「第51回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

帝京大学 13-38 トヨタ自動車ヴェルブリッツ

【1回戦/2014年2月16日(日) /東京・秩父宮ラグビー場】
2週連続の記録的大雪に見舞われた週末だが、前日に関東地区の大学から集まったラグビー部員らの献身的な除雪作業により、ピッチコンディションは良好。快晴には恵まれたものの、冷たい強風がゲームに影響を与えそう。
今シーズン打倒トップリーグを目標に準備をしてきた帝京大学が、トヨタ自動車ヴェルブリッツに挑む。トヨタ自動車は2006年に早稲田大学に不覚をとった経験があるだけに、同じ轍は踏みたくない。先制したのはトヨタ自動車。前半7分、帝京陣ゴール前10mで得たオフサイドのペナルティからPGを狙わずタッチに蹴り出す。このラインアウトモールをきっちり押し切りFL安藤がトライ。ゴールも決まって0-7とする。
続いてトヨタは13分、22m左中間のスクラムから右に展開、CTB山内がタックルを受けながらも粘って前進してラック、SH滑川がすばやくさばいて、LOコンビ北川→谷口とつないでトライ。ゴールはならず0-12とする。
ここからゲームは停滞する。トヨタがボールを保持する時間が長く、攻めを繰り返すもののフィニッシュに持って行くことができない。帝京もコンタクトで負けずプレッシャーをかけ続ける。
帝京に流れがくるかとみえた31分、帝京陣内10m付近ラインアウトでタップされたボールを帝京SH流がクイックパス。しかしここにトヨタFL安藤がうまく走り込みインターセプト。そのまま走り切って本人この日2本目のトライを左隅に決める。ゴールは決まらなかったものの0-17と引き離す。
しかし直後のキックオフから帝京が良いテンポで攻めトヨタのペナルティを誘う。ゴールほぼ正面左約30mのPGをCTB中村主将がきっちりと決めて3-17とする。帝京大学は続けて前半終了間際、トヨタゴール前に攻め込むもトヨタにボールを奪われ前半終了。

ハーフタイムでうまく修正することができたか、後半は帝京が良い入りをする。トヨタが自陣でまわしたボールを奪い左右に展開する。CTB中村主将がディフェンスラインの裏に出て大きくゲイン、ここから大外のWTB磯田に超ロングパス。これを受けた磯田がそのまま走り切って7分左隅にトライ。ゴールは決まらなかったものの8-17と迫る。
しかし15分、帝京が自陣22m付近で展開したボールをトヨタが奪って、帝京出身SH滑川が中央にトライ。ゴールも決まって8-24とする。
続いてトヨタは25分、帝京陣内でフェイズを重ね、最後はSH麻田からクロスしてボールを受けたWTB水野が20m走ってトライ。ゴール成功。8-31と突き放す。
33分帝京の反攻。自陣から果敢に攻めてボールをつなぎ、トヨタ陣に入ったところでペナルティ獲得。これを中村主将がナイスタッチ、トヨタゴール前5mラインアウト。このラインアウトで帝京はクリーンキャッチするも、トヨタがうまく対応してモールを組ませてもらえなかったが、左に展開。中央付近でできたラックからさらに左に展開したところにFB竹田が走り込みトライ。ゴール不成功。13-31と迫る。
帝京は追撃を試みるも自陣から展開したボールをトヨタに奪われる。これをトヨタはきっちりとトライにつなげる。WTB彦坂が右タッチライン際をゲインしてできたラックから左に展開。WTB水野が中央付近でゲインしたラックからさらに左に展開。SO文字から大きく飛ばして37分LO北川が左中間にトライ。ゴール決まって13-38と突き放して試合終了。

終わってみればトヨタ自動車がきっちりと仕事をして、対学生という難しい試合にしっかりと準備をして危なげなく勝利をつかんだ。
帝京も打倒トップリーグの準備の成果を発揮できていた。個々のコンタクトでは十分に通用しており、来季以降も、もうひとつ高みをみつめて強化に励んでほしい。(澤村 豊)

会見リポート
 

帝京大学の岩出監督と中村キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督

「今シーズン、トップリーグのチームに勝つことを目標としてきましたが、今日の試合の内容が現時点のチームの実力でした。いいプレーもありましたし、悪いプレーもありましたが、トップリーグに勝つというところまで持ってくることができなかったのは、監督の責任だと思います。実力不足でした。学生の頑張りに敬意を表したいと思います。
また、トータルとしてはしっかり頑張ったと思います。トヨタが学生チーム相手でも本気でやってくれましたが、その本気に対して学生がどれだけぶつかっていけるか?学生たちが試合を終わってうれしいか?負けた場合には悔しいか?勝って笑えることを目標にやってきました。今日の試合で、やりきれなかったところを感じることができれば、次の年度の本当のスタートがあると思います。また、新しい年度になり、トップリーグに勝つという高い目標に向かって学生が本気になって、私自身も力量をあげて80分間、力を出せるようにしたいと思います。3年生以下はこれをしっかり受け止め、本気になって力を積み上げるようにしたいと思います。
また、今シーズンの総括として申し上げますが、1年間、監督が指導したことを学生たちがよくやってくれました。今日から新年度は、あらためてトップリーグの力を超えていくように、チームを調整していきたいと思います。今年の3年生以下の後輩たちの力を生かしていける1年になることを期待します。
また、この機会に、来シーズンの主将は流大、副将は森川由起乙の体制とすることにしたことをお伝えします」

──試合前のトスでは、どちらのチームが陣地をとって、戦ったのですか?

「トスではトヨタが勝って、風上を選択し、帝京大は風下になりました。前半はもっとボールを動かした方が良かったと思います。少し蹴りすぎて、パスが少なかったと思います。セットプレーでもしっくりいかず、優位に立てませんでした」

──1対1、あるいはブレイクダウンでのコンタクトの印象は?

「私は個々には負けていないと感じたが、経験の少ない選手達がこの実感を持てなかったのだと思います」

○中村亮土キャプテン

「まず、大雪の中、雪かきや試合実施に向けてのサポートをしていただいた方々に感謝します。今日のゲームは個人としての実力不足もありますが、リーダーとしての実力不足を感じました。トヨタ相手に通用したところと、修正しなければいけないところとがありました。私はこれで学生最後の試合となりましたが、来年、リベンジしたいこのチームを応援していきます」

──「通用した部分、しなかった部分」について具体的に教えてください。

「通用した部分としては、アタックでフェーズを重ねればゲインにつながったところです。しかし、ペナルティをとられ、トヨタペースになってしまったところは修正が必要だと思います」

──セットプレーでトヨタの集団の圧力が大きかったと思うが?

「セットプレーでのマイボールが少なかったので、ゲームを作りにくかったと感じました」

──前半、後半にも、PKを得た場面でPGを狙わずせめたが、そのプレーについては?

「前半のシーンではフェーズを重ねたところでのPKだったので、アタックを続ければトヨタが苦しいはずなので、トライを狙いました。後半の場面は、距離もあったのでPKを狙わず、フェーズを重ねてのトライを狙いました」

──1対1、あるいはブレイクダウンでのコンタクトの印象は?

「ブレイクダウンでは負けている感じはありませんでした。しかし、ブレイクダウンでのうまさはトップリーグの選手は学生よりあると感じました」

 

トヨタ自動車の廣瀬監督と上野キャプテン

トヨタ自動車ヴェルブリッツ

○廣瀬佳司監督

「本日はありがとうございます。特に、昨日秩父宮の雪かきに協力していただいた大学生、協会関係者の方々に感謝いたします。今日の試合は、難しいゲームになることは承知していました。今日は『一点差でもいいから勝つ』ことを目標にかかげて臨みました。セットプレーでプレッシャーをかけて、タックル、コンテストで優位に立つことができました。次戦は対東芝になると思いますが、チャレンジャーとしてフィジカルなプレーで試合に臨みたいと思います」

──学生チームとの試合は難しいところもあったと思いますが、この試合からの収穫は何でしたか?

「非常に難しい試合でした。しかし、難しい環境の中でもしっかり勝つ力が必要だと思います。次戦はトップリーグ上位チームなので、しっかりチャレンジしていきます」

○上野隆太キャプテン

「まず、積雪の中、グランドコンディションを作ってくれた多くの方々に感謝します。今日の試合には、『しっかり、トヨタのラグビーを出して勝とう』と臨み、勝利することができました。しかし、いくつかの課題も浮き彫りになったので、次戦の東芝戦に向けてしっかり修正していきたいと思います」

──帝京大学と対戦して、帝京大学はトップリーグ、あるいは社会人チームの中でのどの位置にいると思いますか?

「社会人と対戦して遜色のないチームだと思います。ただし、セットプレーについては、少し、トップリーグのチームとは差があったように思います」

──前半の前半にはボールをうまく動かそうとしてチャンスもありましたが、ファンブルなどのミスで、チャンスを生かせませんでしたが?

「帝京大学も激しいディフェンスをしてきたのでシェイプが浅くなったり、広くなったりしてしまいました」

──今日の試合では、これまでのトップリーグでの試合より集散が良かったと思いますが? また、今日の帝京大のプレーについての感想は?

「むしろ、私たちはラックに人数をかけ過ぎたと思っています。今日の帝京大学のプレーは、プレッシャーもあったし、球出しも早く、学生レベルを超えていたと思う。前半は一人一人が受けてしまうプレーが多かったので、SH滑川にプレッシャーがかかってしまった。ただし、この点は後半には修正することができました」