初戦で苦戦したカザフスタンに決勝では快勝

香港大会を1位通過し、いよいよ東京決戦へ

 

11月7、8日、香港で「女子7人制ラグビーアジア予選第1戦 香港大会」が行われ、日本は決勝戦でカザフスタンに22−0で完勝して優勝。

1位に与えられる大会ランキングポイント「6」を獲得して、リオデジャネイロ五輪出場権獲得に一歩前進した。

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初戦(写真)で苦戦したカザフスタンに決勝では快勝するなど、大会の中でも成長した
photo by Kenji Demura

 

大会の入り自体は決して万全なものではなかった。

最終的には決勝で再戦する事になるカザフスタンとの初戦(7日10:28)。

「今までの大会以上に、試合前からみんなが緊張しているというのが伝わってきていた」(小出深冬)

やはりオリンピックのかかった大会という重圧は相当なものだったのだろう。

「かなりブレイクダウンのところでファイトしてきた」(浅見敬子ヘッドコーチ)というカザフスタンに対して、日本は立ち上がりからボール所持、テリトリーともに圧倒しながらも、やや近場にこだわり過ぎたこともあってテンポを上げられず、ミスやペナルティも出て前半は無得点。

逆に、ハーフタイム直前にカザフスタンに先制トライを許す苦しい展開となる。

 

「攻めがコンパクトになりすぎていた。もう少し広がってもいいのではという話しをした」

(浅見HC)

ハーフタイム時にそんな指示を受けた選手はすぐに有言実行。

後半開始早々に、竹内亜弥の突破からチャンスをつかむと、中村知春キャプテンが外に持ち出し、大黒田裕芽から小出とつないで同点トライ。

大黒田のゴールがポストに当たりながらも決まって、結局そのまま7—5でカザフスタンを振り切った。

 

「サイズがあって、ストライドが長いので、ボールを持たせて走らせてしまうとスピードに乗って止めるのが大変。パワープレーヤーがほとんどなので、後半、運動量が落ちてくる。前半から走り回って、疲れさせて、後半しっかり取っていく」(浅見HC)

 

試合前にカザフスタン対策として考えられていたプランのちょうど半分ができたようなかたちとなったが、それでもコンバージョンによる2点差で勝利をものにしたことで、「次につながる」(同HC)初戦となった。

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決勝戦で先制トライを決める小出。持ち前の思い切りいいプレーで貢献した
photo by Kenji Demura

 

「6試合続くので、いい流れに持っていけたかなと」

チームとしての大会初トライを決めた小出がそう語っていた通り、初戦のカザフスタン戦で苦戦した後は、第2戦の対スリランカ(7日13:43)には計8トライを奪って48—0。そして、第3戦(同16:54)では大会前時点では「青島で負けてから、最大のライバルだと思ってきた」(中村知春キャプテン)という香港からも6トライを奪っての36—0で快勝。

「でき過ぎの面もあるが、選手が執念を出してくれた」(浅見HC)という1日目の戦いを終えたサクラセブンズは、大会2日目の初戦のグアム戦(8日09:15)でも9トライを重ねる圧勝ぶり。

 

残り2試合、そのまま頂点まで一気に駆け上がるかと思われた日本だったが、立ちはだかったのは、昨年のアジア競技大会で敗れ、アジアシリーズでも年間チャンピオンの座を譲った中国だった(8日13:06)。

 

 

「たくさん負けてきて泣いてきている。

でも、必ずその後に取り返してきた」

 

ここまで大差の試合が続いた影響もあったのか、立ち上がりタックルが甘くなったところを突かれて前半1分に中国に先制トライを許す。

日本は前半終了間際に桑井亜乃の突破から横尾千里、中村キャプテンとボールをつないでトライを奪い5−7と迫ったが、後半に入っても「思いっきり体をぶつけてきた。かなり勝負をかけてきた」(浅見HC)という中国のプレッシャーの前に思うようなラグビーができず、4分にトライを加えた中国に5—12で敗れた。

 

プール最終戦こそ落したものの、4勝1敗で乗り切った日本はプール1位で決勝戦(8日17:45)に進出。

初戦で日本に惜敗したものの、中国、香港を破り、やはり同4勝1敗でプール戦を終了したカザフスタンが決勝の相手となった。

 

「彼女たちはたくさん負けてきて泣いてきている。でも、必ずその後に取り返してきた」

浅見HCが自信を持つ、どん底から這い上がってくるような、サクラセブンズが持つ復元力は今大会でも健在だった。

 

「中国に負けた後はこうすれば良かったという話になったけど、すぐに全員のスイッチが切り替わった。その後、短い時間の中でカザフスタン戦に向けて、いい準備ができた」

中国戦での敗戦の影響も懸念された決勝戦では、そんなふうに試合前のチームの雰囲気を語ってくれた小出の先制トライを皮切りに計4トライを重ねて22—0で快勝。

 

弱冠10代のラインブレーカーに負けていられないと、思い切った走りで2トライを記録した山口真理恵が「スペースに走り込むことを意識した。また違った自分たちの核ができたような気がして嬉しかった」と語ったとおり、サクラセブンズが目指しているテンポのいいランニングラグビーを成就させての優勝だった。

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決勝戦でいずれもロングゲインを記録しての2トライを奪った山口。次につながるトライに
photo by Kenji Demura

 

「エリアがしっかりとれて、狙い通りにプレーできた。初戦は固くて、うまくいかなかったが、今までもちょっとこけて、次に割とうまくいくということを繰り返してきている。『決勝に行けば、自分たちのもの』という意識は選手たちの中にもあったと思う」と、精神面での成長も強調する浅見HC。

 

「(香港大会は)1位通過ではあるけれど、東京ではまた0からのスタート。でも、ここで優勝したことは自信になる。まずはコンディションを整えること。練習してきたサインプレーが効いたなという部分とまだまだという部分両方あったので、そこの精度を上げたい」(同HC)

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男子に続いて五輪出場権獲得のため、まずはコンディションを整えることが重要に
photo by Kenji Demura

 

リオデジャネイロオリンピックに向けた女子7人制ラグビーアジア予選の第2ラウンドとなる東京大会は、11月28、29日に東京・秩父宮ラグビー場で行われる。

 

text by Kenji Demura

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香港大会を制したサクラセブンズ。東京大会でもこの歓喜を期待したい
photo by Kenji Demura