アタックでもディフェンスでも我慢して開催国を追い詰め
目標のベスト8進出につながるアップセットを

フランス戦ではDFで粘りきれなかったことで大量失点に。アイルランドに対して低いタックルで懐に入れるか

アイルランドのダブリンで開催中の女子ラグビーワールドカップ2017。
15年ぶりに本大会出場を果たしている女子日本代表は、現地時間の13日17:15(日本時間14日1:15)に、プール戦2試合目となる対アイルランド代表戦を迎える。

初戦のフランス代表戦では試合開始直後にノーホイッスルトライを許すなど、意識してきたはずの「入りの20分」で自分たちのプレーができなかったことなどが響いて14—72で大敗。

目標とするベスト8入りのためには、フランス代表戦で明らかになった課題を修正して、前回大会ベスト4、今季の6カ国対抗でフランス代表を破っている開催国から金星をもぎ取ることが求められる。

チームとしては15年ぶり。もちろん、選手全員にとって初となるワールドカップの大舞台。
緊張せずに試合に入っていけと言う方が無理だっただろう。

「入りの20分のところは、自分たちのミスで試合のリズムを作ることができなかった。ノット10メートル(キックオフで相手陣内の10メートルラインに達しなかった)もあったし、ノットストレートも。それでも20分経った辺りからは自分たちのテンポを出せるようになった。今まで散々入りのところを練習してきたが、やはり緊張があった。緊張したままで自分たちのベストを出すことの難しさがわかったし、1試合経験したので次は大丈夫」

HO齊藤聖奈キャプテンがそう振り返る通り、フランス代表戦の立ち上がり、いつも通りの精神状態で試合に入れていた選手は皆無だったかもしれない。
その結果、20分までに4トライを奪われ、22点のリードを許す最悪の立ち上がり。

25分にはNO8マテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェのトライで迎撃態勢になったことからも明らかなように、落ち着いて自分たちのリズムでアタックさえすればトライまで持っていけることも体感。

アイルランド代表戦はケガ人や出場停止の関係で、NO8がボギドゥラウマイナダヴェか高野眞希へ、そしてCTBが冨田真紀子が黒木理帆に代わるが、それ以外の先発の13人は変更なし。

大きなメンバーの変更がないこと自体、落ち着いてプレーすることができれば、自分たちのプレーは通用するという、首脳陣のメッセージとも言える。

フランス代表戦では途中出場だったCTB黒木が「最初のオーバーで足が震えているのがわかった。子鹿みたいに足がガタガタ。それでも、いつの間にか緊張を忘れてプレーできた」という通り、ワールドカップの大舞台を1試合経験したサクラフィフティーンにとって、まずは試合の入りから落ち着いてプレーすることが、格上の開催国から勝ち星を奪うための絶対条件となる。

アイルランド代表戦に向けた練習でスクラムの修正にも多くの時間が充てられた

「いいディフェンスセットをして、自分から体を当てに行くかたちに」(FL末)

もちろん、大敗スタートとなったフランス代表戦を経て、具体的な修正点もある。
「一番は1対1のタックルで外されている部分。そこにこだわらないと、いくらシステムをやってもしょうがない。単純に言えば高さを低く。あと、懐に入らないと、単純に高くいってもハンドオフされる。そういう場面がフランス代表戦でいくつもあった。選手たちもわかっている」(有水HC)というディフェンスの部分。

ディフェンスでのキーパーソンのひとりであるFL末結希は、計12トライを重ねられたフランス代表戦に関して「チームも自分自身もコンタクトの部分で負けていて、ジワジワ押し込まれた。ディフェンスのセットが遅く、いいタックルできる状態ではないまま、相手が走ってくるのを受けているという感じだった」と、反省。

「とにかく、いいセットをして、自分から体を当てに行くというかたちにしたい。SHとコミュニケーションを取りながら、相手のいるところに開く、というのを意識したい」

一方、アタックに関しては「敵陣に入った時、フェイズアタックを我慢して継続できるか」(有水HC)。

当然、フランス代表戦ではいずれもあまりうまくいかなかったセットプレーとエリアマネジメントもポイントになる。

「(フランス代表戦で)相手のスクラムはいったん沈んでから持ち上げてくる。大きい体特有のスクラム。それに対応しきれなかった。あとサイドに動いて、横から刺してくる感じ。その場合は自分たちも横に動かないといけない。自分たちがずっとやってきたシンク。うまくいかなかった時にもう一度8人で低く組むというところを話し合った」(HO齊藤キャプテン)

「いつもフェイズ中の流れでエリアを取っていくことを意識しているが、フランス代表戦ではそれがうまくいかなかった。ラックの後ろに立ってキックをするなど、いつもと違うことをしてしまった。アイルランド代表戦は試合の最初から敵陣で戦うことを意識したい」(SO山本実バイスキャプテン)

「豪州戦を見るとノーキック。全然蹴っていなかった。うちとやる時に全く同じことをやってとは思わないが、とにかくボールを回していた。2ヶ月前と一緒なのはFWでゴリゴリくる部分」(有水HC)
そんなふうに、6月の遠征時とはやや印象の異なる戦いぶりを見せるアイルランド代表に対して、あくまでも「アタックでも我慢、ディフェンスでも我慢」(同HC)という日本らしいラグビーを貫いて、ベスト8進出につながるアップセットを成し遂げる。

Photo & text by Kenji Demura

ボギドゥラウマイナダヴェに代わりNO8で先発する高野。「ライテに匹敵」(有水HC)と期待値は高い

CTBは冨田に代わって黒木が先発へ。長田と共に10代コンビでアイルランド代表の突進を止める