欧州遠征初戦は22年ぶりのマレーフィールド
ブレイクダウン、シェイプの精度を高め金星を

9日、リポビタンDツアー2013のため欧州滞在中の日本代表が、遠征初戦の対スコットランド戦を迎える(現地時間14時30分=日本時間23時30分、マレーフィールド)。

(text by Kenji Demura)

SO小野(左)、LO真壁が先発。再び「ベストメンバー」で金星を狙う
photo by RJP Kenji Demura

「再び歴史を変える戦いにする。ここで新しい歴史をつくという強い気持ちで臨む。もちろん、スコットランドに勝つイメージはしっかり落とし込めている」
日本代表として史上初めて欧州での欧州勢とのテストマッチ勝利から1年。
来日したウェールズ代表から金星を奪ったリポビタンDチャレンジ2013からは5カ月。

今回のリポビタンDツアーで一番のターゲットとなるスコットランド戦を前に、日本代表のWTB廣瀬俊朗キャプテンは落ち着いた口調ながら、しっかり前を見つめて、そう宣言した。

1週間前にリポビタンDチャレンジカップ2013でオールブラックスと対戦した日本代表が、聖地マレーフィールドに乗り込み、スコットランド代表とテストマッチを戦う。
2013年11月2日から9日にかけては、日本ラグビーの歴史の中でも凄いことが起こった8日間として記憶されていくことは間違いないだろう。
何しろ、日本代表が来日してきたニュージーランド代表と対戦したのは26年ぶり。そして、日本代表がマレーフィールドでスコットランド代表と戦えるのは、1991年第2回ラグビ―ワールドカップ以来22年ぶり2回目。
その凄い8日間をスコットランド戦勝利で完結させるための準備が着実に進んでいる手応えを廣瀬キャプテンは感じているのだ。

「オールブラックス戦はブレイクダウンが敗因になった。ボールキャリーが高い姿勢になっていたし、2人目のスピードが向こうの方が上。大まかに言えば、そこで負けた。スコットランドもブレイクダウンの強いチーム。もう一度ブレイクダウンを集中的に強化して臨む」(スコット・ワイズマンテルヘッドコーチ代行)

「ニュージーランド戦ではシェイプがなかった。スコットランド戦ではいいシェイプをつくっていくことが大事になる。そのために必要なことを積み上げていくというイメージ」(廣瀬キャプテン)

世界最強オールブラックスに対して、最初のスクラムをターンオーバーしてみせたとおり、「スクラムは良かった」(ワイズマンテルHC代行)だけに、ブレイクダウンとアタックシェイプというジャパンウェイを形づくる重要な2つのエリアを修正し、精度を上げて臨むというのがスコットランド戦金星に向けた基本的な方向性となる。

ニュージーランド戦とは違い、SHのスペシャリスト日和佐もリザーブ入り
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ニュージーランド戦は終了間際のWTB福岡の幻のトライまでトライチャンスなし。シェイプの精度を高めてスコットランドに臨む
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ニュージーランド戦からはLO陣とSOを入れ替え

もちろん、その方向性とリンクするのだが、スコットランド戦では2つのポジションでニュージーランド戦からの変更が行われる。
FWではLOのふたりが伊藤鐘史、大野均からトンプソン ルーク、真壁伸弥に入れ替え。
BKでは、肩を痛めた立川理道に代わって小野晃征がSOのポジションに入る。
 LOの入れ替えに関しては、「より重量のあるコンビネーションにするため」というのがワイズマンテルHC代行の説明。
 SO小野には「今までも良い働きをしてくれている」と、全幅の信頼を置いている。
 もちろん、そのスコットランド戦メンバーが「現時点でのベスト」。

LO真壁は1年前の欧州遠征ではルーマニア、グルジアを連破したテストマッチでは出番なし。今回のスコットランド戦はある種のリベンジマッチともなる。
「去年の遠征テストマッチに出られなかったのは、やはり悔しかった。自分の持ち味としては、とにかくゴーフォーワードすること。体の大きさを生かして、相手に当たって前に出て、ブレイクダウンでも前に出ることでチームに貢献したい」と抱負を語る。
逆に、5月のIRBパシフィックネーションズカップ、対トンガ戦以来の試合ぶりの先発となるSO小野は、昨秋の欧州遠征ではルーマニア、グルジア戦ともに先発して、チームを勝利に導く活躍を見せた。
「ニュージーランド戦ではひとり目が単発に当たり過ぎていた。もう少し、動きをつくって、ボール持っていない選手ももっと動いていくようにしていきたい」

ニュージーランド戦が行われたのはトップリーグのファーストステージ最終節終了から6日後。しかも、日本代表の実戦としては、5カ月ぶりの試合だったこともあり、確かにチームとしての熟成度がまだまだ発展途上だった点は否めない。
その点に関しても、オールブラックスというこれ以上ない相手との真剣勝負を経て、さらに1週間の時間を経て臨めるスコットランド戦の条件は良くなる。

昨秋の欧州遠征でのテストマッチ連勝、そして、この6月のウェールズ戦勝利という実績があったからこそ、今回、日本代表がW杯以外では初めてマレーフィールドでスコットランド代表とテストマッチを戦えることになったのは間違いないところ。
実際、スコットランドも現状のベストと言えそうな強力メンバーで日本を迎えることになった。
主将を務めるスコットランド代表通算58キャップを誇るFLケリー・ブラウンは「日本はセットプレーもフィジカルも強い」と語り、PRライアン・グラント、FBショーン・マイトランドというブリティッシュ・アイリッシュライオンズのメンバーも名を連ねている。
「22ヵ月に渡る15年ラグビーワールドカップへの準備キャンペーンのスタート。選手たちには、常にこれが最後のテストマッチになるかもしれないという緊張感を持って、臨んでもらう」。
スコット・ジョンソンHC代行は、日本がアジア予選を勝ち抜けばスコットランド代表と予選プールで戦うことになる15年ワールドカップを意識しての戦いであることも強調する。

「いまは世界ランキング9位のチーム(=スコットランド)を倒したいという意識の方が強い。でも、15年のことを考えても、ここで1回やっておくことはプラスになる」(廣瀬キャプテン)

2015年のラグビーワールドカップでの再戦をいいイメージで迎えるためにも、お互いに一歩も引かない戦いが展開されそうだ。

26年ぶりとなった日本でのニュージーランド戦に続き、22年ぶりのマレーフィールドでのスコットランド戦に臨む日本代表
photo by RJP Kenji Demura