目標でもある真の強豪アイルランドと“Win or Die”決戦へ

こだわってきたQLD貫きチャンピオンシップ残留を決める!

 

「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2018」参加のためフランスに滞在中のU20日本代表は大会最終日の17日、11〜12位決定戦でU20アイルランド代表と戦う。

プール最終戦のウェールズ戦は17—18と1点差で惜敗。ノックアウトステージ初戦のジョージア戦では終了10分前まで10点をリードしていた状況からの逆転負け(22—24)。

限りなく勝利に近いパフォーマンスを見せながらもあと一歩届かず、勝てばチャンピオンシップ残留、負ければ降格という最終ステージでの戦いを余儀なくされたU20日本代表。

磨いていた“QLD”と呼ばれる「速さ、低さ、細部へのこだわり」のラグビーを貫いて、フル代表は世界ランキング2位につける本物の強豪、アイルランドに対する堂々たるアップセットを成し遂げ、胸を張って日本に帰国するつもりだ。

 

ウェールズ戦ではトライ数では3対2と上回っていたが1点差負け。

ジョージアに対しては後半30分まで10点差をつけていたが、最後の10分間で落ち着きをなくして2トライを奪われての2点差での負け。

 

共に、日本が勝利を収めていても誰も文句を言わなかったであろう内容での惜敗が続いた結果、最後にたどり着いた11〜12位決定戦。

勝てば来年もチャンピオンシップで戦う権利が得られる一方、負ければ下部大会のワールドラグビーU20トロフィーへの降格が決まる“Win or Die”マッチとなる。

 

しかも、これ以上ないと言っていいプレッシャーの下、戦う相手はアイルランド。

フル代表は1年前の日本とのテストマッチで連勝した後も今年の6カ国対抗で優勝。この16日には敵地でオーストラリアを破るなど、ワールドラグビー世界ランキングでは堂々に世界2位につけている本物の強豪国。

U20レベルでは「日本が手本にしてきた」(遠藤哲U20日本代表ヘッドコーチ)相手でもある。

「2016年のU20チャンピオンシップでアイルランドがニュージーランドを破った試合をアップセットの見本としてきたし、細かく分析してきた。とうとう手本を超えるところにきたということ。これ以上ないクリアなターゲット」(同HC)

「アイルランドを圧倒する」(岡山主将)ことを目指しスクラム練習も最後までぬかりなかった

 

今大会開幕前にもフランス入りの前にアイルランドで直前合宿も敢行。20分を3本という変則だったとはいえ、U20アイルランド代表と試合形式の合同練習も経験した。

そんなふうに、ある種知り尽くしている強豪チームに対して、日本はどのように戦い、残留を勝ち取るつもりなのか。

 

「アイルランドは、日本と持っている武器は近かったりするがアプローチが違う。動き勝たないといけない。先手を取って、アクションで勝つ。ディフェンスなり、攻守交代のところで勝っていく。

つまりは、自分たちがやってきたことをそのまま出すということ。最後はどれだけ勝ちたいかの勝負。アイルランド戦は“戦争”だという話もした。選手たちもその意味はわかってくれている」

激しい言葉も使いながら選手たちを鼓舞する遠藤HCの意も受けて、FL岡山仙治キャプテンも「絶対勝ちます」と宣言した上で“Win or Die”となる試合でU20日本代表が目指すラグビーについ冷静に語ってくれた。

「相手はディフェンスが強いことで有名。そこを、僕らが前に出て、逆に振り回す。そんな僕らが目指してきたスマッシュスイングを前半から見せていきたい。スマッシュしてスイングする。敵陣でしっかりアタックするラグビーを見せていきたい。アイルランド戦で本当のU20ジャパンのラグビーの完成形を見せることができる。楽しみ」

ここまで日本の守りの中心的役割を担ってきた両FLのタックル力も勝利の鍵を握る

 

「試合を決める瞬間にいられるのがリザーブ。

今度は燃えてくれるはず」(遠藤HC)

 

前述したとおり、2試合連続で悔しすぎる惜敗を経験しただけに、最終戦で勝利を収めるための修正点も明確だ。

ウェールズ戦、ジョージア戦ともにいい面もあったセットプレーだが、完全には支配できず、特にジョージア戦ではセットプレーでプレッシャーをかけられたことが敗因につながったことは紛れもない事実だった。

「自分たちのかたちが出せている時もあったが、相手のプレッシャーを受けて、自分たちのかたちが取れなかった時もあった。

アイルランド戦では、まずはセットプレーを安定させる。BKがいくらがんばってくれてもFWが後ろに下がってしまったらダメ。そこは意識していく。相手は体の大きさ生かして押してくるが、合同練習でも何本か自分たちのかたちが取れて押し返すことができていた。自分たちの低さ、固まりを意識していく」(HO新井望友)

 

一方、BKのアタックに関しては、ジョージア戦前半29分のハラトア・ヴァイレアのトライに象徴されるように、「BKのアタックで勢いつけることができる場面もあった。その観点から言うといいパフォーマンス」(今村友基アシスタントコーチ)と、自分たちの目指しているラグビーが随所に見られるようになってきている。

「元々、能力が高い、パスうまい選手が揃っている。それが合ってきた。よりゲインラインにアタックすることで、相手ディフェンスにプレッシャーかかって、相手をコントロールできる。そういう高いレベルにいけそうなところまで来た」(同AC)

 

大きな相手に対して、自分たちのスピードを生かしたアタックが大会に入って進化し、十分通用している手応えもあるだけに、開幕前に対戦したアイルランドに対しても自信を持って臨むことになる。

 

「BKでラインを上げてアタックして、FWも前に出すことを目標にやっている部分はうまくいっている。自分は高校代表の時もアイルランドに負けて(31—50=2017年3月25日、対アイルランドU19代表)、今回フランスに来る前も試、合ではなかったがトライ数では下回った。相手はすごく大きいが日本よりスピードない。やってきたことをやるだけ。チャレンジャー精神で挑む」(SO侭田洋翔)

リザーブ、ノンメンバー含めて全員でQLDを貫きチャンピオンシップ残留を勝ち取る

 

プール戦最初の2試合(対ニュージーランド、対オーストラリア)を経て課題となった試合の入りの10分に関しても、ウェールズ戦、ジョージア戦では相手に攻め込まれても粘りのディフェンスでトライを許さず、日本が先制して主導権を握るなど、試合運びでの成長も間違いないところ。

ジョージア戦では、前述のとおりセットプレーでの不安定さも響くかたちで、ボールが持てずに自陣から抜け出せずに、最後の10分間はディフェンスでの規律も乱れ、ややパニックになった面も見られた。

厳しい戦いをどう勝ち切るかも、残留への鍵になる。

「『試合の最初の10分と最後の10分にこだわってディフェンスしよう』という声かけある。しっかり実行して、質の高いディフェンスをする」(FL山本凱)ことができるかは絶対条件だ。

 

「ジョージア戦後、真摯に向き合うことから始めた。ネガティブなところまでさらけ出そうという話をした。2回目ということで乗り切れる、グラウンド脇で支えているスタッフも前回とは違う支え方になる。

リザーブに関しても番号が大きくなる方が嫌だという考え方もあるが、そうではなくて試合を決める瞬間にそこにいられるのがリザーブ。テンポを上げる、フレッシュレッグという意味もあるが、試合を締めるという役割も。今度は燃えてくれるはず」(遠藤HC)

 

「ただ蹴るだけではだめ。攻めないと相手の陣容を崩せない。アイルランドも日本が蹴ると思っている。アタックして、相手ディフェンスを動かして、スペースをできた時にまた蹴る。FWがセットを立て直してくれる。そうなった時にいかにエリアがうまく取れるか」(今村HC)

 

ノンメンバーも含めて、「最後に勝ち切る」という気持ちで一体になれるか。

最後までこだわってきたQLDを貫き通して「絶対にほしい」(FL岡山キャプテン)勝利を全員でつかみ取る。

ペルピニャンでの前日練習終えてチーム写真に収まるU20日本代表。準備は全てやり切って決戦に臨む

 

Photo and text by Kenji Demura