴールを決め7-0と先手をとる。東芝は自陣に攻め込まれるもディフェンスが耐え、キックで徐々にサントリー陣内に攻め込み、11分15m中央で得た反則からSH小川高廣がPGを決め7-3とする。
この後、両チームとも1PGを加え10-6で迎えた前半の終盤、サントリーは31分ゴール前15m左中間スクラムから右展開、クラッシュ後ラックにし、振り戻して左ラックサイドをFL6番ヘンドリック・ツイが走り抜け中央にトライ(ゴール成功)。東芝はサントリーの固いディフェンスにショートキックを使ってラインの裏側へ出ようと試みるが実らず、17-6とサントリーのリードで前半を終える。

後半、東芝の巻き返しが期待される中、先取したのはまたもサントリー。開始早々の2分、ゴール前15mで得た東芝オフサイドの反則からSHデュプレアが速攻を仕掛け一気にポスト右にトライ (ゴール成功)、24-6と引き離しにかかる。しかし、東芝は前半から続くスクラム・モールでの優位を背景に、あきらめることなくアタックを繰り返し、16分ゴール前5m左ラインアウトモールからFLスティーブン・ベイツが抜け出し、この試合初めてのトライを返し(ゴール成功)24-13と詰め寄る。
このトライで東芝は息を吹き返したかのように反攻にうつる。SOに入ったWTB廣瀬俊朗が、自陣から有効な2本のキックでゴール前まで迫り、19分にはグラウンディングを見極めるTMO判定に持ち込む。これは惜しくも認められなかったが、この後も東芝はサントリーをゴール前に釘付けにし、21分にスクラムでの反則でペナルティートライを得、24-20(ゴール成功)とすると、スタンドからは終盤のスリリングな攻防を期待して大きな歓声が沸き起こる。
サントリーは、ハーフ団をSH日和佐篤、SOトゥシ・ピシに入替え、試合の流れを引き戻しにかかる。しかし、東芝の勢いは止まらず、25分ゴール前5m左ラインアウトから東芝得意のモールを押し込み、FLベイツが2本目のトライを挙げ、24-25とついに逆転に成功。
緊迫の試合もいよいよ残り5分に入り、両チームとも必死の攻防を続ける。40分サントリーは22mライン左サイドで相手反則のラストチャンス。CTBニコラスが慎重にPGを狙うが、逆風の中キックはポスト左に僅かに外れ、無情のノーサイドホーンが鳴り響く。

東芝ブレイブルーパスは24-25の1点差でレギュラーシーズンの雪辱を果たし、7シーズンぶりの日本選手権決勝進出を決めた。一方、惜しくも敗れたサントリーは4連覇を逃すこととなった。

会見リポート
 

サントリーサンゴリアス

○大久保直弥監督

「今日はありがとうございました。非常に残念な結果で終わってしまいました。今シーズン無冠で終わったという現実は真摯に受け止めて、次のステップにつなげていければと思っています」

──後半、急に流れを失ってしまった原因は?

「気が緩んだとか油断したというよりも、現実的には終始スクラムでは劣勢でしたし、ここ一番のラインアウトもしっかり取れなかったなど、相手にチャンスをこちらから与えてしまいました。このレベルの試合では、一度失った流れは簡単には取り返せません」

──スクラムが終始劣勢だった要因は?

「東芝さんの1番-8番まで前に出ようという意識が我々よりもはるかに高かったし、体重が重いとか軽いとかではなく塊で前に出ようとする意識、本当に10cm-20cmの話ですが、そこにこだわったチームとこだわらなかったチームの差だと思います」

──トップリーグでの接戦を踏まえての今日のゲームプランは?

「東芝さんとのゲームはいつもブレイクダウンとコンタクトがキー。東芝さんは我々と同様にある程度ボールをキープしてきますので、ディフェンスで規律を守って、そこから自分達のアタックにつなげようと考えていました。前半にはディフェンスは機能していましたが、後半の流れを一度失ったところでパニックに陥ってしまって、自分達の規律を自分たちで失ってしまいました。前半と後半はまったく違うチームでした」

○真壁伸弥キャプテン

「今年の目標を一つも達成することができませんでした。この悔しい思いをしっかりと受け止めて、次のシーズンは必ず取り戻すのだというハングリーさを皆さんにお見せできるよう、頑張っていきたいと思っています。本日はありがとうございました」

 

東芝ブレイブルーパス

○和田賢一監督

「本日は雨の中にも関わらず、多くの方々に来ていただきありがとうございます。試合は最後のPGの合否で決まるという接戦でしたが、お互い意地を出してこだわりの出たゲームではなかったかなと思います。最後はサントリーさんのPGが入らず我々が勝ったというゲームでありましたが、その前の過程の中で選手が一つ一つのプレーにこだわりプライドを持って戦ってくれたことが、この結果になったと思っています。次のファイナルに向けては、パナソニックさんに今年度は3回負けているので、しっかり準備して勝つラグビーをしたいです」

──前半劣勢の中でのハーフタイムでの修正点・指示は?

「ブレイクダウン自体は支配できていましたが、ただフェーズを重ねれば重ねるほど東芝のアタックのセットアップが遅く、SHの玉出しが少しずつ遅れてきていたので、もう一度セットアップを早くしよう、そうすれば必ずスペースは生まれよりボールを動かせると。それと、エリアをしっかり取って攻め急がないこと。この2点の指示をしました」

──今週の選手起用とディフェンスについては?

「ボールを前に運べる選手、ナチュラルにボールをスペースに運べる選手ということで選手を起用しました。よりボールを動かすという戦術・戦略の上で決めました。ディフェンスに関しては、前週のトヨタ戦ではかなり抜かれる場面が多かったので、今週は前に出るということを意識し修正してきました」

○リーチ マイケルキャプテン

「今日は雨の中、多くの方に会場まで来ていただきありがとうございます。今週はメンバー外の選手がすごくいい準備をさせてくれました。前半はなかなかいい展開にできませんでしたが、後半は風上の中でスコアエリアに行くことを意識し、そこに入ればスコアできたので東芝のやりたいラグビーをすることができました。来週のパナソニック戦に向けては、もっといい準備をして日本一を獲りたいと思います」

──前半劣勢の中でのハーフタイムでの修正点・指示は?

「前半もFWがボールを持つと必ずゲインできていたので、敵陣に入ってプレーをしようという意思統一をしました」