プール戦でイングランド、豪州に完敗も
米国、ブラジルを破りボウル優勝の快挙

12月3、4日、アラブ首長国連邦のドバイでHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ 2015-2016 第1戦 ドバイ大会が行われ、日本はボウル決勝戦でブラジルを破り、ボウル優勝(=大会順位9位)を果たした。

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昇格後の初大会でボウル優勝。目標である世界トップ4入りへ確かな手応えと課題をつかんだ
photo by Kenji Demura

東京でリオデジャネイロ五輪出場権を獲得した翌日に機上の人となり、火曜日早朝にドバイに到着。
しかも大会は木曜日からという厳しいスケジュールで臨んだサクラセブンズ。
時差も5時間、日本とドバイの気温差も体にこたえないわけがない。

しかも、大会初日の第1戦、第2戦で対戦したのは、昨季のシーズン成績で4位のイングランド、同3位の豪州。

「世界トップ4入り」(中村知春キャプテン)を目指す日本女子だが、まさにいきなり自分たちの前に立ちはだかる世界の壁を痛感することになった。

イングランドに対しては立ち上がり日本がボールキープして攻めるシーンもあったが、3分にラインアウトでのターンオーバーから一気に走られて先制トライを奪われた後は、イングランドのスピードランナーに好きなように走られるシーンばかりが続く、一方的な内容となり0−35で完敗。

続く豪州戦も「イングランドよりもうまさもあるし、スピード感が半端なかった。ディフェンスラインを切り裂かれた。ウチが強みとしているタックルができなかった」という苦しい展開で7トライを重ねられ、0—43。

「気持ちの部分でやられていた。キャプテンとして恥ずかしい」
中村キャプテンがそう振り返った通り、ほぼ無抵抗なまま世界のトップに大差で連敗した後、プール戦最終戦で対戦したのは昨季の総合成績9位のスペイン。

前半2分にスペインに先制トライを許したものの、4分に桑井亜乃の思い切ったランからチャンスをつかんでフォローした中村キャプテンがスペインゴールに飛び込んで今大会初トライを記録。

後半5分にも、BK陣のいいコンビネーションプレーから横尾千里がトライを奪うなど、日本らしいアタックも垣間見せたが、先制のトライの後も前半6分、後半0分、3分とスペインにトライを許して、最終的には12—26で敗れた。

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プール戦1、2試合目はイングランド、豪州に大差での完封負けを喫した
photo by Kenji Demura

「楽しもう、ひたむきに謙虚に」(冨田)
2日目はサクラセブンズらしさが満開

「(最初の2試合は)メンタルで負けていたので、スペイン戦では頭を切り替えて、アタックしようと。セットプレーでボール確保ができれば、自分たちの攻めができるのがわかった。2日目はボウル優勝目指して、思いっきりアタックする」(中村キャプテン)

そんなふうにプール戦で世界の強豪と戦いながら、自分たちの通用する部分への手応えも感じて迎えた大会2日。

ボウル準決勝では昨季の総合成績5位のアメリカと対戦。

「ようやく粘れるシチュエーションに持っていけた」
大会終了後、浅見敬子ヘッドコーチがそう振り返ったとおり、前後半ともに試合開始のキックオフからアメリカに先制を許したものの、「宇宙一のフィットネス」を目指すサクラセブンズは後半途中出場していた鈴木陽子が同3分、6分と、連続トライを決めて15−14で際どく逆転勝ち。
「流れを変えようと思って入った。攻めあぐねていたので、起点になって崩せればいいなと。みんなで取ったトライ」(鈴木)

「アメリカがバテていた」(浅見HC)という面はあったとはいえ、ようやく本来のサクラセブンズらしい泥臭くタックルし続ける本来のプレーも出るようになった日本は大会最終戦となったボウル決勝戦でブラジルと対戦。

前半0−0で折り返した後、後半のキックオフから冨田真紀子が快走して先制。同3分にはようやく目指している「世界一速いテンポのアタック」(中村主将)の片鱗をうかがわせるスピードある攻めで小出深冬がブラジルゴール右隅に飛び込む。さらに試合終了間際に兼松由香が確実にPGを決めて、13−0で快勝した。

「まず楽しもう、ひたむきに謙虚にという感じでプレーしたらサクラセブンズのラグビーに帰ってこられた」(冨田)

五輪出場権獲得を喜ぶ暇もないままドバイで戦った女子セブンズシリーズ 2015-2016 第1戦で、いきなり表彰台に上がるという快挙を成し遂げたサクラセブンズ。

「オリンピックが決まってから4日間で自分たちの立ち位置がわかったのはラッキーだった」
中村キャプテンがそう語るとおり、表彰台に立てたことよりも重要なのは、世界トップ4、リオ五輪でのメダル獲得に向けて、強化していかなければいけないポイントが明らかになったことだろう。

「ひとりひとりのフィジカルも運動量も足りない。まだまだ自分たちのやりたい速いテンポのあるアタックとか、素早く上がるディフェンスもやりたいが戻りきれていない。
単純な走力の部分。まずは走らないと。個人のスピードをもう少し上げたい」(浅見HC)

女子セブンズシリーズ次戦、ブラジル・サンパウロ大会は2月20、21日に予定されている。

text by Kenji Demura

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プール最終戦のスペイン戦は12ー26 で敗れたもののでは日本らしさが見られるシーンも多くなった
photo by Kenji Demura

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ボウル準決勝では後半3、6分と鈴木が連続トライを奪い、米国に劇的な逆転勝ち
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後半開始早々の冨田のトライなどで13ー0とブラジルに快勝。ボウル優勝を果たした
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「2日目は強い」(中村主将)。またも敗戦から学んでドバイでの有終の美を飾ったサクラセブンズ
photo by Kenji Demura