「第51回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

ヤマハ発動機ジュビロ 26-28 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

【2回戦/2014年2月23日(日) /東京・秩父宮ラグビー場】
第51回日本ラグビーフットボール選手権大会2回戦が東京・秩父宮ラグビー場にて行われた。
天皇皇后両陛下が秩父宮ラグビー場に行幸啓になり、国民体育大会以外での日本協会主催の公式戦では初めてのご観覧となった。ともに前週の1回戦で大学生チームに勝利したトップリーグ同士の対戦となり、日本ラグビーのシーズン最後を飾る絶好の舞台での好ゲームが期待された。前半、神戸製鋼のキックオフで試合開始。先制したのは神戸製鋼。2分、ヤマハ発動機陣22m付近で得たPGをCTBクレイグ・ウィングが確実に決め0-3。11分にも、ヤマハ発動機陣中央付近からCTBウィングが約30mのPGを決めて0-6とリード。
前半反則が多く、なかなかリズムに乗れなかったヤマハ発動機であったが33分、神戸製鋼陣22m右中間付近で得たペナルティーから、FB五郎丸歩がPGを決め3-6と詰め寄る。直後の35分、ヤマハ発動機陣22m中央付近での反則から神戸製鋼CTBウィングにPGを決められ3-9とされるも、36分ヤマハ発動機はFB五郎丸歩のハイパントからチャンスをつくり、最後はこぼれ球をを上手くキャッチしたPR山本幸輝が走り切り右中間にトライ、ゴールも成功し10-9とリードして折り返す。

後半開始前、天皇皇后両陛下がご到着され、場内アナウンスが流れた後、ヤマハ発動機のキックオフで後半開始。6分、神戸製鋼の反則で得たPGをFB五郎丸歩が決め13-9とする。しかし、BKの決定力で勝る神戸製鋼は、12分にヤマハ発動機陣22m付近でのラックサイドから右に展開。最後はWTB今村雄太が右中間にトライ(ゴール×)、13-14と再び逆転。
攻めるヤマハも18分、神戸陣ゴール前のラックサイドから、FLモセ・トゥイアリイの豪快な突進から左中間にトライ。ゴールも成功し20-14とヤマハ発動機が再逆転。更に23分、神戸陣10m右中間付近で得たPGをFB五郎丸が決め23-14とリードを広げる。
粘る神戸製鋼も29分、ヤマハ発動機陣からの連続攻撃で左に展開、最後はFB濱島悠輔が左中間付近にトライ。SO正面健司のゴールも成功し23-21と詰め寄る。
ヤマハ発動機も33分、神戸陣45m中央付近で得たPGをFB五郎丸が慎重に決めて26-21とし逃げ切るかに思われたが、試合終了間際の37分、ヤマハ発動機陣ゴール前で得たペナルティーからモールで押し込み、最後は前半に負傷交代した橋本大輝主将からゲームキャプテンを引き継いだLO伊藤鐘史がゴールポスト右脇に執念のトライ。ゴールも成功し、26-28となったところでノーサイド、最後まで一進一退の攻防が続く好ゲームとなった。

神戸製鋼の苑田右二ヘッドコーチは試合終了後の記者会見で、『前半はリズムに乗れず、ハーフタイムで後半はアグレッシブに行こうと選手を送り出し、うまく結果が出せた』と述べた。一方、ヤマハ発動機の清宮克幸監督は、『前半もリードして折り返し、後半も試合を支配していたのはヤマハ発動機だったが、一つの反則から流れが変わってしまった』とミスを悔やんだ。
準決勝に進んだ神戸製鋼は、3月1日、東京・駒沢陸上競技場で行われる準決勝でトップリーグ王者のパナソニック ワイルドナイツと対戦する。(橋本光一)

会見リポート
 

ヤマハ発動機の清宮監督と矢富ゲームキャプテン

ヤマハ発動機ジュビロ

○清宮克幸監督

「今日をもって1年のシーズンが終わったわけですが、最後の試合で、1年間、ヤマハ発動機がこだわってきたスタイル、プライドを要所、要所にお見せすることができたと思います。社会人ラグビー初の天覧試合ということで、素晴らしいプレーをすることを誓って、こうした内容になったと思います。ヤマハ発動機は着実にステップアップしてきましたので、来年以降も続けていきたいと思います」

──誤算は?

「ヤマハ発動機的には、今日はうまく試合を運びました。前半、セットピースから意味のないアタックを3回続けて、これはまずいなと思っていましたが、運はヤマハ発動機にあり、リードして前半を終えることができました。後半も、流れはヤマハ発動機にありました。勝負どころのあと15分というところで、神戸製鋼さんも出口のないアタックを続けていて、素晴らしいヤマハ発動機のディフェンスが機能していましたが、規律のないプレーをたった一人がしたためにゲームをもっていかれました」

──曽我部選手のキックパスは?

「宮澤君が歩けないほどの状況で、勝っている試合では出さない予定だった曽我部を出すことになり、アクシデントでした。あのプレーは取っていればトライですので、問題ないのではないでしょうか」

○矢富勇毅ゲームキャプテン

「まず、一年間会社の方、協力してくださった皆様に感謝申し上げます。試合は、再度逆転され、非常に残念な結果です。自分たちがやってきたことを出せましたが、あと一歩つかめないというのは、何か足りなかったと思います。トップリーグも日本選手権も、あと一歩でつかめないことを受け止めて、しっかり次のシーズンに向けてやっていきたいと思います」

──プレーヤーとしてどうしていけば?

「今までやってきたヤマハスタイルをさらに極めることに尽きます。ディフェンスで我慢しなければならないところで、できなかったことをさらに自分たちで突き詰めないと」

──天覧試合は?

「いつもと違う環境の中での試合でしたが、あえて、いつもどおりに冷静にと声を掛けました」

──遠くからもPGを狙ったが?

「五郎丸のキックを信じているだけです。あいつが狙えると言えば狙わせるだけです」

 

神戸製鋼の苑田ヘッドコーチと伊藤バイスキャプテン

神戸製鋼コベルコスティーラーズ

 

○苑田右二ヘッドコーチ

「本日の天覧試合を誇りに思います。前半、ヤマハ発動機さんに強みを消されるゲームプランで来られて、ポイントできませんでした。後半はアグレッシブに最後まであきらめずに戦ったことが、この結果を生みました。48名が45週間努力した証だと思います」

──アタックは?

「アタックの部分、皆が同じ考え、方向性でやることができています。サントリー、ヤマハ発動機戦での敗戦を受けて、よりアグレッシブにラグビーしようと練習してきましたが、ここに来て、選手の努力が実を結んできたと思います」

──パナソニック戦に向けて?

「今日は勝利に浸りたいです(笑)。昨年、国立に忘れ物をしたので、もう一度取りに行くとやってきました。明日はリカバリーして、火曜日から良い練習をして臨みたいと思います」

○伊藤鐘史バイスキャプテン

「今日の試合は、レギュラーシーズンで、FWで主導権を握られたので、ヤマハ発動機さんのモールスクラムに対応しようとやってきました。ある程度できて、しっかりスコアして勝ててよかったと思います」

──同点の天覧トライだったが?

「ラッキーですね(笑)。少しは持っていましたね(笑)」

──パナソニック戦に向けて?

「疲労は溜まっていますが、ゲーム感はあります。アドバンテージがあると思うので、土曜日にぶつけたいです」