大学選手権では他をよせつけず、断トツの強さで史上初の4連覇を達成した帝京大学。先週の日本選手権1回戦前後には、岩出監督が「来季こそはシーズンを通してトップリーグに勝つための準備をする」と宣言した。今季のチームもこれまで大きな力を発揮してきているだけに、今の力がトップリーグ上位チームに対してどこまで通じるか。これを楽しみに、快晴無風の秩父宮ラグビー場に多くの観客が詰めかけた。
パナソニックはシーズン終盤、レギュラー選手の疲労・怪我を考慮して、大幅にメンバーを入れ替え、多くの若手を起用している。
パナソニックのキックオフ。開始当初、帝京の個々のコンタクト、また密集での攻防でも十分に力が通用している。しかしながらゴールまで10mの地点でラインアウトモールを組むが押させてもらうことはできない。またラックでもパナソニックのうまさにやられてしまう。思ったように攻撃を継続することができない。
そして12分、16分とパナソニック14北川智に立て続けにトライを許してしまう。ひとつめは帝京が自陣から展開を試みてできたラックをターンオーバー。左、右と展開して、余ってはいなかったものの北川のステップに帝京が対応することができず、やすやすとゴールを明け渡した。二つ目はこの日初めて先発した10木村からのキックパス、ゴールライン上落下点で北川が競り勝ってそのまま押さえる。20分にも連続攻撃から12林が帝京BKラインにFWの選手が並んでいるのを見逃さず、するっと抜けてトライ。ゴールも決まって19-0としてパナソニックがペースをつかみかける。
しかし、3連続トライを許しても帝京の息の根は止まっていなかった。徐々にトップリーグ相手に体が慣れてきた27分、31分と連続トライを取り返す。自陣で相手ラインの裏に10中村が小さく蹴ったボールに13権が走りこんでキャッチ、すぐさまゴールに向けて大きくキック。誰もいないゴール地点で点々とするボールを、パナソニック11三宅に走り勝った帝京12荒井が押えこんだ。そして31分にまたも12荒井が、パナソニックがハーフウェイ付近でBKに回したボールをインターセプト、ゴール直前でパナソニック俊足14北川に追いつかれるもそのまま50mを走り切ってトライ。19-14と追いすがる。前半終了間際帝京が相手ゴール前に攻め込むが得点できず、このまま僅差で前半を終える。
前半の後半の帝京の対応力をみて、後半も大いに期待がかかる。後半開始早々パナソニックに攻め込まれるが、これを持ち前のディフェンス力で耐える。前半途中で不調の8李に代わって入った1年生19坂手も、相手を仰向けに倒す強烈なタックルを見舞うなど、非凡な力を発揮した。
しかしながら、後半3分にパナソニック21デラーニが投入されると、ゲームは大きくパナソニックに傾いた。7分、ゴール前5mラインアウトモールを押し切って2設楽が後半最初のトライ。12分には右左と連続攻撃から最後は9イーリがラックサイドを突いてゴールへ。21分にもゴール前ラインアウトモールから、6バツベイがサイドを力強く突進して押さえる。27分、今度は21デラーニが横走りで相手を引き付けて12林とダミーシザース、そこに途中からセンターに入っていた10木村が縦に走りこんでゴールに飛び込む。34分にもやはり21デラーニが斜めに走って相手を翻弄しつつ14北川へラストパス、そのまま走り切って今日3本目のトライ。54-14と突き放した。
ゲームの行方は決してしまったが、帝京の若者たちはまだまだ諦めていなかった。37分エース10中村が相手ボールに絡んで得たPKから20天野がクイックタップ、パナソニックゴール前に攻め込む。ラックを連取して最後はキャプテン2泉がラックサイドを突いて相手を力強く押し込んで意地のトライを奪取。54-21としてノーサイド。
オールブラックス経験もあるパナソニック21デラーニが投入されて以降、大きく点差が開いてしまったが、個々のコンタクトなどゲームを通して十分に通用する部分も多くあった。再三のゴール前ラインアウトモールを押させてもらうことができず、また、密集では多くのターンオーバーを許してしまったが、その多くは力の差ではなくうまさにやられてしまった感がある。これまでの学生同士のゲームでは経験できなかった部分ではないか。岩出監督が宣言しているとおり、来季、シーズンを通してトップリーグに慣れることができれば、キャプテン就任が決まっている中村を始めとして、多くの有望な選手たちがこのまま残ることを考慮しても、来季のトップリーグ打倒に期待が持てる余韻を残して、『泉帝京』はシーズンを終えた。(澤村 豊) |