日本代表のヨーロッパ遠征第2戦となるグルジア代表とのテストマッチが17日、グルジアの首都トビリシで行われる。敵地での欧州勢とのテストマッチで歴史的初勝利を挙げたルーマニア代表戦から、メンバー変更は右プロップの先発が山下裕史から畠山健介に入れ替わるだけ。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが高く評価した1週間前のパフォーマンスを上回る「ジャパンウェイ」のラグビーで、テストマッチ連勝にチャレンジする。

(text by Kenji Demura)

 IRB世界ランキングでは6カ国対抗に続く欧州勢最上位につけるグルジア。日本のルーマニア戦勝利で、11月12日付の最新ランキングでは日本が15位、グルジアは16位と逆転したが、ルーマニア戦前まではグルジア15位、日本16位と日本の上位にいたチームだ。日本が目標にする2015年の世界トップ10入りを実現するためには、絶対に倒さなければならない相手である。

エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが高く評価した1週間前のルーマニア戦に続き、ツアーでのテストマッチ2連勝を飾れるか
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 そんな欧州の強豪とのアウェー戦に、ジョーンズ ヘッドコーチはルーマニア代表戦からほぼ不動のメンバーで臨む。唯一の変更点が、タイトヘ
ッドプロップ(右プロップ)の先発とリザーブの入れ替えだ(登録番号では、リザーブのホラニ龍コリニアシとマイケル・ブロードハーストも入れ替わっている)。ルーマニア代表戦では山下が先発、後半25分に畠山が入れ替え出場した。ジョーンズ ヘッドコーチは「ルーマニア代表戦でスクラムが良くなかったことははっきりしている。今回は畠山を先発にして、試合の最初から低いスクラムを組んでいけるようにしたい。ルーマニア代表戦では『重さ』を重視して山下を先発させ、山下自身はとてもいいプレーをしてくれた。今回の変更はあくまでもチーム全体を成長させていくためのものだ」と説明する。

 ルーマニア代表に奪われた2トライは、スクラムでのペナルティトライと、自ボールスクラムにプレッシャーをかけられてターンオーバーからカウンター攻撃を決められたもの。「ルーマニア代表と似たタイプ」とジョーンズ ヘッドコーチが分析するグルジア代表戦に向けて、スクラムこそが最大の修正点となる。

 「日本代表がスクラムでプレッシャーをかけることができなければ、当然、グルジア代表にプレッシャーをかけられることになる。本来なら、ルーマニア代表戦のようにスクラムであれだけ劣勢になってテストマッチで勝つことなどあり得ない。他のプレーが素晴らしかったとは言え、スクラムをしっかりさせることは不可欠。単純な強さに加えて、ワールドクラスのテクニックも使っていかないといけない」

 ジョーンズ ヘッドコーチが求める「ワールドクラスのテクニック」を習得するため、ルーマニア代表戦前のフランス合宿で指導にあたった元フランス代表フッカーのマルク・ダルマゾ スポットコーチもグルジア入り。再び、スクラムの修正に取り組んだ。「日本のスクラムは決まった方向にしか押せない欠点がある。8人で低くしっかりバインドしたスクラムを組み、その時の状況に合わせて、いろんな方向に圧力をかけていく方法を叩き込んだ」とダルマゾ氏。薫田真広アシスタントコーチは「ヒットスピードが上がってきた」と話し、新たに取り組んでいるフランス式スクラムの精度が上がってきていることを強調。先発に復帰する畠山は「スクラムが勝負のカギを握ると思うので、スクラムでチームの勝利に貢献したい」と、自分の役割をしっかりわきまえている。

 共にフランスリーグでプレーする選手が中心で、ルーマニア代表と似たタイプと言われるグルジア代表だが、2部、3部リーグの選手ばかりだったルーマニア代表に対して、グルジアFWには「トップ14」と呼ばれるフランス1部リーグでプレーする選手が並ぶ。「自分たちのものにできた時には日本らしさが出せるようになると思う」とPR長江有祐がいう新しいスクラムの組み方を試すには、スクラム大国フランスの最上位リーグで揉まれている選手揃いのグルジア代表はかっこうの相手とも言える。ジョーンズ ヘッドコーチは「もちろん、ボールは速く動かしていきたい。そのためにもスクラムが重要になる。しっかりしたセットプレーからクイックボールを出していく。そこを避けては、世界のトップ10入りすることはできない」。

 最大の課題であるスクラムを進歩させて、"もうひとつのフランス代表"とも言えるグルジア代表を敵地で破れば、日本代表の世界トップ10入りの道筋がより鮮明になってくるはずだ。