第9回となる日韓定期戦(アジア3カ国対抗戦、韓国戦)が「リポビタンDチャレンジ2007」として秩父宮で行われ、日本代表が韓国代表に圧勝した。 9月にフランスで開かれるワールドカップ(W杯)を控えた2007年の初戦、初采配のジョン・カーワン(JK)ヘッドコーチのもと、日本代表がどのような試合をするのか注目の試合であった。 JKは常々、日本人の適性にあったラグビーを目指すべきであると話しており、日本代表として素早い出足、ラック、タックルでの低さ、激しさをチームに求めている。今回の試合でどの程度実現できるのか、ファンも注目していたところである。 強風の中、午後2時に韓国のキックオフではじまった。前半3分、韓国代表のスクラムでの反則から、フリーキックを得た日本代表は、オープン攻撃を仕掛け、ラックでの2次、3次攻撃から14番クリスチャンがトライ。FW、BKが一体となった、グラウンドを大きく使ったトライであった。さらに、6分、11分と立て続けにトライを奪い、前半15分で21対0と韓国代表を大きくリードした。その後も、日本代表は攻撃の手を緩めず、ラック、セットプレーからの素早い球出しから、21分、24分、27分、39分とトライを重ね、49対0で前半を終了した。 後半も日本代表は韓国代表を攻め続けたが、ノックオンやパスミスなど細かいミスが続き、攻め続けている割には、なかなかトライを奪うことができない。ようやく9分に後半最初のトライ。その後も4トライを奪い。結果、82対0と快勝した。日本代表は、アタックもよかったが、ディフェンスでもよく前に出ており、韓国代表に攻められても、低く激しいディフェンスで防ぎ、韓国をノートライに押さえた。 一方、韓国代表は20歳台前半の選手が多く、また、新チームを結成したのが4月11日と言うこともあり、チームとしてまとまりに欠け、従来のような、しつこいディフェンスや、低く、激しい当たりもなく、前後半を通じて、終始、日本代表にゲームをコントロールされてしまった。 日本代表は、JKが目指している、素早い防御、低いタックル、低いラックが終始見られ、危なげない試合であった。特にラインアウトではロック大野を中心に、FWのプレッシャーがあり韓国代表の素早い攻撃を阻止していた。 スクラムは安定せず、韓国代表に押される場面もあった。また、終始、攻撃している割には反則が16(FK2)あり、韓国代表の4(FK1)に対して4倍である。後半のノックオン、パスミスも気になるところであり、これから対戦するクラシック・オールブラックス、IRBパシフィック・ネーションズカップ、さらにはW杯では、今回のようにボールを支配し続けることが難しく、数少ないチャンスをものにするためには、この点を改善する必要がある。しかし、今回の韓国代表戦は、JKの日本代表初戦としては順調な滑り出しであり、今後さらに練習を重ね、W杯での勝利を目指して、一層、強化してほしい。 強いジャパンをファンは待っている。 韓国代表のパク・キヘン監督(右)、キム・ヨンナム キャプテン アジア3カ国対抗試合 兼 第9回日韓定期戦 日本代表 82-0 韓国代表(4月22日(日)14:00 at東京・秩父宮ラグビー場) ◎韓国代表 ○朴基幸監督「日本がワールドカップのためのチームづくりを見せたのに対して、韓国は国内リーグが終わったばかりで10日間しか準備ができず、良い試合をお見せできなかったのが残念です」 ――今までの韓国は素晴らしい気力で感動を与えてくれたが、今日は戦意喪失したように思えたが? 「国内リーグで有力選手5名が負傷したこともあって、今回は若い選手が3分の2を占めるチームとなりましたが、若手らしく弱く折れてしまう場面がありました。我々は4年後のワールドカップ出場を目指していますので」 ――ハーフタイムの指示は? 「ゲインライン上での、アウトサイドセンターとウイングの変化への対策を指示しました」 ――若手の評価は? 「香港ではラインアウトの80%を獲られましたが、今日はそれより良かったと思います。スクラムも良かったですし、怪我をしているうち3名は190cm台ですので、今後期待が持てると思います」 ――今後の香港戦は? 「5月27日に香港で行います」 ○金泳男キャプテン 「前半後半関係なく、自分たちのチームづくりが十分ではありませんでした。点差が大きく離れてしまったのが残念です」 ――去年の試合と比べて? 「今日は、こちらが準備不足でどうこう言えるものでもありませんが、香港の時のほうが韓国チームとして、ダメージがあったと思います」 日本代表のカーワン ヘッドコーチ 箕内拓郎キャプテン ◎日本代表 ○ジョン・カーワン ヘッドコーチ――満足度は? 「50%です」 ――その理由は。 「前半はしっかりゲームプランどおりプレーできて、すごく良かったのですが、後半少し外れたところがありましたので」 ――キャプテンを含め、交代のねらいは。 「最初から、全員を試すと言っているとおり、交代がどうこうという問題ではなく、常に100%の力を選手が出せなかったことが問題です。後半も含めて100%出せるよう(選手を)代えたいと思います」 ――日本の新しいスタイルは? 「練習してきたムーブもきっちりできましたし、ハッピーです。FWもBKのように速く寄って球を出せましたが、もっと速ければ生きた球が出ると思います」 ――アレジ、小野選手の評価は? 「アレジはあの風の中でゴールも100%決めたし、非常に良かったと思います。もっと重要なことはゲームプランをしっかりコントロールしていたことです。小野も含めて若い選手にはワールドカップでプレッシャーを感じさせないように、ゲームに出場させて育てていきます。小野もディフェンスラインを引っ張っていたし、タックルにも怖がらずに入っていたし、チャレンジしていこうとしていたので良かったと思います」 ――ディフェンスは? 「結果が0点ですので良かったと思います。ディフェンスの立ち位置、ラインスピードも練習してきたとおりのことが出せました」 ○箕内拓郎キャプテン――良いパスがトライに結びつきましたが? 「あれはスキルコーチのおかげです。ちょっと浮いてしまったのですが、相手が木曽でしたので(届いたのでしょう)」 ――若いBKの評価は? 「プランとしてボールを動かす、ということですから、スピードある選手がいて良いと思います。香港ではラインアウトからモールを押し込むプレーがありましたが、今は練習したことを出せていると思います。前回より強くなったものの一部をお見せできたと思います。ただ、初めの40分は良かったのですが、後半は少し緩んでしまった場面があったので、自分としては反省点です。点差があるのにフィフティ・フィフティのパスをするなど、100%のパスを繋げていけなかったので、チームとして流れが悪くなったと思います。確かに点としては積み重ねましたが、クォリティは良くなかったと思います」 ――0封について? 「前回は勝たなきゃいけないプレッシャーの中でのことで、今回は僕のように3ヶ月ぶりの試合の人間も居て、クォリティとして54-0の時よりチームとしての力が上がったと感じています」