世界王者に対して前半20分は互角の戦い
欧州遠征に向けてポジティブになれる敗戦

(text by Kenji Demura)

photo by H.Nagaoka
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「最初の20分間は良かった。世界のトップ10に勝つためには、同じことを50分間続けなくてはいけない」
26年ぶりとなる日本でのオールブラックスとの対戦。現場で指揮を執ることがかなわなかったエディー・ジョーンズヘッドコーチのコメントが全てを物語っているかもしれない。
いきなり、ファーストスクラムでニュージーランドボールをターンオーバーしてみせた事実が象徴しているとおり、立ち上がりの時間帯、日本は世界一のニュージーランド代表と互角に渡り合ってみせた。
もちろん攻められる場面もあったが、「ディフェンスで弾かれて抜かれるということもなかったし、外に追い込んで最後の最後にタッチに出すというプレーができたのは収穫」と語ったWTB福岡堅樹が、かのNO8リッチー・マコウを激しいタックルでタッチラインに押し出すなど、ディフェンスでも健闘。
「自分たちのやりたいラグビーをやれば、世界一の相手でも焦らせることができたのは自信になるし、嬉しかった」
そんなふうに最初の20分間の戦いぶりを振り返ったのは、2年前のワールドカップでもNZと対戦した経験(7-83で敗戦)を持つLO大野均。

22分にFB五郎丸歩がこの日2本目となるPGを決めて6-7。

「ロースコアの試合に持ち込みたい」

まさに、2本目のPGを冷静に蹴り込んだFB五郎丸が前日に語ってくれていたとおりの展開へ。

前半8分にハイパントの処理ミスから先制トライを許したのは痛かったが、超満員の東京・秩父宮ラグビー場には「もしや」という雰囲気も漂った。

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「ミスがなければ勝つポジションに」(広瀬主将)

ただし、冒頭のジョーンズのコメントどおり、日本が世最強チームと張り合えたのは、残念ながら最初の20分だけ。

「ブレイクダウンが一番の敗因。ボールキャリアーの姿勢が高かったこと。そして、ニュージーランドの2人目の寄りは、日本の2人目の寄りよりも明らかに早かった」とスコット・ワイズマンテルヘッドコーチ代行が語るとおり、日本のミスやブレイクダウンでのターンオーバーからオールブラックスが一気のカウンターでトライを重ねる得点経過が続き、最終的にNZが記録したトライは計8個。

千両役者SOダン・カーターなどが繰り出した絶妙なキックも効果的に日本のディフェンスを切り裂くかたちとなった。

ジョーンズHC体制になってすべてのテストマッチでトライを奪ってきたプライドを賭けて、日本は試合終了間際に連続攻撃からNZゴールに迫る。最後はWTB福岡が左隅に飛び込んだかに見えたが、立ち上がりのお返しとばかりに必死の形相でマコウがトライセービングタックル。

TMOの結果、わずかに先にタッチに出されたと判断されて、結局、ジャパンはノートライのまま6-54で世界最強との戦いを終えた。

「ミスがなければ勝つポジションに行けたのではないかという思いもある。アタックしていて、相手のディフェンスギャップが見えたりしてチャンスは十分あると感じたので、方向性は間違っていない。一番の差はミスやターンオーバーに対するリアクションやスコアする力に一番の差を感じた」というのがWTB広瀬俊朗キャプテンの総括。

オールブラックスのマコウキャプテンは試合後の記者会見で「日本のスクラムは良かったし、ペースの早いラグビーを仕掛ける危険なチームだとも感じた。プレッシャーの中でもボールキープできるようになれば、もっと良くなる」と、ジャパンの印象について語った。

前述の2年前のワールドカップでの76点だった点差は48点に縮まった。26年前の来日時、1995年のワールドカップ時は100点ゲームでの敗戦だった。

もちろん、6-54というスコアは決して誇れるものではないが、この日、世界最強チームと戦ったメンバーは、その48点差は縮められるものだという感触をつかんだのも事実。

「幸いにして、すぐに世界トップ10のチームと対戦するチャンスがある。スコットランドもブレイクダウンの強いチーム」(ワイズマンテルHC代行)

欧州へ移動も含めて再び1週間しか時間のない中で、世界最強チームとの対戦から得られた教訓を生かして、敵地でスコットランドに挑む。

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