決勝でカザフスタンを破り、予選2大会完全制覇
サクラセブンズがリオデジャネイロ五輪出場権獲得
11月28、29日、東京・秩父宮ラグビー場で「女子7人制ラグビーアジア予選 第2戦 東京大会」が行われ、決勝戦でカザフスタンを14—7で破った日本が第1戦の香港大会に続いて優勝。見事にリオデジャネイロオリンピック出場権を獲得した。
決勝でカザフスタンを破り、予選2大会を完全制覇。 リオ行き切符を獲得して喜ぶサクラセブンズ
photo by Kenji Demura
「初戦をキーポイントに置いていた」(中村知春キャプテン)
2日間にわたって、6チームによる総当たりのプール戦を戦った後、プール戦の成績に応じて最終順位決定戦が行われるスタイルが取られた今大会。
香港大会の成績によって、各チームは日本=6、カザフスタン=5、香港=4、中国=3、グアム=2、スリランカ=1のランキングポイントを持って、東京大会に臨んでいた。
日本は香港大会で優勝していたとはいえ、例えば2位のカザフスタンとのポイント差はわずかに1。
五輪出場権自体は2大会の合計ポイントによって争われることになっていたため、東京大会のプール戦で取りこぼしてしまえば、五輪出場に届かない可能性は十分にあった。
その大事なプール戦の初戦の相手は中国。
香港では5−12で敗れていたチームとのいきなりの対戦だっただけに、中村キャプテンが強調するように、今予選での命運を握るという位置付けにある試合とも言えた。
そのキーポイントだった初戦、日本はほぼ完璧と言っていい内容で快勝スタートを切ることに成功する。FWリーダーの冨田真紀子が「自分たちのアタックのテンポをつかめるディフェンスもできた」と振り返ったとおり、出足のいいディフェンスで中国のアタックを完全に分断。
前半4分に敵陣深くのラインアウトからのモールでトライを奪い先制した後、前半終了間際にはディフェンスで粘って相手の反則を誘い、PKからの速攻でエースランナーの山口真理恵が貴重なトライを重ねて、前半は10−0で折り返し。
後半は開始0分に山口、同2分に小出深冬がスピードを生かして連続ノーホイッスルトライを重ね、日本のリードは20点に。
その後、中国に1トライを返されたものの、20—7で香港でのリベンジを果たすとともに、最初の難関をものにした。
2戦目の対戦相手のグアムは香港で53−0と大勝していた相手だったが、今回も7トライを奪う一方的な内容で39—0。
初日最後の香港戦では、「ペナルティが多かった。スクラムなどのセットプレーだったり、ディフェンスで若干精彩を欠いてしまった面が出た」と反省点も出る内容となったものの、27—5でしっかり勝ち切り、3戦3勝で初日を終えた。
キーポイントと捉えられていた初戦の中国戦で快勝(20ー7)して、勢いに乗った
photo by Kenji Demura
「負けた後こそひとつに。いままで経験した負けがうまく作用した」(中村キャプテン)
2日目の初戦の対戦相手はスリランカ。
グアム同様、香港大会で大勝(48—0)していた相手に9トライを一方的に重ねる内容で49—0。
この時点でプール戦4戦4勝の日本は決勝進出を決めていたが、プール戦最終戦の相手は日本同様ここまで4戦4勝のカザフスタン。
香港では日本がカザフスタンに2勝(7−5、22—0)していたため、このプール最終戦で日本が勝つか引き分けでも日本の予選総合1位が確定する状況だったが、「本当に大事な一戦だということはわかっていたので、緊張感があった」(中村キャプテン)という面も影響したのか、カザフスタンの気迫溢れるフィジカルプレーの前にミスが多くなり、前半終了間際に桑井亜乃のトライで先制したものの、後半4分に同点トライ、同5分に勝ち越しゴールを許し、5—7で逆転負けを喫した。
カザフスタンに敗れたことでプール戦時点での五輪出場権獲得確定とはならなかったが、香港の決勝での大差での勝利(22−0)が効いて、仮に決勝戦で敗れることがあっても大差でなければリオ行きを決められる状況。
それでも、「勝って決める」(中村キャプテン)気持ちで臨んだ決勝戦では、プール最終戦で出た課題を修正するかたちで終始主導権を握る。
「修正点は明確だった。アタックとしてはプレッシャーが強かったので、速いパス回しをしていく。相手は走るのが嫌だと思うので、どうやってボールを動かすかというのがポイントだった」と語った山口BKリーダーの快走でチャンスをつかみ、敵陣ゴール前のラックから中村キャプテンが判断よくショートサイドを突いて、開始3分に先制。
そのまま7—0で前半を折り返したが、後半開始早々にカザフスタンに同点トライ&ゴールを許す。
それでも、「負けた後こそ、ひとつになろうということで、みんなで声掛け合って、暗くなることなく、試合を楽しもうという声が選手から出たので、そこは良かった。いままで経験した負けがうまく作用してくれたのかな」(中村キャプテン)と、プール戦時とは明らかに違う落ち着いた状態で試合に臨めていた日本は、焦りもあってブレイクダウン周辺で反則の多くなったカザフスタンに冷静に対処。
後半7分に敵陣20m付近のPKから素早く攻めて、外側にいた小出が「スペースが見えていた」という冷静な判断で外に行くと見せかけて内を突いて、そのままゴールポスト下に決勝トライ(ゴール)。そのまま14—7でカザフスタンを振り切り、「勝つ気持ちはウチの方が絶対あった。勝ってここで決めるんだという気持ちがチーム全体にあった」という熱いパフォーマンスで、約6,000人が詰めかけた秩父宮を熱狂させて、リオ行きを決めた。
text by Kenji Demura
プール最終戦でのカザフスタン戦ではプレッシャーもあってミスが多くなり5ー7で惜敗
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決勝の中村主将のトライにつながるランなど冷静な判断とスピードで多くのチャンスをつくった山口
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後半7分、決勝トライを奪う小出。全員の「勝つ気持ち」が生み出した快走だった
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負けた経験を生かしながら、一歩一歩前に進んできたチームはとうとうリオ五輪で戦う権利を勝ち取った
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