フォトギャラリーはこちら
トヨタ自動車ヴェルブリッツ対ヤマハ発動機ジュビロ
12月15日(土) 秩父宮ラグビー場
ヤマハ発動機ジュビロが、終始ミスに苦しみながらも後半盛り返して逆転。トヨタ自動車ヴェルブリッツを1PG差で退け日本選手権3位を確保した。退任が伝えられている清宮克幸監督最後のシーズンに花を添えた。
得点12-12、日本選手権2度目の延長戦も脳裏に浮かんできた後半38分過ぎ、ヤマハはハーフウェイ近くでPKを得てショットを選択。キッカーはそれ以前に2つ続けてPGを失敗していたFBゲリー・ラブスカフニ。「2つ外していたからこそ」と試合後清宮監督が話していた40mを超えるゴールキックがバーを越え、「ヤマハらしい勝利」(同監督)を決めた。
ヤマハは最初のマイボールラインアウトを確保できず、こぼれ球を相手に拾われて先制トライを献上した。ヤマハはこの日、ラインアウトで3回マイボールを失い、またPKからのタッチキックも3回ショートするなど、ミスを重ねていた。前半終了前には、自陣を脱出したかったPKからのキックがノータッチとなり、トヨタのカウンターアタックを受けて一気にインゴールまで運ばれてしまう。しかし、許した得点は前半のこの2つのトライ(1ゴール)だけ。逆に前半27分にはPKから速攻した相手のキックを切り返し、ラブスカフニからライン際でパスを受けたSO清原祥が40m近くを走り切った。
風下だった前半はリードを許したヤマハだったが、後半は強みのスクラムを足場に、地域的にも優位に戦った。相手1人がシンビン中の後半24分には、トヨタが持ち込んだラックで途中出場のLOヘル ウヴェがターンオーバー。大きなゲインの後、ゴール前ラックから出たボールを左へ展開し、清原が自身にとってもチームにとってもこの日2つ目のトライ(ゴール成功)で同点に追い付き、最後の決勝PGへと繋げた。
一方敗れたトヨタは、風上だった前半にヤマハのミスを突き、PR木津悠輔とFL姫野和樹主将が1トライずつをあげた。しかしリードして折り返しながらも後半は沈黙。試合後、3位決定戦について問われたジェイク・ホワイト監督は、「We must win」だとして、モチベーションに問題は無かったと明言した。SOライオネル・クロニエを下げ、姫野がシンビンとなった後、相手に奪われたトライが痛かった。
■トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○ジェイク・ホワイト監督
「非常に残念です。今日は勝てた試合だと思います。多くのチャンスを作り出すことができましたが、それを掴むことができませんでした。チームに対しては慰めの言葉もなく、本当に勝てる試合だったと伝えました」
○姫野和樹キャプテン
「本当に悔しいですね。自分自身も不甲斐ないイエローカード(後半19分 反則の繰り返し)をもらって試合の流れも変わったし、自分達は、まだまだ何かが足りないからヤマハに勝てなかったと思います。そこをもう一度一から足元を見直して行けたらと思います」
ー先週の厳しい試合で試合で優勝がなくなった中でのチームのモチベーションの建て直しについては?
(姫野和樹キャプテン)
「優勝争いからはずれ、難しい試合ではあると思いましたが、この一週間『自分達が成長するために必要な試合だ』と皆に言い聞かせてやってきました。本当に価値のある試合だとコーチ陣も言っていましたし、『価値ある試合を価値ある物にするには、自分達がどういう試合をするか』ということを言いました。そこでモチベーションを維持できたかなと思いますが、やはりまだまだ足りない部分があったので今日は負けたと思います」
—昨年に引き続き、上位3チームに勝てませんでしたが、何が足りなかったと思いますか?
(ジェイク・ホワイト監督)
「今、このタイミングで答えを出すのは難しいです。今日は多くのチャンスを作り上げることができました。勝てる試合ではありました。そこで勝てなかったということです。一つだけ良かった点があります。若手が非常に良いプレーをしてくれていたことです。今日はルーキー6人を使いました。彼らのためにも今日勝ってほしかったです。勝ってもらって彼らに勝ち方というものを学んでほしいと思ってました」
(姫野和樹キャプテン)
「ここで(何が足りないか)言うのは難しいと思います。少しずつヤマハさんに対して足りなかったかなと思います。そこの土台部分を来年以降は築き上げたいと思っています」
ー1月のカップ戦に向けて。
(ジェイク・ホワイト監督)
「今は『優勝したい』それだけです。本来の勝負の世界というものは、そのようなものではないでしょうか。優勝したいということで我々はやっています。勝つためにベストなベストの選手を使って、このカップ戦の二試合を勝つようにします」
■ヤマハ発動機ジュビロ
○清宮克幸監督
「ヤマハらしい勝利だと思います。いろんな局面でミスもありましたけれど、良さが出てた、ポジティブな部分が多かったのがヤマハの方だったなと思います。スコアは3点差でしたがゲームの支配は完勝だったと思います」
○堀江恭佑キャプテン
「前半風下の中で、自陣に釘付けでしたが、その中で自分達で声かけ合って我慢を出来たのが良かったと思います。試合を通してミスも起きてストレスも溜まる部分もありましたが、自分達にフォーカスして後半もやっていこうと80分通して試合をやってヤマハらしい勝ち方だったと思います」
ー優勝目指しての3位戦は非常にモチベーションは難しかったと思いますが、どのようにモチベーションを切り替えて試合に臨みましたか?
(清宮克幸監督)
「先週の試合の会見では『非常に難しいものがある』と言いましたが、選手達が、私が今日で試合が最後ということで、皆が勇気付ける言葉をかけ合いながらチームを盛り上げてくれたかなと思います。今日の試合はラインアウトが取れない、キックが出ない蹴れない、どうなってんだという不思議な状況でもラグビーが勝てるというところは、ラグビーは奥深いな、それらの部分のウェイトが今日の勝因だったと改めて思いました」
(堀江恭佑キャプテン)
「先週あれだけ悔しい思いをしましたので、すぐにモチベーションを切り替えるのは難しかったのですが、今日の試合に向けて、やるからにはもちろん選手は勝ちたいですし、何で勝ちたいのか、それぞれの選手の気持ちだったり、そういうものを持って試合に臨みました。清宮監督の試合が今日最後になる選手もいましたが、そういう思いもあったと思いますし、来シーズンその次に繋がるヤマハの自分達のラグビーを悔いのないようにやりきろうという思いだけでした」
ー今日のメンバー構成について。
(清宮克幸監督)
「出場していない選手は、皆、怪我人です。今年のシーズンを通してチームの怪我人が非常に多い中、いろんな選手が出て、チャンスをもらった選手達がそれぞれ良いパフォーマンスを出してくれて、良い個性を出してくれて、優勝が手に届くまでしっかりチーム力を上げられたかなと思います。この1年本当に苦労しながら得た部分かなと思います。今日の経験は来年以降も生きると思いますし、こうやって選手達は成長して行くのだろうと試合を見ながら思ってました」
ー試合の途中「12対12」で、前節に引き続き延長戦と感じましたか?
(堀江恭佑キャプテン)
「途中から、延長戦も頭にありました。ラインアウトも中々取れなく苦しんでましたので、キッカー(FB:ゲリー選手)とコミュニケーションをとって狙えるところは狙っていったのですが、最後あの形(後半39分 PG成功)で勝てたので良かったと思います」
(清宮克幸監督)
「決勝のペナルティゴールの前に2本(PG)を外して、あの2本を外したことが必要だったかなと・・・。ロッカーに戻りましたら五郎丸に、キッカーの大切さがわかったでしょうと言われました(笑)」
ースタンドオフ(SO)について。
(清宮克幸監督)
「ずっと(自分が監督になって)ヤマハは10番(SO)は日本人が担うと宣言しながら大学生に声をかけて回りましたが、全然大学生は振り向いてくれませんでした(笑)。外国人選手は、いろんなスキル、体格、経験を含め現在の状況では、どんどん上になるでしょう。日本人の選手は、そのレベルで経験がつめない。12,13番(CTB)や6~8番(FL、No8)も同じでしょうね。勝負する選手が高いレベルの選手でいると日本人は伸びて行くチャンスを意図的に作っていかなければならないと思います。代表レベルでないけれど高校生や大学生が目標にするような選手、今日の(10)清原、(11)田中、(13)宮澤は身長が同じくらいですが、対面の190cmを超える選手に対しての彼らの今日のタックルを見ると、日本人もまだまだあるよね。今シーズンで引退するので、宮澤が間合いと踏み込みだけで相手を仕留めきる事を最後の試合で見ることができ、良かったなと思います。宮澤は今日でヤマハ100キャップで『さすが宮澤』というプレーをしっかり示した。対格差だけでない日本人が必要とするスキルを高校生や大学生が見てくけたらいいなと思います」
ートップリーグや日本選手権について心残りはありますか?
(清宮克幸監督)
「結果は欲しかったということはありますが、ヤマハのファミリーをしっかり手に入れましたので十分です」