今シーズン最後を飾る日本選手権決勝は、東芝ブレイブルーパスが安定したディフェンスでトヨタ自動車ヴェルブリッツを破り、昨年(NECとの双方優勝)に引き続き優勝した。

両者は先月のマイクロソフトカップ準決勝でも対戦(38-33で東芝勝利)。立ち上りはその時と同様、トヨタが軽快なテンポで連続攻撃、6分にSOアイイのPGで先制した。
その直後のリスタート。東芝はトヨタFWが待ち構える左サイドとは逆へのキックオフからチャンスを掴み、最後はこの日攻守に大活躍のLO石澤がトライしてすぐに逆転。そこからはトヨタ陣でボールを支配し続け、18分にはまたも石澤が飛び込み引き離しにかかった。20分過ぎからはトヨタの時間となったものの、東芝はここを無失点で凌ぎ12-3とリードして前半を終了。

後半巻き返しを図るトヨタは、11分にライン参加した正面がハーフブレイクからオフロードパスを赤沼に繋ぎトライ。トヨタの初トライに、地元愛知から上京したサポーターは大いに盛り上がった。さらに20分にはモールでインゴールへなだれ込んだが、これは認められず、その後のゴール前スクラムのチャンスもターンオーバーされてしまった。PG1本で逆転できる点差の35分には、リザーブスタートだったSO廣瀬が入り攻め続けるも、結局得点は奪えず。そしてついに38分、中央付近の混戦から東芝FB立川にボールが渡りラインブレイク、最後は片手で掲げたボールをタッチダウンし熱戦に終止符を打った。

トヨタはアイイからのパスでCTB難波、赤沼が仕掛け、決定力のあるWTB遠藤、久住、FB正面らへ繋ぐが、東芝のディフェンスを崩すことができなかった。「廣瀬が蹴っていたら」と思わせた3度のPG失敗も響き、勝てば87年以来となるタイトルを逃した。東芝は得トライこそ3に留まったが、トヨタの攻撃をタッチラインやキックへと追い込んで継続させない、盤石のディフェンスは見事。2年連続でトップリーグ王者と併せた2冠を獲得し、その強さを証明した。(米田太郎)

東芝 19-10 トヨタ自動車 東芝 19-10 トヨタ自動車 東芝 19-10 トヨタ自動車 東芝 19-10 トヨタ自動車
 

朽木監督
朽木監督

 

麻田主将
麻田主将

 

東芝ブレイブルーパス 19-10 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(2月25日)

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木英次監督

東芝 19-10 トヨタ自動車

「日本選手権という大舞台で、結果は負けましたけれど、良いチャレンジができました。さすが、東芝さんはブレイクダウンもセットプレーもすべてにおいて優勝にふさわしいチームだったと思います。ただ、うちも九電戦の前から240分死力を尽くすという意識どおりの試合ができて誇りを感じています。
東芝さんはシーズン終盤に来て、ディフェンスがワイドに広がり、モールやブレイクダウンに人を割いてこないように変わってきましたので、トヨタもパスを通すよりピンポイントに開いている一人に勝負し、近場を2次、3次、4次と攻めてボールに相手が寄って来たところで獲るというプランで臨みました。しかし、1対1のボールの絡みでずいぶん苦戦した感じだと思います。なかなかダブルエックスと我々が呼んでいるエリアでのブレイクができませんでした。後半のペナルティゴールなど、"たられば"は一杯ありましたが、東芝さんが残りの30cmを割らせなかったということです。日本一のチームと対戦できてトヨタも成長したと思います。私自身も、去年、早稲田に敗れて、悔しい思いを持って、もう一年やらせてくれとやってきましたが、トヨタはまた、この悔しさをバネに来年はすばらしいチームになると期待しています。チームをサポートしてくれた家族、ファンの皆様、コーチングスタッフ、トレーナー、すべての方に感謝しています。
(トヨタのここまでの道のりは)最初、トップウェストのときは辛かったですね。145-0で勝っても、新聞に結果すら出ない(笑)。そういうときを経て来たチームが最後に(日本選手権)決勝という大舞台に出られるまで成長しました。この4年間で一番選手達にいいたかったのは、ベストを尽くすということです。練習でも、生活でもベストを尽くす、ラグビーの選手はそういうものにならないといけません。今日、ホテルでのミーティングで伝えることができました。
(トヨタに残せたものは)ハートのある練習、プレーです。それが多少なりとも伝わって、1年目の選手も含めて麻田中心に成長したと思います。
(心残りは)ありません。人事を尽くして天命を待つという気持ちで、今日は選手を送り出しました」

○麻田一平主将
「もともと、東芝さんは日本一のチームだと思っていましたが、チャレンジできる最高のチームでした。とにかくチャレンジしようとぶつかりましたが、ブレイクダウンの激しさ、気持ちが東芝さんはトヨタを上回っていました。80分あきらめずに頑張りましたが、東芝さんのほうが強かったということだと思います。
今年スタートするときに、キャプテンを任されて、日本一を目標にやって来て、1年間いろいろと苦しいこともありましたが、監督にサポートしていただいて成長できたと思います。できれば、勝って恩返しをしたかったのですが、負けてしまいました。しかし、気持ちのこもった試合ができたのは良かったと思います」

東芝 19-10 トヨタ自動車 東芝 19-10 トヨタ自動車 東芝 19-10 トヨタ自動車 東芝 19-10 トヨタ自動車
 

薫田監督
薫田監督

 

冨岡キャプテン
冨岡キャプテン

 

◎東芝ブレイブルーパス
○薫田真広監督

東芝 19-10 トヨタ自動車
東芝 19-10 トヨタ自動車

「5年間積み上げてきたものを、いかに出すかという試合でした。トスにキャプテンが勝ってくれて、前半に風上を取り、先手必勝ができました。戦術的交替では、東芝のリザーブのほうが戦力的に揃っていると思っていた通りで、その差も含めた勝利でした。前半40分で決着をつけようとしましたが、トヨタさんは(トップリーグの)13チームの中で一番接点の強いチームで、攻撃時間を増やそうとしましたが、なかなか思うようにボールを動かさせてもらえず、苦しい試合でした。後半、3本相手ボールをターンオーバーしてキックでタッチに逃げたこと、ここで、攻められてトライを獲られなかったことが今日の試合のポイントでした。トヨタさんを、遠藤選手などを使ってギャンブルしなくてはならない局面に追い込められました。ここを来年はしっかり修正して、もうワンランクアップした東芝になってくれると思います。
今年、多くのスタッフ、選手、キャプテンに助けてもらいました。感謝しています。2点差の場面では、いつかスコアされるのではという恐怖感がありましたが、自分達のゴールラインを守ろうという相手のリズムを寸断するビッグプレーができたのが大きかったです。相手のイージーミスにも助けられて、後半の中盤以降はゲームが締まったと思います。
(胴上げでは10回も宙を舞ったが?)本当にいつか落とされるのかなという恐怖感(笑)と、やって来て良かったという気持ちでしたね。
(これぞ東芝というプレーは)前半の2トライは非常に東芝らしい獲り方でしたが、3本目が獲れないのも東芝らしい(笑)。ゴール前の(割らせないという)プライドも東芝らしかったですね」

○冨岡鉄平キャプテン
「もう少し、前半にスコアを取らなければいけないゲームだったと、今は冷静に厳しく反省しています。こういうビッグゲームですと、先手を取らないと厳しいので、スコアは接近しましたが、良い試合だったと思います。
5年間、キャプテンをしてきましたが、最初の1、2年は、リーダーとは、チームとは何かまったく分からない状態でした。とにかく一生懸命やってきて、いろいろ学びながら成長させていただいたと思います。この5年間は、我々部員の一生の財産になると思います。監督に、ありがとうという気持ちをこの場でお伝えしたいと思います。
(朽木監督はトヨタがペナルティを外した場面に言及していたが?)朽木さんがおっしゃった通り、『これ、入っちゃうとまずいな』と思いました。もしかしたらそれが勝負を決めたかもしれません。ただ、あの場面ではイージーなラックボールを放さないというミスでしたので、その後、イージーなペナルティを取られないよう選手の集中力は上がったと思います。
(薫田監督を10回も胴上げしたが)僕は冗談でいったのですが、周りの皆が騒いでしまって、やることに…(笑)。トヨタさんは、風下の前半は、遠藤選手のところで当たって、その後キックか、ゲイン次第かという理にかなった攻めで、エリアのマネジメントも風の使い方もうまかったと思います。昔はモールを組んでそのままスコアできましたが、各チームが東芝を倒そうと対応してきて、押し切れなかったときも、モールの周辺をもう一度突くか、回すかレベルアップできました。確実に現状維持ではなく、成長できたと思います。
(これぞ東芝というプレーは)ゴール前のディフェンスの上がりはうちしかできないと思います。また、石澤の2トライも、バツベイがゴール前5m凄いとすれば、残りの95mは(いつもは控えの)石澤のほうが凄いプレーヤーであることを証明してほしかったし、彼もプライドを持って、それができたのが東芝のプレーだったと思います」