戦闘姿勢を貫いた神戸製鋼が9年ぶり決勝へ
東芝は3季連続で無冠のままシーズン終了

16日、日本ラグビーフットボール選手権大会準決勝2試合が行われ、東京・秩父宮ラグビー場では前半20分にNO8西川征克のトライとニコラス ライアンのゴールで逆転したサントリーサンゴリアスがその後も着実に加点して26-13でパナソニック ワイルドナイツに貫禄勝ち。
一方、大阪・近鉄花園ラグビー場では、前半18分までに3トライを挙げた神戸製鋼コベルコスティーラーズが終盤の東芝ブレイブルーパスの猛追を振り切り31-29で逃げ切った。
2012-2013シーズンの総決算となる日本選手権決勝は24日、東京・国立競技場で3連覇を目指すサントリーと、9年ぶりの決勝進出となる神戸製鋼の間で争われることになった。

photo by K.Demura (RJP)

サントリーとのトップリーグのプレーオフファイナル。
「前半アタックできなかったのが全て」(和田賢一監督)と、立ち上がりにペースをつかめなかったことが大きな敗因となった東芝だが、3週間経ての神戸製鋼との日本選手権準決勝でも同じような悪循環に陥ってしまう。
スコアボード上の旗が真横にたなびくほど、この日の近鉄花園ラグビー場は強い風が吹いていたが、試合前のトスに勝った東芝はあえて前半風下を選択。
これは、「3週間、試合が空いたので、エリアではなくフィジカルに体を当てることでペースをつかむ意図だった」(和田監督)とのことだったが、結果的に裏目に出てしまう。

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「今日のテーマはバトル。80分間、戦い続けられるかが勝負を分けると考えていた」(苑田右二ヘッドコーチ)という神戸製鋼が、キックオフから風上というアドバンテージも生かすかたちで、一方的に攻め続ける展開となった。
7分、東芝陣深くに攻め込んだ神戸製鋼は自ボールのラインアウトこそキープできなかったものの、10m付近で相手キックを処理したWTB大橋由和が上げたハイパントを神戸製鋼FWが再確保して、一気に右展開。
「スペースがあったら、どんどん外も攻めようと思っていた」というFB正面健司が東芝ディフェンスのタックルをかわして先制する。
これで完全に勢いづいた神戸製鋼は11分に自陣から抜け出したFLジョシュ・ブラッキーが敵陣深く蹴り込んだボールをWTB今村雄太が拾って2トライ目。
18分には、またも敵陣深くのラインアウトをキープできなかった後のキック処理から、今度はLO安井龍太が抜け出してWTB大橋へパスをつなぎ、そのまま大橋がトライ。
この日、「ディフェンスでロータックルができる」(苑田ヘッドコーチ)という点を買われて先発起用されていたSO山本大介が2本のゴールを決めて、神戸製鋼が前半20分までに19-0とリードする展開となった。

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もちろん、あえて前半風下を選択した東芝としても、ある程度リードされるのは想定内だったはず。
「3週間ぶりの試合でゲームフィットネスがないし、ボールが手につかないこともあるだろうとは思っていた」(NO8豊田真人主将)
19-0とリードされた後は、神戸製鋼HO松原裕司が負傷退場したことも影響して、スクラムでの優位が明らかになったこともあって、東芝FWが前に出るケースが多くなる。
前半終了間際には、近場近場と攻める東芝らしいアタックでフェイズを重ねて神戸製鋼ゴールになだれ込むが、グラウンディングできずに、5mスクラムへ。
さらに、神戸製鋼のスクラムコラプシングでチャンスを得た東芝は、ここでPGを選択。ようやく東芝が3点を返して、19-3と神戸製鋼の16点リードで前半は終了した。

最後のPGは、神戸製鋼がすでにコラプシングを繰り返していたこともあって、東芝としてはスクラムにこだわってもいいようにも思えたが、「0点で前半を終えるのではなく、しっかり得点をとってチームを落ち着かせたかった」(東芝のNO8豊田主将)という意図でまずは確実に3点を取ることが優先された。

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千両役者CTBフーリーの2トライで

後半、再び神戸製鋼が引き離す

東芝としては、サイドが替わり風上となる後半はキックオフからペースをつかみたいところだったが、またも先に得点を挙げたのは神戸製鋼。
しかも、前半終了間際に東芝が手堅くPGを狙ったのとは対照的に、あくまでも攻める姿勢を貫き通してのトライでの加点だった。
3分、敵陣深く攻め込んだ神戸製鋼がPKのチャンス。
フィールド上からもスタンドからもPGを求める「ショット」の声が飛んだが、FL橋本大輝主将は全く迷いなくタッチキックを指示。
ゴール前でのラインアウトからモールを押し込んだ後、インゴールへのショートパントに反応したCTBジャック・フーリーが確実に押さえて、いきなりトライ&ゴールによる7点を加えた。
「このゲームで掲げている『戦闘』というテーマの遂行のために、タッチから攻めることを指示した」(橋本主将)

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その後、15分に東芝が圧倒的に優位に立っていたスクラムでペナルティトライを奪ったものの、17分には神戸製鋼がワイド、ワイドに攻めた後、大外にいた千両役者CTBフーリーが格の差を見せつけるように、東芝ディフェンスを翻弄して左隅に飛び込んで神戸製鋼が31-10と点差を広げた。

3トライ3ゴールで追いつく21点差での最後の20分間。
このまま3年間無冠のまま終われない東芝が開き直ったかのように攻め続けて21分FL中居智昭、26分NO8豊田主将、33分FLスティーブン・ベイツと3トライ。
退いていたSOデイビッド・ヒルに替わってプレイスキッカーを務めていたWTB廣瀬俊朗が2本のゴールを決めたものの、あと2点届かず。
ハーフタイムを挟んでのPGの選択に象徴されているように、終始攻める姿勢で分のあった神戸製鋼が31-29で逃げ切り、9季ぶりとなる日本選手権決勝に駒を進めた。

text by Kenji Demura

photo by K.Demura (RJP)