「第51回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

早稲田大学 16-36 ヤマハ発動機ジュビロ

【1回戦/2014年2月16日(日) /東京・秩父宮ラグビー場】
第51回日本ラグビーフットボール選手権1回戦が秩父宮ラグビー場で行われた。
第一試合は全国大学選手権準優勝の早稲田大学vsトップリーグ5位ワイルドカードトーナメント勝利チームのヤマハ発動機ジュビロ。ヤマハは清宮監督をはじめ、早稲田大学出身者が多く、現役とOB対決の様相だった。見所は早稲田大学で日本代表にも選ばれているFB15藤田慶和と、日本代表の絶対的守護神でキッカー、そして早稲田大学OBでもあるヤマハFB15五郎丸歩との新旧FB対決であった。

早稲田のキックオフで前半が始まった。
2分、ヤマハは敵陣右サイド22m付近でCTB12マレ・サウからの短いパスを足で止めて素早く拾い上げたWTB14田中渉太が巧みなステップで早稲田ディフェンスを切り裂いて中央へ回り込んでファーストトライをあげ、FB15五郎丸が中央のGを決めて0-7。
5分、ヤマハの22m付近でのノットリリースザボールのペナルティに早稲田は冷静な判断でPGを選択し、SO10小倉順平が右サイド25mを決めて3-7。
12分、陣地ゴール前でヤマハのスクラムから左へ展開し、ラックから今度は右へ展開し再びWTB14田中に渡り右隅へトライをあげ、難しいGをFB15五郎丸が決めて3-14。
17分、ヤマハは自陣22m付近の左サイドでのスクラムから8-9でFBがライン参加して左サイドを走って早稲田ディフェンスを置き去りにして内にパスしてWTB11徐吉嶺が走り切って左側にトライをあげる。3-19。
28分、ヤマハは敵陣22m内側右サイドのラックからLO4大戸裕矢が球出しをしてSH9矢富勇毅-HO2日野剛志へ渡ってバックス並みのステップで3人かわしてディフェンスを一人引きずりながら右側にトライをあげる。3-24
32分、早稲田は敵陣中央10mの攻撃でラックサイドを縦に走り込んできたFL6金正奎にパスが渡ってラインブレイクそのまま走り切って左側へトライをあげる。8-24
37分、ヤマハは自陣ゴール前でノットロールアウェイのペナルティに早稲田はPGを選択し、SO10小倉が中央10mPGを決めて11-24。

後半はヤマハのキックオフで始まる。
1分、ヤマハはハーフウエイでのラックから前が開いてCTB12サウが縦突破してそのまま走り切って右隅へトライをあげた。11-29
14分、右側5mからのラインアウトでモールを組んで前進し、モール最後尾のLO4大戸がトライをあげてFB15五郎丸がGを決めて11-36。
20分、ヤマハはFW1列3人とハーフ団を戦術的に入れ替える。
22分、早稲田攻撃でPR3垣永真之介が大きなラインブレイクでFL6金にパスしてヤマハゴール前に迫り、ペナルティからクイックスタートでラックからPR3垣永が球出しをして細かく素早いパス回しからFB15藤田に渡り、個人技でトライをあげる。16-36
22分、FB15五郎丸が不当なプレーでシン・ビンになり10分間の退場になる。
最後攻撃も早稲田が自陣ゴール前から果敢にパスを回して攻めていったが、ノックオンでノーサイドになった。

早稲田大学は両CTBを含めて全員でロータックルしてヤマハ選手を止めていたが、ちょっとしたミスを見逃さないヤマハに6トライを奪われてしまった。しかしながら、ヤマハから2トライをあげたことは大きな収穫である。来年はトップリーグチームを破れるよう進化して欲しい。
一方、勝ったヤマハはシン・ビンを含めて反則の多さをしっかり修正して2回戦の神戸製鋼コベルコスティーラーズと戦うことになる。(奥山禎晴)

会見リポート
 

早稲田大学の後藤監督と垣永キャプテン

早稲田大学

○後藤禎和監督

「1年間ありがとうございました。
今日の試合はトップリーグの上位で、帝京大学より強いチーム。我々としては、帝京大学と戦う時と同じように大きくて、強い相手にどうやって勝ちに行くのか。ヤマハ発動機ということで、テーマとしては、セットプレー、特にスクラムからの安定したボールの供給とラインアウトからのボールの確保、ディフェンスでは、象徴としてのマレ・サウ選手をいかに抑えるか、また、大学選手権決勝で致命傷となったミスした場合のボールへの素早い反応と、それをいかにカバーしていくのかの4点を掲げた。
おおむね良くできた。特に後半の40分はよかったので前半の40分が惜しかった。マレ・サウ選手を止めることはできたが、他のキープレイヤー、五郎丸選手と両ウイングに走られてしまった。もう少しうまく守れば抑えられたトライが二つあった。この点は、来シーズンに向けての課題としてレベルアップしていきたい」

──もう少しうまく守れたとは、具体的にはどのようなことか。

「五郎丸選手のような大きくて早い選手には、今年の早稲田は、ロータックルからのダブルタックルをしてきた。最初のタックルは低く入り、しっかり止めて、すばやくダブルタックルに入りボールに絡む、または取りに行くことを徹底してきた。突破されたシーンでは、上に行ってはじかれてしまった。田中選手に走られたのは、ウイングとしての切れとスピードで抜かれている。あそこは、二人、三人で止めるなど精度をあげないと、レベルの高いチームとやるときには大きな傷となってしまう」

──大学の同期の清宮監督と対決した感想は。

「大学の同期で、また、私がヤマハ発動機に所属していたので思い入れがないことはない。意識はしていたが、相手も意識していると思う。その中で学生はよく戦い、思った以上に奮闘してくれた。勝てなかったが、同期対決は楽しかった。
最後に、皆さんからやんわりと、日本選手権のあり方、日程、組み合わせについてご提言をいただければありがたい。これだけ間隔があくと気持ちの上で難しい。例えば、ワイルドカードの下につけてもらうなど、もう少し考えてもらえれば、来年以降、もっと面白いトーナメントになると思う」

○垣永真之介キャプテン

「大学選手権後、1カ月の期間で準備してきた。トップリーグのチームと戦えたことは、結果はともかく内容は満足している。自分たちは卒業していくが、来年以降の後輩に何か託せたかなと思っている。ありがとうございました」

──ルースプレーでのボールの働きかけについて、手ごたえはどうだったか

「前半は受けた点もあったが、フィジカルについては、対等ではないが、人数をかければ止めることができると感じた。個人的には、ブレイクダウンやあたった時のあたりは強いし、学生とトップリーグの差を感じた」

──キックオフやラインアウトでモールを押されていたが。

「あのプレーに関して、自分たちはモールではないと思っていた。社会人が8人で固まって一つになってくれば押されてしまう。学生レベルであそこまで押されたことはなかった。学生と社会人の差だと思う」

──雪が降って十分な練習ができなかったと思うが、どのように取り組んできたのか。また、先週、今週とチームメイトが雪かきをしてくれたことについてどう思っているか。

「大学選手権決勝の帝京戦にすべてをかけてきた。そこから3週間、モチベーションを持ち直すことが大切で、皆が頑張ってくれた。一人ひとりがしっかり考え、がむしゃらにするのではなく、ワンプレーごとに何をすべきかを考え取り組んできた。その結果、1月12日からチームが成長してきた。今日試合ができたことについては、最後に秩父宮でプレーでき、多くの大学関係者、協会の方々、チームメイトに感謝している」

──昨年から大学選手権にかけて、ヤマハ発動機に出げいこに行き、ラックサイドのディフェンス練習をしてきたが、この点についてはどうか。

「あまりそのようなシーンがなかったのでなんとも言えない。ヤマハ発動機での一番の収穫はスクラムである。長谷川慎さんから教えを受けて、少しでもスクラムを止めることができ、練習の成果が出たのではないかと思う。自分たちがやってきたことは間違っていなかったと感じた」

 

ヤマハ発動機の清宮監督と三村キャプテン

ヤマハ発動機ジュビロ

○清宮克幸監督

「早稲田と戦うのはトップリーグの監督として2回目である。前回のサントリーの時に戦った時には、早稲田は工夫もなくサントリーに負けている。今回も同じようにならなければいいなと思っていたが、早稲田はベストパフォーマンスに近い工夫と粘りがあった。80分間の中で、早稲田がうまく戦わなかった部分があまりにも早く、序盤でゲームを決めてしまったが、あのあたりの戦い方を間違えなければ、もっと苦しめられたと思う。早稲田はナイスゲームでした」

──今日の田中選手のパフォーマンスについては。

「よかったので代える予定ではなかったが中園に代えた。バックスに早稲田のOBが多いのでOBには意地があったのではないか。早稲田のOBはあのジャージに思い入れがあるので燃えたのではないか。五郎丸は格の違いを見せつけていた。田中もそんな中、あのグランドコンディションの中でいいステップをきってトライを取ってくれた」

──同期の後藤監督と戦った感想は。

「特にないが、早稲田はよく表現、体現してくれたと思う。格上に対して果敢に挑み、来期につながる試合であったと思う」

──早稲田の粘りと工夫とは、どのプレーのことか。

「前半、早稲田が風上で、自陣から果敢にアタックしてきたが、ミスをしてヤマハに持って行かれた時間帯があった。あの辺りは正攻法で行った方がいい時間帯で、試合後に早稲田のコーチと話をしたが、もう少しガチンコ勝負をした方がよかったと思っていると思う。早稲田はいたるところでヤマハの強みを消す努力をしてきた。ファイト、ファイティングスピリットもあり、最初の20分を除けば早稲田はベストゲームをしたと思う」

──大学生相手に、主力選手を温存せずにベストメンバーで臨んでいる。それについての考えは。

「お互いにそのようなことは望まない。毎年言われているが、日本人選手だけのヤマハであれば、自分がもし大学の監督でも、外国人が出ないチームに勝ってもうれしくない。お互いに敬意を表してベストメンバーで臨んでいる」

──ヤマハとしては、今日は反則が多かったが。

「普段トップリーグでは反則でないプレーが反則となった、特に後半に」

○三村勇飛丸キャプテン

「学生相手でも、自分たちがやってきたことをやり、力を出し切ろうということで臨んだ。課題の入りは満足できたが、中盤、後半にプレッシャーに負けてしまう時間帯があった。次の神戸戦は、簡単には勝てない相手なのでこの点を修正していきたい」

──違う意味で、早稲田のジャージーを見ると思い入れがある選手がいるのではないか。キャプテンはどういう思いだったのか。

「自分の学生時代の最後の試合が早稲田で、1年生の垣永選手と金選手とが出ていた。彼らの最後の試合に自分が出ていることに特別なものを感じた。自分と堀江(ともに明治大学出身)は燃えていた」

──トップリーグ戦、学生と戦い、またトップリーグのチームと戦うことになるが、大学生相手に戦う場合にはマインドセットが難しいのでは。意気込みはどうだったか。

「今年のヤマハ発動機は、相手がどうのこうのではない。自分たちの力を出し切ることにフォーカスしてきたので、やってきたことを出し切る気持ちで臨んだ」

──学生と戦う日本選手権は、社会人にとっては難しいと思う。特に早稲田と対戦するときには、観客の声援なども含めてやりにくくはなかったか。

「試合前に、選手にはストレスがかかる部分もあるが、ひとつひとつ気持ちを切り替えて、しっかりと次につながる試合をしようと話し、試合に臨んだ」

──前半に4トライ取った後、中盤以降受けていたように思えたが。

「少なからず気持ちの問題がある。一人一人の気持ちのゆるみが、全体のゆるみにつながった。今までやってきたことが出せない時間帯があり、結果として全体のゆるみにつながった」

──秋に早稲田と一緒に練習しているが、秋の早稲田と今日の早稲田との違いは。

「自分は秋には出ていないが、秋の時にはスクラムは組みにくい印象だった。今日の早稲田は最後なので、早稲田らしいプレーをしていた」